30年前、ヨーロッパを旅した際、イタリア・ナポリ近郊に位置する「ポンペイ遺跡」を訪れた。ヴェスヴィオ山の麓に在った古代都市が、西暦79年のヴェスヴィオ山噴火で発生した火砕流によって、地中に埋もれてしまった。」事で有名な遺跡だが、TV番組や書籍等で散々見聞して来た場所では在ったものの、実際に目の前にすると様々な驚きが在った。
驚きの1つは、「“売春宿”が、40ヶ所以上存在していた。」という事実。「2千年近く前に、売春宿が存在していた。」事に、「人間の欲望って、全く変わっていないんだなあ。」と驚くと同時に、「其の当時にも“男女の営み”は在った訳で、“性欲”を処理する為の場所が存在していても、何等おかしくはないなあ。」という思いも。
6月23日夜、NHKで放送された「NHKスペシャル」は「ヒューマンエイジ第4集 性の欲望 デジタル技術解放か堕落か」というタイトルで、「人間特有の“性欲の謎”」に迫る内容だった。「AIやロボット等、『人では無い相手』で性的欲求を満たす“性欲のヴァーチャル化”が進んでいる今、新たな幸福感が生み出される一方、刺激の強い快楽が生身のパートナーとの関係に問題を招く事態も起っている。」のだとか。
“2024年6月30日21時49分迄”、此方で当該番組を視聴出来る。とても興味深い内容なので、是非全てを視聴して貰いたいと思う。
世界的に、“性欲のヴァーチャル化”が進んでいると言う。ドイツのベルリンに在る“サイバー風俗店”では、「客は薄暗い照明で照らされた個室に入り、ベッドの上に横たえられた等身大の人形を使って、性処理をする。」というシステム。“ベルリン初の複合現実セックス体験が出来る場所”というのが売りで、「客はVRゴーグルを着用して性的な映像を見て、同時に別の部屋に待機する“ヴォイス・クイーン”と呼ばれるスタッフと性的会話をし乍ら、人形と性的行為に及ぶ。」との事。
又、中国の広東省では、「最新技術を組み合わせ、心と身体の両面を同時に満たそうという試みが始まっている。」そうだ。元々広東省は、所謂“セックス・ドール”の世界的な生産地で、世界需要の約90%、年間約180万体が生産されて来た。AIが搭載された人間そっくりのセックス・ドールという、所謂“セックス・ロボット”が出始めている。「インターネットに接続されたAIが、利用者との会話を学習し、長く使えば使う程、より親密な会話が出来る様になる。」と言う。「顔の中には、AIと連動した表情を作り出す仕組みが組み込まれている。」事で、人間っぽさは確かに在る。
ベルリンの話にせよ、広東省の話にせよ、利用者は増加している様だ。何方も「基本的に人とのコミュニケーションを排除した、無機的な世界への耽溺。」という感じがし、「唯でさえ人とのコミュニケーションが薄れて来ているというのに、こういうスタイルがドンドン広まって行けば、世の中はどうなってしまうのだろうか?人とのセックスが減って行く様な事になれば、滅亡の方向に向かってしまうのでは?」という不安も。
でも、良く良く考えれば、昔から「ダッチワイフ」は存在していたし、自分が若い頃には「電話を介して、御互いの音声のみで性的行為を行う。」という「テレホン・セックス」が流行していたし、「仮令“人を介さないで性欲を満たす新技術”が出て来たとしても、過依存を避ける仕組みが構築されれば、そんなに心配する事でも無いのかなあ。」と思ったりもする。