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綿密な犯罪計画により、実行された殺人事件。アリバイは鉄壁、計画は完璧、事件は事故として処理される・・・筈だった。だが、犯人達の下に、死者の声を聴く美女、城塚翡翠(じょうづか ひすい)が現れる。大丈夫。霊能力なんかで、自分が捕まる筈なんて無い。ところが・・・。
ITエンジニア、小学校教師、そして人を殺す事を厭わない犯罪界のナポレオン。全てを見通す翡翠の目から、彼等は逃れる事が出来るのか?
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相沢紗呼氏の小説「invert 城塚翡翠倒叙集」は、「2019週刊文春ミステリーベスト10【国内編】」の5位、「2020本格ミステリ・ベスト10【国内編】」、そして「このミステリーがすごい!2020年版【国内編】」で1位に選ばれる等、2019年のミステリー関連の年間ブック・ランキングで高評価を得た小説「medium 霊媒探偵城塚翡翠」の続編。
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invert=~を裏返しにする。
inverted detective story=倒叙推理小説。
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「初めに犯人を主軸にした描写が為され、読者は犯人と犯行過程が判った上で物語が展開される。其の上で、探偵役が何の様にして犯行を見抜くのか、何の様にして犯人を追い詰めるのかが、物語の主旨となる。」というのが倒叙推理小説で、TVドラマでは「刑事コロンボ・シリーズ」や「古畑任三郎シリーズ」が有名。
「エキセントリックな言動を多用する事で相手を苛つかせ、失言や失態を導き出し、其れ等を手掛かりにして謎を解く。」というのは古畑任三郎の十八番。城塚翡翠の言動は古畑任三郎其の物で、目新しさが無い。彼女が本当に霊能力を持っているのかは判らないが、高い推理力を持っている事は間違い無いけれど。
「invert 城塚翡翠倒叙集」は3つの中編小説から構成されているが、最後の「信用ならない目撃者」は面白かった。或る人物の正体がとても意外で、「そんな設定だったとは・・・。」という驚きが在る。
3作品共、トリック面では評価すべき所が在る。だが、難を言えば“贅肉の多さ”で、謎を解いて以降の部分が、自分には冗長に感じられた。
総合評価は、星3.5個とする。