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始めて感じる胸のモヤモヤ。過ぎ去ってしまった彼の頃の事。今、心の中に在る感情は、此れから何処に行くのだろう。
家族、友達、社会。胸がぎゅっと苦しくなった時。頭でも、心でも、判らなくても、君と一緒に考える。此の世界を、ずんずん歩いて行く為に。
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重松清氏の小説「答えは風のなか」を読了。自分が実際に読んだ彼の作品は此れ迄に、「かぞえきれない星の、その次の星」と「ひこばえ」だけと記憶しているが、原作をドラマ化した作品は「流星ワゴン」、「きよしこ」、「とんび」、そして「あすなろ三三七拍子」が在る。
1963年生まれの重松氏。彼が書いた作品には、何とも言えない懐かしさを感じる物が多い。自分と同年代という事が大きいのだろうけれど、“1960年代の匂い”が漂っている。又、「“家族の情愛”を描いている。」というのも重松作品の特徴。
10個の短編小説で構成されている「答えは風の中」も、そういう特徴が溢れている。そして、全ての作品に共通するのは、「作者からの“答え”が提示されていない。」という事。「こういう現実が在りましたけれど、貴方はどういう“答え”を導き出しますか?」という作者からの問い掛けを感じるし、読者が導き出す答えに“唯一の正答”は無い様に思う。「“読者の数”だけ、“読者形の答え”が在る。」に違い無い。
個人的には「しあわせ」と「タケオの遠回り」、そして「あきらめ、禁止」という作品が強く印象に残った。「タケオの遠回り」は、ヘイト・クライムやヘイト本、ヘイト・スピーチ等、「世界中に数多くの“ヘイト”が溢れ返っている“今”に通じる“過去”の世界。」で在り、「剥き出しの悪意を見せる人達で在っても、普段の個人個人は悪意を感じさせない人達が少なく無い。」という所に、人間の怖さを感じる。
総合評価は、星3.5個とする。