11年前の記事「人生の幕引きに向けての準備」で触れたが、女優の高峰秀子さんが雑誌のインタヴューで話していた事が、今も忘れられない。もう15年近く前だったと思うけれど、「私物を必要最低限だけ残し、其れ以外は一切合財処分した。」と言うのだ。「人生の最晩年に入り、必要な物以外は全て処分する事で身軽になりたかった。」という趣旨の理由を、彼女は述べていた。
「断捨離」なんて言葉が普及していなかった頃の話だが、「彼の世に物を持って行ける訳でも無し、だからと言って、残すべき物でも無い。」という思考が彼女からは感じられ、其の潔さは自分の琴線に触れた。元々、“ミニマリスト的思考”が在った事も在り、以降は「必要最低限な物以外、出来る限り私物を処分して行く。」という生活をしている。
「断捨離」という言葉が普及した今、有名人でも実行者が増えている。ぱっと思い浮かぶだけでも神津善行&中村メイコ夫妻、中尾彬&池波志乃夫妻、高橋英樹氏、北川景子さん等。又、断捨離では無いけれど、「坂上忍氏は49歳で、“終活”を完了した。」と言う。
彼等の体験談を読むと、「必要以上に物を持たない生活が、精神的にとても楽。」という事を強く感じる。自分は彼等程の境地には到っていないけれど、理想的な姿だとは思う。
ちょこちょこ覗かせて貰っているブログが幾つか在る。同年代、又は其れよりも年上の方々が多いという事も在り、断捨離に関する記事に触れる事が結構在る。「(まめ)たぬきの雑記」を運営されている(まめ)たぬき様は、そういう記事を多く書かれており、非常に参考になる。
又、「ごろりんブログ」を運営されているごろりん様は、先月末に「嗚呼。SFマガジン」という記事を書いておられた。SF小説を愛されているごろりん様にとって、長年保管していた「S-Fマガジン」は“宝物”その物だったろうし、其れ等を処分するというのは、断腸の思いだったに違い無い。
断捨離を心掛けて来た自分だが、どうしても処分出来ない物が在る。子供の頃に夢中になって集めていた切手が、売れる範囲で処分出来たけれど、矢張り子供の頃から大好きで集めて来た手塚治虫氏の本は、どうしても処分出来ない。関連資料を含めると800冊以上は確実に保管しており、何度か処分を考えた事は在るが、踏み切る事が出来なかった。彼の作品が“自分の血肉”になっており、其れ等を処分する事は、自分自身を捨てる様な感じが在るから。手塚作品を全て処分する日、其れは自分が“死”を間近に感じた時になるのだろう。