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或る事件を切っ掛けにして、本庁に引き抜いた白石以愛(しらいし いあい)巡査の直感を、松谷健介(まつたに けんすけ)警部は信頼している。
当初は白石の推理力を動員する迄も無いと思われた三鷹の事件だが、諸事情が判明するに連れて、複雑な様相を見せ始めた。
ケーキは消え、足跡は1つだけ。厭な予感が、松谷の脳裏を掠める。打開策の見えない儘、地道な捜査を続ける内に・・・。
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「2015本格ミステリ・ベスト10【国内編】」で、10位に選ばれた小説「松谷警部と三鷹の石」。著者の平石貴樹氏は“東京大学の名誉教授”という顔も持つ小説家だが、同氏の作品を読むのは初めて。
以前よりは知られる様になったが、其れでもメジャーな存在とは言い難い「カーリング」を取り上げた作品で、使用される用具の「ストーン」の材質や費用が記される等、カーリングに詳しく無い人間にとっては、「そうなんだ。」と興味を惹かれる内容では在る。
「本格ミステリー」という惹句が、矢鱈と目に付く此の作品。「本格ミステリーとはくどくどしく、読み進めるのがしんどい作品の事か?」と嫌味を言いたくなる程、全体的にまどろっこしさが付き纏う。設定もまどろっこしければ、登場人物達の遣り取りもまどろっこしい。章の最後に、松谷警部が作った(とされる)俳句が記されているのも必要性を感じず、うざさを増させる。
犯行動機や殺害方法に無理さを感じるし、真犯人にも意外さは無い。「(ミステリー関連の年間ブック・ランキングの)ベスト10に入る様な内容かなあ?」と疑問。「10位」という微妙な順位は、そういった所が影響しているのかも。
総合評価は星3つ。
読み手によって、“肌合いが合う作品”と“肌合いが合わない作品”というのは在ったりしますね。「楽園のカンヴァス」(http://blog.goo.ne.jp/giants-55/e/76c95abbaf460118cf7e8d8108a239e7)も巷の評価が高かったので期待していたのですが、自分にとっても肌合いが合わない作品でした。ミステリー好きとしては、謎解きの要素が面白く無かったし(「名探偵コナンの様」というのは、言い得て妙だと思います。
ミステリー関連の年間ブック・ランキングで、注目しているベスト10は3種類なのですが、其の中でも「本格ミステリ・ベスト10【国内編】」は其の名の通り、「本格ミステリー」にターゲットを絞ったランキング。其れにしては、「うーん。」と思ってしまう出来でした。(ネット上の書評は、概して高いのですが・・・。)