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知力、体力、先読み能力等、全てが一級のエリートSP・首藤武紀(しゅとう たけのり)は、合衆国シークレット・サーヴィスで“異例の研修”を受ける事に。
初日、銃規制を求めるデモに遭遇した首藤は、突如暴れ出した男を瞬く間に制圧し、人質の幼女を助ける。しかし、其の現場には、大統領暗殺計画を示唆する2枚の写真が残されていた。超一流警護官達に忍び寄る死神の影。
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柳広司氏の小説「ナイト&シャドウ」は、アメリカ大統領の警護に当たる「シークレット・サーヴィス」の人々を描いている。「『昨年の泥沼の様な不可解且つ長期に亘る選挙戦-最後は裁判所の裁定という異例の選挙-を漸く制した“猿顔”、“猿並みの脳味噌”、“低能”、“落第生”と扱き下ろされた合衆国新大統領。』はジョージ・W・ブッシュ前大統領を、『昨年日本で開かれたサミットでアメリカ大統領に対し、“ハウ・アー・ユー?(御機嫌如何?)”と言いたかったのだろうが、“フー・アー・ユー(あんたは誰だ?)”と言ってしまった日本の首相。』は森喜朗元首相をモデルにしてるんだろうな。」等と、色々想像してしまう。
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シークレット・サーヴィスは、1865年、合衆国財務省の法執行部門として創設された。“合衆国財務省秘密検察局”。 アメリカで最も古い犯罪捜査機関の一つで在る。1901年迄、シークレット・サーヴィスの主たる任務は「通貨及び政府発行の小切手・債権類の偽造を防止し、国家の経済構造を保持する事。」で在った。当時、アメリカ国内で流通するドル紙幣の三分の一が偽造品だった。此の為、当然の事乍ら、誰もドル紙幣を受け取ろうとせず、アメリカの流通経済は麻痺し掛かっていたのだ。此の緊急事態に対処すべく、財務省は腕利きの捜査官を集めて秘密検察局(シークレット・サーヴィス)を設立。彼等に”どんな手段を使ってでも”通貨偽造を摘発する様指示を与えた。
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シークレット・サーヴィスと言えば、“アメリカ大統領の警護に当たる組織”というイメージしか無い人も、結構居ると思う。自分もそんな1人だったので、シークレット・サーヴィス設立の経緯、そして「今でも通貨偽造等の取り締まりに当たっている人々が、シークレット・サーヴィスの中には存在する。」というのを初めて知り、勉強になった。(ホワイトハウス内の意外な話も、非常に興味深かった。)
「自分達が“正しい”と思っている事が、実際は“エゴ”以外の何物でも無い。」というのは結構在る事だけれど、「そういう事を行っているのが“権力を有した人間や組織”だった場合、非常に怖い事。」というのを、改めて感じる内容。
ストーリー的には面白いのだが、現実味が在る様で、実際には現実味が薄い設定には興醒めしてしまった。又、(小説内での)“現大統領”の思惑は別にして、“陰で操っていた人間”の犯行動機には、「そんな事で、此処迄大それた事をするかなあ?」という疑問も。そんな現実味の薄さが減点ポイント。
総合評価は、星3つとする。