ひびのあれこれ・・・写真家の快適生活研究

各種媒体で活動する写真家の毎日。高円寺で『カフェ分福』をオープンするまでの奮闘記、イベント情報などをお伝えします。

談春七夜アンコール「緋」

2007年11月08日 | Weblog
談春七夜アンコール「緋」@にぎわい座。
こはる「かぼちゃ屋」。前回よりもリズムが感じられる仕上がり。
談春は「おしっくら」から演目変更して「厩火事」。孔子の留守中に出火、お気に入りだった白馬を焼き殺してしまった家臣たち。孔子が家臣をいかに責め苛んだか、お咲の想像力がどんどんエスカレートしていき、果ては拷問イスから水攻めへと発展。お咲の帰りを待ちかまえる亭主の姿には、しっかりお咲への愛情が描かれている。亭主の了見が唐土か麹町か、試される亭主の奥歯を噛みしめて怒りの声を発する姿はかなりおかしい。ユーモラスに、密度の濃い演出で、今まで聴いた「厩火事」の中でもピカイチの出来栄え。劇画タッチ。
そして間髪入れずに「たちきり」スタート。柳好の「たちきり」しか聴いた事のない私にとっては極北の演出で、談春の心意気を感じた。談春「たちきり」は前回の七夜以来2回目。前回よりも丁寧に複雑に作り込まれている。話の時間軸を水平線とするならば、その線上に刻まれたエピソードが垂直軸として話に織り込まれ、話が多層化している。関西の「たちきれ線香」は重い内容だというが、その影響なのだろうか?道楽が過ぎて蔵に閉じ込められてしまった若旦那。蔵住まいを始めて50日経過した日、若旦那の処置一切を任されていた番頭が旦那夫婦に呼び出され、「そろそろ息子を出してやってくれないか?」と涙ながらに訴えられる。しかし頑なに100日を守り通す番頭。半狂乱で番頭を罵る母親を諌め、2人きりになった旦那と番頭。旦那は番頭の過去の恋愛について触れるが、番頭は「救えなかった」という謎の言葉を残すのみ、その過去は語られることなく、唐突に仲入へ。
100日目、蔵から出た若旦那は番頭に「やっぱり芸者を嫁に迎える」と宣言。番頭も鬼じゃない。こいとから届いた手紙の話を告白、「100日続いたら誰が何と言おうと二人を夫婦にしてあげるつもりだったが」その手紙は80日目を過ぎてぱったり途切れる。こいとから最後の手紙を渡された若旦那は結局その手紙を読むことなく風呂に入る。そして早々に両親に挨拶を済ませて一目散にこいとの元へ。こいとに会わせてくれとせがむ若旦那に対して、こいとの母親の長い独白が始まる。若旦那の存在は希薄。「若旦那が嘘をつくような人じゃないことはあのこがいちばんよくわかっていたのに、どうして最後まで信じることが出来なかったんでしょうね。それが私は悔しい」という母の言葉にぐっときて、「玄関を出たら小糸のことは忘れてください」にたまらず涙。いくつかの齟齬はあったが、インプロのような緊張感が感じられた。落語と一言では片づけられないような不思議な世界に遭遇したようで、終演後は疲労感と高揚感でハイな気分だった。
関内に移動し、4人でアパホテル1階にあるイタリア料理屋で夕食。ここはラストオーダーが10時なのでにぎわい座終演後に便利。ハウスサラダ、トマトクリームソースのニョッキ、キノコリゾット、アマトリチアーナ、カルボナーラ、アンチョビとトマトのピザを注文。日本人が作ったイタリア料理、そんな味。気取りがなく値段も安いので気軽に利用できる。