ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

大勲位大いに語る

2004年11月13日 | 政治関連
大勲位”こと中曽根康弘元首相の自伝ともいえる「自省録 -歴史法廷の被告として-」を読んだ。戦後政治の生き証人とも言える彼の本なので、国内外の政治家達の意外な素顔や、政界の裏側等が垣間見れて興味深い内容だった。

過去の過激とも思える言動で、バリバリのタカ派というイメージを彼には持っていたが、「明治時代の日露戦争迄は”防衛戦争”という要素を見る事が出来るが、第一次世界大戦時の「対華二十一ヶ条要求」以降の日本は、”侵略的”要素が非情に強くなった。」と断じる等、リベラルとは言えない迄も、意外と冷静に事実認識をしている人物なのだと認識を新たにした。

その他にも、”一野人政治家”として含蓄の有る内容が幾つか書かれている。

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今の日本を「漂流し続ける国」と位置付け、その理由に”3つのバブル”が崩壊したからだとしている。

第一は、「政治のバブル」崩壊。「金丸問題」等の政治腐敗から自民党が分裂。その後10年間は10人の首相が入れ替わり立ち代り登場する連立内閣の政治漂流。

第二は、「経済のバブル」崩壊。大蔵省主導の「護送船団方式」が批判され、金融機関の不良債権問題が表面化し、経済全体が不況に陥った。

第三は、「社会のバブル」崩壊。犯罪が増加し、学級崩壊と言われる程教育が崩壊した。

[なるほど、なるほど。]
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「日本は、日英同盟等の様な一対一の外交は比較的無難にこなすが、一対多の”マルチ外交”が非情に下手であり、その最たるものが国際連盟からの脱退である。」とし、次の様な独自の外交四原則を掲げている。

1. 実力以上の事はやらない。

2. 賭けでやってはならない。
3. 内政と外交は互いに利用し合わない。
4. 世界の正統な潮流に乗る。

[何処ぞの大統領と首相には、耳の痛い言葉かも(笑)。]
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(教えを請うた先生が)「日本の指導者は、政策が無かったり、曖昧な時は、「改革」「改革」と言って騒ぐと言っておられたが、なかなかの至言だと思う。」

[これは、完璧に某首相に対する嫌味か(^o^;;;?]
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小泉首相の危うさは「ポピュリズム」への著しい傾斜にある。彼の支持率の高さは、政策の実態よりも彼のパフォーマンスの上手さ、見栄えの良い「ショーウィンドー内閣」に原因が在る。彼は、直感力に優れ、パフォーマンスにも秀でてはいるが、物事を瞬間的に捉えて結論だけ言っている。そこには、思想や哲学、歴史観は無く、「瞬間タッチ断言型」の政治家である。

[やはり、小泉首相に無理やり引退させられたのが、恨み骨髄に徹していたという事か(笑)。]
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人物伝でも、吉田茂元首相を「小技を弄する狡猾な人で、国家の前途とか日本の運命よりは、その場その場の政争に勝てば良いという官僚的現実主義者の傾向が強く、嫌悪感を持っていた。」と切り捨て、”刎頸の友”として余りにも有名だったレーガン元大統領以外にも、ミッテラン元大統領や胡耀邦元総書記等とも親密な関係にあった事や、我々では到底知り得ない、天皇との”私的”な遣り取りが書かれていたりと、興味深い記述が並んでいた。

しかし、何か全体を通して感じるのは、「自慢話のオンパレード」といったもの。元々、自伝なるものに、その当人にとって都合の悪い事を書かないのは判ってはいるが、クリントン前大統領の自伝の様に、自分の恥部すらも潔く曝け出しているのを読んでしまうと、何か興醒めしてしまう部分を感じてしまった。(クリントン前大統領の場合は、その恥部が公に知れ渡っていたものなので、今更曝け出すという事でもないのかもしれないが。)

昨今の政治家の汚職事件を嘆いている記述が幾つか見られるが、戦後多くの疑獄事件が起こった中で何度も関与を噂され、「刑務所の塀の上を何度も歩いたが、上手く”内側”に落ちないで済んだ政治家」と称された御仁は誰だったか?

僻地に所有する別荘に、”わざわざ”レーガン大統領を呼ぶ事で、道路整備等の「自己環境の快適化」を国費で行なった御仁は誰だったか?

彼の哲学や思想には感じ入るものは有ったが、それを彼が実践していたかどうかは甚だ疑問だ。

興味深い内容なのは間違いないが、金を払って迄読む本ではない気がする。自分と同じく、図書館で借りて読む事を御薦めする。

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4 コメント

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Unknown (pb)
2004-11-13 05:48:21
giants-55さんの「引き出し」の多さに本当に感心致します。さて人間年をとると自分がしたことも忘れてしまうようです。



私の記憶では、中曽根氏は(1)国鉄・電電公社の民営化などの行政改革、(2)アメリカとの関係をそれまで以上に重視した外交、(3)党内基盤の弱さから国民の支持率の高さを利用しようとする傾向、が特徴だったと思います。「戦後政治の総決算」が彼のキャッチフレーズでした。詳しくは自民党のホームページをご参照ください。http://www.jimin.jp/jimin/jimin/ayumi/dai11.html



そう、今の首相とそっくりなのです。

(国鉄を高速道路、電話を郵便にすれば...ロンヤスを小泉ブッシュにすれば...総決算をぶっ壊すにすれば...)中曽根氏は政策が無かったから行財政改革を叫んだのでしょうか? 



違いは、小泉首相が吉田・岸-佐藤-福田-安倍とつながる保守本流なのに対し、中曽根は亜流であることです(それが吉田に対する批判につながっているのでは?)。中曽根派の勢力が弱かった為、最終的には田中派の支配を受け入れました。一方今の首相は田中派を壊すことを目的としているようです。ただライバルがいなくなった為に長期政権になったのは似ていますが。



ついでにバブル経済の元を作ったプラザ合意も彼の任期中ですし、靖国参拝を中国の要求に従い中止したのも彼でした。それらの最終解決を今の首相がやろうとしているのも皮肉でしょうか?



きっと上記の中曽根氏のお言葉は自分のしたことに対する深い反省なのでしょうか? 哲学・思想を強調するのも「政界風見鶏」と揶揄された行動に対する反省から来ているのでしょうか??

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なるほど… (やまさわかつまさ)
2004-11-13 10:19:38
この本は読んでみたくなりました。

ブックオフで100円になってませんかねえ(笑)。



大勲位も毀誉褒貶、それこそ色々あった政治家ですが、ああいった形で政界引退をするとは自身全く考えていなかったでしょうね。某首相への恨み節がかなり笑えます。



丁度先日、衆議院憲法調査会公聴会のビデオライブラリを視聴したのですが大勲位は恐ろしい位ピンピンしておいででした(笑)。あのバイタリティーはもしかしたら「私はまだまだやれるぞ某首相よ!」という彼一流のあてつけだったのかもしれません(笑)
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>pb様(bp様?) (giants-55)
2004-11-14 03:12:09
書き込み有難うございました。



基本的に、書き込みして下さった方のブログへ、直接レスを付けさせて戴く形を取っているのですが、貴ブログが見当たりませんでしたので、こちらに書き込む失礼の段を御許し下さい。



pb様の御指摘に唸るだけです。これ等の共通点は気付きませんでした。この様に、色々な視点からの御意見、本当に勉強になります。早速、今日の記事として取り上げさせて戴きました。有難うございました。



尚、「風見鳥」と呼ばれた事に付いても、あくまでも”前向き”な捉え方をされている大勲位殿でした(笑)。
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おいらも (いか@)
2004-11-26 21:04:29
読みました。



田中君



田中氏



田中角栄



角栄さん



と分節作用が乱れていた。



ところで、ばばこういちさんってお元気なんでしょうか?



「社会党ジャック」とか昔ありますたね。







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