君は誰?45

2025-01-31 08:15:50 | 日記
「松田!」

「松田!しっかりしろ!!」

「来るな!」と叫んでしりもちをついた松田は、周りを見回しながらゆっくりと立ち上がった。

直樹と正人は、両脇から松田を支えて自転車を置いた場所へ急ぐ。

「うっ…うっ…」

「どうした?!松田!」

松田は、ゆっくり歩きながら肩を震わせて泣いている。

「大丈夫か?自転車乗れるか?」

「誰か呼ぼうか?」

「大丈夫だよ。自転車乗れるよ…」

泣きながら力無く歩く松田を、二人は、尚一層強く支えた。

「うっ…。うっ…。来な…い…」

「え?なんて?」

「来ない……」

「何が?何が来ないの?」



君は誰?44

2025-01-27 11:58:07 | 日記
「もう、帰ろう!」

松田の後ろは壁なのに、自分の後ろに誰かいる!と叫ぶ。

「落ち着け!」

直樹たちは、混乱する松田を無理やり椅子から引き離した。

「帰るぞ!」

松田の両脇を抱えて入ってきた教室のベランダから出た。

混乱する松田を支えているため、懐中電灯が役に立たない。

やっと暗い夜道を辿る。

「来るな!」

「え?」

松田は、ぐいっ!と後ろを向いて、後ろに居るらしい"何か"を振り払おうと、両手をブンブンと振り回した。

「触るな!」

「松田!大丈夫だよ!誰もいないよ!」

「わあっ!」

松田は、まるで何かに引っ張られたかのように、ドスンとしりもちをついた。



君は誰?43

2025-01-23 09:34:29 | 日記
松田は、目を閉じ黙って鏡の前にある椅子に座ると、ゆっくりと目を開けた。

「映ってる」

さっきまで『自分が映らない!』と混乱していた松田だが、今度は落ち着き払って鏡を見つめている。

「な、大丈夫だろ、映ってるだろ!」

「もう、いいから帰ろう!」

「あっ…誰?……誰だ?」

「何?今度はどうした?!」

「オレの後ろに…誰か立ってる」

「え?」

鏡を覗き込んだまま、松田は自分の後ろに映るらしいモノを指差した。

「誰もいないよ。松田の後ろは壁だよ」

「ううん…。誰かいる」

「やめろよ!もう帰ろう!」

正人は無理やり松田を椅子から引き離した。



君は誰?42

2025-01-20 08:27:43 | 日記
「どうしょう!!どうしょう!!」

松田は混乱している。

「大丈夫だよ!映ってるよ!」

「いないよ!いないよ!」

「松田!松田!しっかりしろ!」

松田は、急に目を閉じると、操られるように、椅子に座った。

「だ、大丈夫か?松田。」

「もう、帰ろう!」

「うん。帰ろう!」

松田は、目を閉じたままだ。

「おい、松田…。おい。」

「…静かに…してくれ…」

松田は、急に冷静になって、椅子に座ったまま、目の前の鏡を見た。



君は誰?41

2025-01-16 10:15:53 | 日記
「おかしい…、鏡がすごく曇ってる…」

松田は、ごしごし、ごしごし…と、力一杯鏡を拭く。

しかし、直樹と正人には、全く曇っては見えない。

「あっっ!!み、見ろよ!!」

松田が顔面蒼白で鏡を指差した。

「オレが…、オレが映ってない!!💦」

「え?!」

正人も直樹も鏡を覗き込むが、ちゃんと3人映っている。

「3人映ってるよ」

「いや!オレがいないんだよ!鏡の中には、二人しか映っていないんだよ!!」

「そんなことないよ」