18年前、「高い水道代」という記事を書いた。詳しくは其方を読んで戴きたいが、日本の水道代が高い理由は「ダム」が大きく影響している。
ダム建設には莫大な費用が掛かる事に加え、ダムから水を運ぶ費用も馬鹿にならない。そして、ダムに沈殿した土砂等を取り除く「浚渫」にも多額の費用(一説には、年間数億円とも。)が費やされ、此れはダムが存在する限り、毎年発生するのだ。加えて、「高度経済成長期の1960年代~1970年代に水道は急速に普及したが、水道管の法定耐用年数は『40年』とされ、其の交換にも莫大な費用が掛かる。(2018年時点で、「水道管の総延長約72kmの内、約17.6%に当たる約13万kmが、法定耐用年数を超えているそうだ。)」という現実が在る。詰まり、「一定の高額な“維持費”が掛かり続けるので、節水すればする程、各家庭の水道料金は上がり続ける。」という妙な現象が起こるのだ。「人口減少が、水道料金上昇に拍車を掛けている。」事も、実際問題として在る。
2021年12月19日のJ-CASTニュースに、「宮城県、全国初『水道民営化』も根強い不安・・・メリットは?値上がり懸念は?」という記事が載っていた。経済ジャーナリストの鷲尾香一氏が書かれた物だ。「人口減少、過疎化等により、水道事業では不採算部門が増加している自治体も多く、公営から民営への転換が検討されている。」そうだが、「宮城県は2021年12月6日、水処理大手『メタウォーター』等計10社が出資した「みずむすびマネジメントみやぎ」(仙台市)に、上下水道と工業用水の運営権を一括して売却する契約を結んだ。」と言う。此れ迄、浄水場や取水施設、又は給水管の修繕等、業務の一部が民間委託されている例や、小規模な自治体での包括的な民間運営委託の例は在るものの、県単位での水道事業運営権の民間事業者への売却は、今回の宮城県のケースが日本初。
厚生労働省によると、人口減少等により水道水の需要が減少しており、料金収入は2001年度の約2兆5,463億円をピークに、減少が続いている。更に、50年後(記事が載ったのが昨年なので、2071年という事になる。)の需要水量は、2000年度に比べ、約4割減る見通しだとか。
で、今回の契約、対象となったのは「県企業局が所有し、仙台市等17市町に跨がる『仙南・仙塩広域水道』等9事業の運営権で、民間企業による運営事業は、2022年4月からスタート。」だと言う。
「水道事業が民営化されると、採算や利益を重視する事により、水道水の安全性が低下する危険性が懸念されるだけでは無く、水道料金が上昇する可能性も在る。」という指摘は、以前よりされていた。「フランスでは、パリ市の水道事業が民営化され、1985年から2009年の間に、水道料金は約3倍に跳ね上がった。パリ市は水道料金の決め方が不透明等を理由に2010年、水道事業を再公営化した。」、「2000年代前半に起きた“南アフリカ史上最悪の事件”と呼ばれる約25万人のコレラ感染は、水道事業の民営化によって水道料金が急上昇した事が背景に在った(水道料金を払えない貧困層1千万人以上が、汚染された川の水を飲料水とした事等により発生した。)とされ、結局、南アフリカは、水道事業を公営に戻した。」等の例が、過去に実際に在る。
日本初の水道事業の民営化、果たしてどうなる事やら。