田辺勇一との交際がスタートした。
笑子さんは、昔から物事に熱中するタイプで、恋愛も例外ではない。
あまり夢中になって、傷付くのがコワイ。
常になんとなく、気持ちにブレーキをかけていた。
そんな笑子さんの気持ちを知ってか知らずか、勇一さんは比較的ぐいぐいとくる。
LINEの連絡は他愛もないことも含めて毎日。
週末は必ず会った。
ブレーキをかけているつもりの笑子さんの気持ちも、どんどん勇一さんのペースに巻き込まれていった。
「今度、どこ行く?」
あれ?いつも勇一さんが言っていた言葉が、今は笑子さんが言っている。
「どこでもいいよ。」
もともと、勇一さんは、笑子さんの気持ちを最優先に考えてくれているから、いつも気持ちを聞いてくれた。
…だけど、今の「どこでもいい」という返答には、主体性の無さを感じた。