ラルくん 68

2022-02-28 09:54:13 | 日記
「出演者はみんな、とりあえずスタンバイして。何とかするから」

先輩チームのひとりが発言した。

「なんとかって…どうするの?」

「こんなにみんなで角突き合わせていたって、堂々巡りだし、芝居は止められないから!」

心配そうに、出演者たちはスタンバイのために舞台袖に向かった。

Y子のコップは、前半30分くらいに一度と、ラストに登場する。

前半30分の時の登場は、その場面に出ていないメンバーのコップを使うことにした。

しかし、ラストは、全員が登場で全員がコップを持たないといけない。

先輩チームは、バタバタとコップを救うために、翻弄した。

そして、いよいよラストシーン。

出演者皆がコップを掲げる。

Y子は、堂々とコップを掲げた。

よく見ると、うっすらとアロンアルファの後が見えるが、Y子がコップの持ち方を工夫して、割れた部分が見えないように掲げた。

先輩チームは、そのシーンを袖から見て、胸を撫で下ろした。

実は、アロンアルファだけではなく、それ以外にも、今までの稽古通りでは無理だったことがあった。



ラルくん 67

2022-02-27 08:23:56 | 日記
「コップ!あったよ!」

先輩グループ仲間のひとりが混乱している楽屋に駆け込んできた。

皆が一斉に振り返る。

「どこにあったの?」

「給湯室のポットの裏に」

「良かった…💦」

「…だけど!大変なの…」

「どうしたの?」

「これ。見て…」

見ると割れている。

え…っ!!

楽屋中の空気が固まった。

「わ、割れてる…?!💦」

いよいよ最悪だ。

真っ二つだ。

「どう…しよう…」

Y子の声が泣き声に変わった。

「こんな事ってある?Y子は、必要以上にコップを大切にしていたのに、突然消えた上に、給湯室のポットの裏とか…、しかも、割れてるなんて…。」

皆がM子を意識していた。

M子はというと、この騒動から少し距離を置いて、遠巻きに見ていた。

「もう、30分しかないよ。いよいよスタンバイしないと…💦💦」

申し訳無さそうに仲間がつぶやく。



ラルくん 66

2022-02-25 10:01:52 | 日記
また、本番用の大切なコップが消えた。

しかも、本番前に…💦

オリジナルなロゴをプリントする必要があるため、他のものでは代用が出来ない💦


「本番まで一時間しかない…、もうスタンバイしなくちゃ…、間に合わない…どうしよう」

もう、パニック。

「台本を変えよう!」

え?

ラルくんがつぶやいた。

「変える?どんな風に?!」

「例えば、Y子だけコップを持たない…という風に…」

「…出来ないよ!無理だよ!そんな事したら、それに関わるキャストたちのセリフも変わってくるし…💦」

「…そうだよね💦」

確かに…、こうなってくると、台本を変えるしか方法が無さそうだ…が、かなり無理がある。



ラルくん 65

2022-02-24 09:09:31 | 日記
なんと、Y子の本番用のコップがまた消えた。

誰もが、M子を疑っていたようだが、何の証拠もないし、しかも本番前に余計ないざこざを起こすわけにはいかない。

だから、誰もが、M子を見ないようにしていた。

敢えてM子と視線を合わせない…それが寧ろ
いけなかったらしく、M子はイライラし始めた。

「すみません💦私がちゃんとしていなかったから…」

「いいよ。とにかくなんとかしよう。」

小道具のコップは、ロゴが入っていて、仲間の証として、皆が持ち寄るシーンがある。
だから、それが無いと、本当に困る。

「代わりのコップ、買ってきます」

「ダメだよ。こんなコンディションで外へ出たらダメ!」

混乱した状態で、どこで売っているかも分からず、とりあえず外をさ迷うなんて、事故でも起こしてしまったら大変だ。

「しかも、同じようなコップがあったとしても、ロゴも無いし…」

「今から、頑張って描きます」

「無理だよ…💦💦」

ラルくん 64

2022-02-23 09:20:18 | 日記
M子の暴走をラルくんがなんとなく止めた。

『どうして、私がいけないの?』

『どうして、ラルくんまで、私に意見するの?』

納得がいかないながらも、M子は本番に臨む。



ーー本番前、皆準備でバタバタする中、Y子があわてて先輩たちの楽屋に息を切らして飛び込んで来た。

「あ、あのぅ…💦💦」

「どうしたの?」

「コップ…、また、無いんです💦」

「え?!本番用の?!」

「はい💦💦もう、あいこち探したんですが…💦💦」

声が震えている。


予備のコップをゲネプロで使って、

もう、予備も無いから大切に保管するように…と、Y子に渡したはずだ。

「え?!コップが?!💦」

騒動を聞きつけて、先輩たちが集まった。

先輩たちの誰もが、Y子のうっかりミスだとは思っていない。

コップが消えたのは、何かしらの、Y子への嫌がらせなんじゃないか…と、思いはじめていた。

「最後にどこで見た?」

「楽屋の私の鏡の前です」