タックやんの悲劇

2019-12-30 06:17:38 | 日記
私のおばちゃん家は東北の山奥の山奥…。

最寄りのバスを降りて歩くこと1時間ほど。

山奥へ山奥へ歩き、景色は山また山しか見えなくなった頃に、
ポツンと見えてくる藁葺き屋根の家でした。

囲炉裏があり、土間だけでも10畳はあったんではないか…と思われる、
まるで日本昔話みたいな家でした。

お隣さん(家)は?と言うと、大人の足で歩いても20分~30分くらい離れた場所にあったと思います。

そのお隣さんに「タックやん」と呼ばれるおじいちゃんがいました。
痩せてひょろっとしていて…まるでレレレのおじさんみたいな人でした。

おばあちゃんとは、お茶飲み友達でタックやんはよく遊びに来ていました。

そのタックやん、お茶は嫌いだがお茶を散々出し切った後のふやけたお茶っ葉が大好物。

お風呂は嫌いだが、水浴びが大好き。
ちょっと不思議なおじいちゃん。

タックやんの悩みは、入れ歯が噛み合わない事。

長年放って置いたために、歯茎が痩せてさらに噛み合わず、会話の途中で入れ歯が飛び出す事もしょっちゅう、ロレツが回らなくなる。

おばあちゃん家の裏庭で大きな牛蛙を見つけると「カール、カールがいたぞ」

タライを借りにきた時も「ターイ、ターイ貸して」

必ず必要事項は2度言う。自分でもロレツが回らず発音がおかしいことに気づいていたからだと思います。

長い付き合いのおばあちゃんは、わかってるみたいで、何度も聞き直さずに、タライを持ってきます。

ある春の日、おばあちゃん家では、おじいちゃんの7回忌の法事が行われる事になり、親戚一同が集まりました。

子沢山のおばあちゃんの親戚一同は、孫たちも含めるとかなりの多人数。

山奥の家なので、親戚たちは、前日に集まり、酒盛りをして顔合わせをするのが常でした。

ところが、その日、一番下のおじさんが夕方になってもなかなか現れない。
おじさんはいつも、東京から奥さんと子供2人を連れて、自分の車でやって来る。

「ヤス、遅いなぁ…」
「午前中に家を出たらしいから、もう着いてもおかしくない時間なのになぁ…」
「ちょっと山を下って、様子を見に行ってみるか…」
「いや、ダメだ。この間この少し奥に熊を見たって言う人がいるんだ」
「熊か…。冬眠から覚める時期だな…」

確かに、鹿でも熊でも、狼でも住んでそうな山だ。

しかし、時間は、刻々と過ぎ、皆の言葉も少なくなり、おじさんの到着の遅れを心配している空気が充満してきた。

「まさか、事故にでもあったんじゃなかろうか…」
「ヤスは運転は慣れてるから心配ない」
「だけど、ホラ、この間の雨で、ここへ来る途中の細道が土砂崩れにあって、通れなくなっていたんじゃないか?」
「土砂は撤去したが…」
「昨夜も雨降ってたよな…地盤も緩んでるし…」
「心配だ。どれ、ちょっと様子を見に行って来る」

そこで、タックやん、
「じへんしゃで、見てくーよ」
タックやんは、自転車で来ていた。
「おぉ、それじゃ、タックやん、頼むわ」
タックやんは、皆の期待を背に受け、意気揚々と出て行った。

しかし…今度はタックやんも帰らない。
「タックやんも遅いなぁ…」
「熊、大丈夫かな?」
「自転車だし、大丈夫だろう…」
「だけど…、自転車でも襲われたって話聞いた事あるぞ…」

シーンとなった時、
タックやんが形相を変えて飛び込んできた。しかも、衣服はドロドロで破れている。

「タ、タックやん、ど、どうしたっ‼」
「く、くま‼」
「熊っ⁉」
騒然となった。

大人の男たちは、持てる限りの武器を手にする。
包丁、ナタ、すりこぎ、バットを手に飛び出して行った。

子供の私は、おじさん一家が熊に遭遇し、身動きがとれない惨事を想像していた。

すると、タックやんが男泣きをする。
残った女達が、タックやんの様子がおかしいのに気づく。

「熊じゃなくて、くーま」
「え?」
「くーま。くーま」

実は、ぬかるんだ細道で、車のタイヤを取られ、立ち往生している…と話したかったらしいのだ。

折しも、熊が出たと言う噂の中、運悪く、ロレツの回らないタックやんが様子を見に行ってしまった事がタックやんの悲劇を生んでしまった。

しかも、タックやんは、ぬかるみで自転車が転倒して、ドロドロで、衣類が破けただけ…。

事の重大さに男泣きをしてしまったタックやん。

タックやんはその後すぐに、歯医者に行きました。

もちろん、武器を持った大人たちは、大爆笑をしながら、おじさん家族を連れだって帰って来ました。

トイレ男

2019-12-29 06:34:31 | 日記
昔々…の、私が実際に経験した話しなのですが…、
面白かったので、某有名雑誌に投稿してみたら、その雑誌に記事が載った…と言う、実話です。

私が若かりし頃、生活のためにアルバイトをしていた喫茶店での話です。

私が勤めていた喫茶店は、オフィス街にあって、ほとんどのお客様は、


近所のオフィスにお勤めのサラリーマンやOLさん。


ランチや商談に使われる事の多いお店でした。

だから、ランチの時間が過ぎると急に暇になる。

ある日の午後、サラリーマン風の男性が勢いよく入ってきた。
「いらっしゃいませ~❗」

ウエートレスがお水とおしぼりを運ぶ。
「コーヒー!」 とだけ言い残すと、再び席を立って、トイレへ。

…しかし、残念ながらトイレは、他のお客様が使用中。

まぁ、とりあえず、男は席に戻る。

彼が座った席は、偶然トイレが死角になっていて、トイレの使用状況がわからない。

少し、時間を潰すと、またトイレに立ち上がる。

…が、また、わずかの差で、先を越される。

彼は、また、座席に戻る。

またまた、少しの時間を潰し、またトイレへ。

…なんて、間の悪い人なんでしょう💦
これまた、先を越される。

また、席に戻る。

『トイレの前で待てばいいのに…』と思ったけど、そんな事言えない。。。

…トイレが空いた!

…が、それに気づいていない💦

…『早くしないと、また誰かに使われてしまうのに…💦』

…なかなか気づかない💦

コーヒーを届けたついでに、

「あの…、おトイレ、空きましたよ」

…と、同僚が伝えてしまった。


それが悪かったのか、

『え?何が?』というような顔をして…
「あ、大丈夫です!」 と、運ばれて来たコーヒーを飲んだ。


「絶対大丈夫じゃないよね…💦」 と、同僚がつぶやく。

「大丈夫です」と言ってしまった手前、すぐにはトイレへ立てなくなってしまったようだ…。

なおも、平気な顔を装って、おいしそう(?)にコーヒーを飲む。

しばし、コーヒーを飲んだあと、また平気な顔を装って、トイレに立った。(ふぅ~💨今度こそ…)

…あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~‼

なんて運のない人なんでしょう。また、先を越される💦

思わず同僚と顔を見合わせてしまった。

「『トイレの前でお待ちになったらどうですか?』って言いに行こうか?」
と堪らず同僚が行きかけたが、
「私たちにトイレに行きたいのを見抜かれるのが嫌なんだと思うよ…」と言って止めた。

彼は何度トイレにフラれたことか、気の毒で正視出来ない。

これまた運の悪い事に、彼にとって究極の敵が現れた。

外注でお願いしているおトイレ掃除のスタッフさんがやってきたのだ。

これはさすがに気の毒…💦と、思い切ってもう一度”お知らせ”に向かった。

「すいません。実は、おトイレを清掃する時間なんです。よろしければ、その前に、ご使用下さい」

さすがに席を立ち上がるかと思いきや、彼はさらに

「え?大丈夫です」と言ってしまった💦

私も思わず
「え?!」 と言ってしまった。

切羽詰まった尿意(?)より、私たちに状況を見抜かれていた事が恥ずかしかったのでしょう。だけど、意地を張ってるようにしか思えない。

もう、こうなると、ウエートレスVS尿意男の戦いだ。

心配した同僚が、もう一度確認に向かった。
「今なら大丈夫です。おトイレをご使用下さい。」
「いいえ、トイレじゃありませんから。」
『え~~~~~~~~~~~~~~~~?!
言ってしまった!トイレじゃない訳ないじゃない💦』
と心で叫んでしまった。

「トイレを借りて靴下を履き替えようかと思っていた程度ですので」
…とでも言いたそうな感じだ。

同僚も
「絶対大丈夫な訳ないよ。マズイよ、あの人!」 

仕方なく、トイレの清掃を始めて貰った。

もう、私と同僚は、彼から目が離せない。

さっきから、無駄にコーヒーカップを持ったり離したり…、指で『トントン…』とテーブルを叩いたり…震えているようにも見える。

「こうなったら、よそのお店でトイレを借りればいいのに」
と同僚がつぶやいた。

「すいません!」
男が手を挙げた。

え?なに?なに?
今度はなに?

「お水下さい!」

「え~~~~~~~~~~~~~~~~~‼

さらに水分補給するのぉ~💦」 と、同僚と顔を見合わせた。

仕方なく、冷タンに水を補充した。しかも、その水をグイグイと飲む。

15分くらい経った頃、なんとかトイレ清掃終了。

「教える?」
「いや、放って置いた方がいいんじゃないの」
…と言う事で、見守る事に…。

それから、しばし、トイレに立つ気配がない。

「帰ればいいのに…」 と同僚がつぶやく。

このままだったら、彼は倒れてしまうんじゃないか?…と思い始めた頃に、やっと席を立ち上がった。

トイレ?
いや違う…、トイレでは無い方に歩き出した。
レジだ…。

…いよいよ諦めたか…。

彼は、何事もなかったかのような表情でコーヒー代を支払う。
しかし、かなり顔面蒼白で、唇の色が青い。

「あ、ありがとうございました…💦」

彼は、少し前かがみで店を出た。

私と同僚は、急いで彼の行方を店の中から追った。

案の定…向かい側の喫茶店に入る。

律儀な人で、いきなりトイレを使うのではなく、とりあえず注文をするようだ。

しかし…、
座席に着いて、ウエートレスがやって来るのを待つ間に、
おトイレ掃除の業者さんが、お向かいの店の通用口から入るのが見えた…。

彼は…無事だろうか…、思わず同僚と手を合わせ祈ってしまった。



米ちゃんシリーズ

2019-12-28 07:30:40 | 日記
米ちゃんシリーズにお付き合いいただきありがとうございました❗
思い出せば、まだエピソードがありそうなんですが、とりあえず彼女の武勇伝は終わりです。
また、思い出したら書きたいと思います。

過去のブログを読み返してみたら、面白い話も、こわい話もたくさんあって、こんなこと、書いてたっけ?なんて、新鮮な感じで読んでます。

2008年頃から書き出した過去ブログの面白そうな記事が二度と日の目を見ないで埋もれてしまうの寂しい感じがするので、お気に入りの記事をリニューアルして、ここへ載せてみたいと思います🎵

また、よろしくお願いします🎵

米ちゃんの天誅❗

2019-12-27 07:36:53 | 日記
米ちゃんは女子寮でも人気者でしたが、その逆に、女子寮での嫌われる存在を一手に担う人もいました。


ある同僚の女の子、美保(仮名)と言う子がいまして…、自分をミポリンと呼ぶ。
彼女、なぜ嫌われているか…というと、わかりやすく裏表を持つコだからなんです。


女子の前と男子の前、同僚の前と上司の前の態度が極端に違う。

面白いほど違ってました。

男子の前だと…
「やだ~、ミポりんって~そんな人じゃないから~💕」

女子の前だと…
「あいつ、不細工のくせに私を誘って来た!」
…という変貌を遂げる💦

上司がいる飲み会は、体をくねくねとくねらせたり、わかりやすく胸の開いたシャツを着ていく。

しかし、帰ると…
「あのスケベオヤジ」呼ばわり…💦

更にすごいのは、メイク術‼

今で言う整形メイクですね。

寮の中でも、ノーメイクの彼女に会うと、「誰?」という感じでしたから💦

ミポリンは、周囲の男性の関心を自分に向いていて欲しいタイプで…、
そんなに興味の無い男性でも、“自分以外の女の子に興味がある”と知ると、ちょっかいを出す。

だけど、その男性が自分に興味を持ったのがわかると、突き放す。

それによって、彼氏を奪われる…など、被害を受けた女の子もいました。


さて、米ちゃんの話しに戻りますが…、米ちゃんの大好きな米田君も、ミポリンには興味が無かったタイプでした。

…かと言って、米ちゃんが好き❗というわけでもないけど、明るい米ちゃんは、みんなの人気者なので、米田君も米ちゃんにちょっかいを出してしまう…。

それが目障りだったらしいミポリンは、米田君誘惑作戦開始。
飲みに誘ったり、必要以上のボディタッチ…💦 

『次は米田君か…💦💦』周囲の人も皆思ったそうです。

鈍感な米ちゃんも、米田君の事となれば別💢

しかし、米田君もくねくねと体をくねらせたミポリンに誘惑されたら悪い気はしない様子で、ミポリンの蟻地獄に堕ち始めていました。


それを知った米ちゃんは放ってはおきません。

「米田君が自分のモノにならなくても、ミポリンのモノにはなって欲しくない❗」



ミポリンは、実は“酔い癖”が悪い。

だけど、男性や上司の前では“本性”を見せられないので、飲まない様にするほどの徹底ぶり。
“酔ったフリ”を武器に使う事はありますが…。

米ちゃんは考えた。。。

女子だけで飲み会をして、
油断してミポリンがベロベロになってから米田君を飲みの席に呼んで、
“ミポリンの本性”を見せてやれ…と。

しかし、ミポリンは、一枚上手で、結構酔っていても、
男子が現れるとしゃきっとする。

しかも、案の定、先にベロベロになって醜態をさらしたのは米ちゃんの方。

米ちゃんの作戦も思うようにいかず、イラつく日々を送っていた。



ある日、会社の事業で他会社の運動会を請け負う事に。

某会社の運動会は、大所帯の規模なので、私達は、
大量のフードメニューを早朝から準備しなくてはならない事になりました。

朝4時集合❗

通勤組の人達は電車が無いので、女子寮に泊まる事に。

誰が誰の部屋に泊まるのか…。

とりあえずくじ引き。

くじ引きにハズレて、米ちゃんは、
自分の部屋に天敵ミポリンを泊める事になってしまった…💦

米ちゃんがあからさまに嫌な顔をしたのを今でも覚えています。


そして、運動会当日…。

4時を過ぎても、米ちゃんもミポリンも現れず…。

5時を過ぎても現れない。

6時過ぎた頃、米ちゃんが顔面蒼白で現れた。

どこをどう走ったらそんな風になるの?
…と言うくらい、髪はボサボサ、

頬には、“とりあえず、歯だけは磨いたんだろう”と思われる白い歯磨き粉の白い跡💦

数分遅れて飛び込んで来たのは、ミポリン。

もちろんノーメイク、髪もボサボサ…、米ちゃんほどではないけど、
口の回りには歯磨き粉の跡。

とにかく皆が衝撃を受けたのはミポリンのノーメイク❗

現場の男性達もみんな「誰?」と言う空気だったんです。

後で米ちゃんから聞いた話しですが…、
気まずい二人は、なかなか寝付けずいたところに、
明け方鳴った目覚まし時計を米ちゃんが無意識に止めてしまった…らしい。

その後、ミポリンは、男性社員からチヤホヤされる事はなくなりました。

米ちゃんはと言うと、ノーメイクはいつもの事だし、
「へへへ…」と遅刻をしても歯磨き粉の付いた顔で笑うと、緊張した職場が和み、更に武勇伝がひとつ増えただけ。

米ちゃんは、無意識にミポリンに天誅❗を食らわせたんですね。