ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「遊郭島心中譚」

2025年01月19日 | 書籍関連

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幕末日本。幼い頃から綺麗な石にしか興味の無い町娘・伊佐(いさ)のへ、父・繁蔵(しげぞう)の訃報が伝えられた。更に、真面目一筋だった木挽き職人の父の遺骸には、横浜港崎遊廓(通称遊廓島)の遊女屋・岩亀楼と、其処の遊女と思しき潮騒」という名の書かれた鑑札が添えられ、挙げ句、父には「攘夷派の強盗与した上に、町娘を殺した疑。」が掛けられていた。

伊佐は父の無実と死の真相を確かめるべく、嘗ての父の弟子・幸正(ゆきまさ)の斡旋で、外国人のと成って、遊廓島に乗り込む。其処で出会ったのは、「遊女殺し」の異名を持つ英国海軍将校・メイソン。初めはメイソンを恐れていた伊佐だったが、彼の宝石の様に美しい目と、実直な人柄に惹かれて行く。

伊佐はメイソンの力を借り乍ら、次第に事件の真相に近付いて行くが・・・。
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第70回(2024年)江戸川乱歩賞を受賞した小説遊郭島心中譚」(著者霜月流氏)は、「幕末の横浜に実在した遊郭島が舞台の時代ミステリー」で在る。「日本に於て専ら外国人を相手に取っていた遊女或いは外国人の妾と成った女性。」の事を、幕末開国後の1860年辺りから「羅紗緬」と呼ぶ様に成ったが、此の作品の主人公は鏡(きょう)と伊佐という2人の羅紗緬。羅紗緬と成ったのは、2人共に"真実"を明らかにしたいが。伊佐の方は父の冤罪を晴らす目的での真実究明だが、鏡の方は・・・。

タウンゼント・ハリスヘンリー・ヒュースケン等、幕末の歴史で学んだ実在の人物が登場する。歴史好きなので、そういう点では興味深く読ませて貰ったが、物語としてはしっくり来ない部分が幾つか在った。しっくり来ない最たる部分は、鏡が羅紗緬と成った理由で、其れは「或る事に関する真実を明らかにしたい為。」なのだが、実に"抽象的観念的な物に関する真実"なので、個人的にはピンと来なかったのだ。

ミステリーとしての要素は、充分満たしている。3人の遊女を殺した動機は意外性に溢れていたし、又、其れに付随して設けられた"非常に大掛かり仕掛け"が、(今回の江戸川乱歩賞の選考委員の1人で在る)綾辻行人氏の代表作「館シリーズ」を彷彿とさせる所なんぞは、決して悪く無い。

、鏡が追い求めていた真実というのがどうしてもピンと来ず、全体としての評価を下げざるをない。なので、総合評価は星3つとする。


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