********************************* 近所に住む“むらさきのスカートの女”と呼ばれる女性の事が、気になって仕方の無い“わたし”は、彼女と「友達」になる為に、自分と同じ職場で働き出す様に誘導し、其の生活を観察し続ける。
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第161回(2019年上半期)芥川賞を受賞した小説「むらさきのスカートの女」(著者:今村夏子さん)は、主人公“わたし”の近所に住み、“むらさきのスカートの女”と呼ばれる女性を描いている。決して若く無い彼女は、ホームレスを思わせる風貌で、定職にも就いていない。異様さを漂わせる彼女を、多くの大人達は接しない様にしているが、子供達はからかいの対象として近付いたりしている。そんな“むらさきのスカートの女”に強い興味を持った“わたし”が、彼女に判らない様に、自分と同じ職場で働き出す様に誘導する。そんな変わった設定の小説だ。
ミステリーの世界には、“イヤミス”と呼ばれる分野が在る。湊かなえさんの作品なんぞは代表例だが、「読み終えた後、嫌な気分になるミステリー。」の事だ。「むらさきのスカートの女」はミステリーでは無いけれど、“イヤミス系の作品”だと思う。人が持ち、心の奥底に隠している嫌な部分を、曝け出して書いているからだ。
変わった設定だし、“わたし”の正体の意外性も在るので、すいすいと読み進めてしまう内容。でも、読み終えた時に感じるのは、「だから何?」という思い。芥川賞受賞する程の作品だろうか?
総合評価は、星3つとする。