長年、カープを応援し続けている友人が居る。「子供の頃から、カープが大好き。」と言うのだから、ファン歴はもうウン十年という事になる。非常に温厚な彼が7年前、或る選手に対して怒りを見せていた。
其の或る選手とは、当時カープに在籍していた新井貴浩選手。此の年にFA権を得た彼は結局、タイガースに移籍する事になったのだが、件の友人は其の際の新井選手の言動に怒っていたのだ。
誤解しないで欲しいのだが、新井選手の移籍に関してはタイガースもカープも、そして新井選手も悪い事をした訳では無い。全てルールに則って行われた事で、そういう意味では非難されるべき事では無い。
では、何故彼は怒っていたのか?「新井選手は前年迄、『FA権を得ても、カープに残留する。』と再三口にしていた。」のにFA宣言をしたのも然る事乍ら、「FA宣言した際の記者会見で、新井選手が『辛いです・・・カープが好きだから。』、『喜んで出て行く訳では無い。』、『FAなんて無かったら良かったのに・・・。』と口にした。」事が、「カープが好きなのに出て行くって、どういう事?其れで『喜んで出て行く訳では無い。』とか『FAなんて無かったら良かったのに・・・。』とかって、カープ・ファンを愚弄してるのか?」と、強い怒りになった。
其れ迄にも、FA宣言してカープから出て行った選手は居る。ジャイアンツに移籍した川口和久投手及び江藤智選手、そしてタイガースに移籍した金本知憲選手の3人だ。「カープは弱いし、金が無いから、其れが嫌になって出て行ったんだろう。」と、友人は彼等に裏切られた様な思いを持ったと言う。ジャイアンツに関しては「金に飽かせて、主力を取って行くチーム。」という思いが在り、其のジャイアンツに移籍した川口投手及び江藤選手に対しては、特に怒りを感じていた。
しかし、此の3人よりも遥かに強い怒りを、新井選手に対して持っていたのは、前述した新井選手の言動が在ったから。此方にも記されている様に、新井選手は決してカープ及びカープ・ファンを愚弄した訳では無かったのだが、誤解されても仕方無い言い方だった事は確かだ。
新井選手に対して強い怒りを持つカープ・ファンは少なく無かった様で、カープと広島市民球場で対戦した際には大ブーイングが起こり、カープ時代の彼のレプリカ・ユニフォームがグラウンドに投げ込まれたりもした。
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「新井貴、古巣の広島8年振り復帰へ」(11月11日、日刊スポーツ)
広島は、阪神を今季限りで退団する新井貴浩内野手(37歳)の入団で合意に達した。
前日10日に交渉し、入団の意思を伝えられた事を、球団幹部が明かした。近日中に入団発表される見通し。
新井貴は阪神との契約交渉で、今季年俸2億円から野球協約の減額制限(1億円超は40%)を超える8,000万円の提示を受け、自由契約を選択していた。来季、広島に入れば、8年振りの復帰となる。
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「カープを裏切った彼の野郎は、絶対に許さない。」と酒を飲み乍ら言っていた友人だが、「新井貴浩という選手は嫌いになったが、新井貴浩という人間は嫌いになれないんだよなあ・・・。」と遠い目で言ったりもしていた。
そんな彼と先日飲んだ際、「新井選手、カープに移籍するという話が出てるよね?」と話を振った所、「そうらしいね。何の面下げて戻って来るんだか。」と言った後、「新井が戻って来るんだ・・・。」と穏やかな表情で呟いていた。
「泥臭く鍛え上げられて行き、主力の座を掴んだ。」、カープの選手達には“良い意味で”、そんなイメージが在る。新井選手もそんな1人と思っているのだが、だからこそカープ時代の彼は、ファンから愛されて来た。強く愛して来た彼だから、ファンは余計に「裏切られた。」という思いが強くなってしまったのだと思う。「絶対に許さない。」と言いつつも、「新井貴浩という人間は嫌いになれない。」と吐露した友人も、複雑な思いを持ち続けて来たのだろう。「新井が戻って来るんだ・・・。」と穏やかな表情で呟いたのも、心の何処かに抑え難い嬉しさが在ったに違い無い。
活躍しなかった訳では無いが、タイガース時代の新井選手というと、「チャンスでダブル・プレーを、やけに食らっていた。」というイメージが在る。責任感の強い人間なので、「自分が活躍して、タイガースを優勝させたい。」という思いが非常に在ったと思うのだが、残念乍ら思いは叶わなかった。
「カープに移籍した際、其の年俸は2千万円程度になるのではないか。」と報道されている。タイガースの提示よりも6千万円程度低く、今季年俸からは10分の1になる訳だ。其れでもカープに戻るというのは、彼の強い意思を感じる。
彼に対して怒りを持っているカープ・ファンは、今も少なく無いかもしれない。若手選手が台頭して来たカープに在って、彼が試合に出るのは厳しいだろう。色んな意味で“茨の道”が彼を待ち構えているとは思うが、個人的には好きな選手(と言うよりも、好きな人間。)なので、何とか結果を残し、カープを優勝に導いて貰いたい。そうすれば、彼を心底嫌いにはなれないカープ・ファンは、再び彼を温かく包み込んでくれる事だろう。
阪神時代の新井はチャンスに弱くて、試合の大勢が決してから長打を打つという感じでした。
そんな新井は決して嫌いではなかったです。チャンスで新井(なぜか新井の打席はチャンスが多かった)、さあ、一打逆転、で、ダブルプレーで一瞬でチャンスはついえる。こんなことが何度ありました。でも、責任感が強く、力が入りすぎな打席でした。そんな新井は好きでした。
広島での活躍を祈ります。
雫石様を始めとするタイガース・ファンのブログを拝読していると、チャンスに於ける新井選手の弱さを嘆く記事が多い一方で、彼に対する労りの様な物も感じる事が多かった。其れは彼が基本的に真面目で在り、「何とか結果を出さなければ。」という責任感が強過ぎるが故の“勝負弱さ”で在る事を知っておられるからだと思います。
「カープ・ファンからの反感」や「中々結果が残せない」等から、タイガース時代の彼からは、心からの笑顔を見い出せる機会が少なかった様に感じています。彼の活躍により、タイガースが優勝出来ていたら、彼は心からの笑顔を見せられていたのではないかと。其れが残念です。
実弟・新井良太選手が、比較的チャンスに強かった事も、兄にとってはプレッシャーになったかもしれませんね。
茨の道を敢えて選んだ新井選手。何とか結果を残して欲しいです。