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ケネディ大統領暗殺事件: 1963年11月22日、テキサス州ダラスで自動車パレード中のジョン・F・ケネディ大統領が複数の銃弾を浴び、暗殺された事件。銃撃から間も無く、犯人としてリー・ハーヴェイ・オズワルドが逮捕されるも、2日後の24日、拘置所へ移送される途中のダラス警察の地下で、マフィアと繋がりの深いジャック・ルビーに射殺される。(ジャック・ルビーは、その4年後に病死。)「オズワルドは暗殺犯に仕立てられただけ。真犯人は別に居る。」等、暗殺目的や真犯人を巡って様々な憶測が生まれ、未だに謎多き事件とされている。
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伊坂幸太郎氏の「ゴールデンスランバー」は、巧妙に張り巡らされた“罠”に落ち、首相暗殺犯に仕立て上げられてしまった元宅配ドライバーの逃走劇を描いている。その作品が次々に映像化される等、押しも押されぬ人気作家となった伊坂氏。彼の作品を読むのはこれで2作目だ。否、正確に言えば読破したのは今回の作品が初めてで、最初に読み始めた「アヒルと鴨のコインロッカー」は3分の1も読まない段階で、「何だか良く判らないなあ・・・。」と挫折している。それ以降、「自分とは肌が合わない。」と伊坂作品とは距離を置いていたのだが、週刊誌上の書評で「ゴールデンスランバー」を知り、興味を持って読んだ次第。
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仙台で金田首相の凱旋パレードが行われている丁度その時、青柳雅春は大学時代の友人・森田森吾に何年か振りで呼び出されていた。昔話をしたい訳でも無い様で、森田の様子は何処かおかしい。訝る青柳に森田は「御前は陥れられている。今も、その最中だ。」、「金田はパレード中に暗殺される。」、「逃げろ!オズワルドにされるぞ。」と鬼気迫る口調で訴えた。
その直後、金田首相はラジコンヘリで爆殺され、青柳は犯人として警察に追われる事に。「爆殺された旧友」、「身に覚えの全く無い“証拠”の数々」、「常軌を逸した警察の対応」等々、首相暗殺の濡れ衣を着せられて逃亡する青柳は、巨大な陰謀から逃げ切れるのだろうか?
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そっち方面の知識は皆無に等しいのだが、この作品のタイトルはビートルズの曲「ゴールデン・スランバー」に因んで付けられている。その詩が文章に上手く使用されているし、時間や人物の視点が次々に変えられている事で、ストーリーに立体的な幅広さを生み出しているのも上手い。同じ言葉、しかし別の人間が口にした言葉を、“文章の接着剤”に用いているのも心憎い。
「違うよ。違うと思いますよ。あいつ等は俺が居なくても、何か口実を見付けたんじゃないかな、きっと。政治家は、口実を見付ける事に関してだけは天才的だし。どんな事だって、ユダヤ人の虐殺だって、戦争だって、『今、このままだと危険ですよ。』って煽れば遣れちゃうんだ。そういうものでしょ。」。登場人物の一人が口にした言葉だ。巨大な存在が仕組んだ謀略に対し、余りに非力な個人。作り上げられていった「嘘」が「事実」となって行く怖さ、監視社会の怖さ、様々な怖さがこの世の中には潜在しているのだ。
ミステリーの醍醐味の一つが「犯人捜し」ならば、ネタバレになってしまうが、この作品では“真犯人”が特定されておらず、その意味ではミステリーと言えないかもしれない。又、中盤迄の詳細さからすると、終盤は端折った文章という気がしないでも無い。結末も、今一つスッキリしなかった。そういった点が残念で、総合評価は星3.5個とさせて貰う。
ケネディ大統領暗殺事件: 1963年11月22日、テキサス州ダラスで自動車パレード中のジョン・F・ケネディ大統領が複数の銃弾を浴び、暗殺された事件。銃撃から間も無く、犯人としてリー・ハーヴェイ・オズワルドが逮捕されるも、2日後の24日、拘置所へ移送される途中のダラス警察の地下で、マフィアと繋がりの深いジャック・ルビーに射殺される。(ジャック・ルビーは、その4年後に病死。)「オズワルドは暗殺犯に仕立てられただけ。真犯人は別に居る。」等、暗殺目的や真犯人を巡って様々な憶測が生まれ、未だに謎多き事件とされている。
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伊坂幸太郎氏の「ゴールデンスランバー」は、巧妙に張り巡らされた“罠”に落ち、首相暗殺犯に仕立て上げられてしまった元宅配ドライバーの逃走劇を描いている。その作品が次々に映像化される等、押しも押されぬ人気作家となった伊坂氏。彼の作品を読むのはこれで2作目だ。否、正確に言えば読破したのは今回の作品が初めてで、最初に読み始めた「アヒルと鴨のコインロッカー」は3分の1も読まない段階で、「何だか良く判らないなあ・・・。」と挫折している。それ以降、「自分とは肌が合わない。」と伊坂作品とは距離を置いていたのだが、週刊誌上の書評で「ゴールデンスランバー」を知り、興味を持って読んだ次第。
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仙台で金田首相の凱旋パレードが行われている丁度その時、青柳雅春は大学時代の友人・森田森吾に何年か振りで呼び出されていた。昔話をしたい訳でも無い様で、森田の様子は何処かおかしい。訝る青柳に森田は「御前は陥れられている。今も、その最中だ。」、「金田はパレード中に暗殺される。」、「逃げろ!オズワルドにされるぞ。」と鬼気迫る口調で訴えた。
その直後、金田首相はラジコンヘリで爆殺され、青柳は犯人として警察に追われる事に。「爆殺された旧友」、「身に覚えの全く無い“証拠”の数々」、「常軌を逸した警察の対応」等々、首相暗殺の濡れ衣を着せられて逃亡する青柳は、巨大な陰謀から逃げ切れるのだろうか?
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そっち方面の知識は皆無に等しいのだが、この作品のタイトルはビートルズの曲「ゴールデン・スランバー」に因んで付けられている。その詩が文章に上手く使用されているし、時間や人物の視点が次々に変えられている事で、ストーリーに立体的な幅広さを生み出しているのも上手い。同じ言葉、しかし別の人間が口にした言葉を、“文章の接着剤”に用いているのも心憎い。
「違うよ。違うと思いますよ。あいつ等は俺が居なくても、何か口実を見付けたんじゃないかな、きっと。政治家は、口実を見付ける事に関してだけは天才的だし。どんな事だって、ユダヤ人の虐殺だって、戦争だって、『今、このままだと危険ですよ。』って煽れば遣れちゃうんだ。そういうものでしょ。」。登場人物の一人が口にした言葉だ。巨大な存在が仕組んだ謀略に対し、余りに非力な個人。作り上げられていった「嘘」が「事実」となって行く怖さ、監視社会の怖さ、様々な怖さがこの世の中には潜在しているのだ。
ミステリーの醍醐味の一つが「犯人捜し」ならば、ネタバレになってしまうが、この作品では“真犯人”が特定されておらず、その意味ではミステリーと言えないかもしれない。又、中盤迄の詳細さからすると、終盤は端折った文章という気がしないでも無い。結末も、今一つスッキリしなかった。そういった点が残念で、総合評価は星3.5個とさせて貰う。

世の中には何としても芥川賞や直木賞を受賞したいと思っている作家が少なくないと言うのに、「直木賞は他の賞に比べ影響が大きく、候補になると穏やかな気持ちで執筆出来なくなるので。」という理由から、「ゴールデンスランバー」に付いて直木賞の選考対象から外す事を申し出た伊坂氏は、非常に珍しい存在かもしれません。本人は「有名になりたくない。」とも言っている様で、作品を生み出す事に喜びを感じているタイプの作家なのかもしれません。
薔薇様は伊坂作品のファンなんですね。自分は記事でも書いた様に、最初に手に取った「アヒルと鴨のコインロッカー」との相性が余り良くなかったので、ずっと彼の作品を敬遠していた訳ですが、この作品はかなり読ませる内容でした。終盤に物足りなさを感じたものの、それが伊坂作品の特徴なのかなあと、薔薇様の書き込みを拝見して思った次第です。