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博士号を持ち乍ら、30歳で北海道警察の警察官となった沢村依理子(さわむら よりこ)。或る日、5年前に未解決となっていた誘拐事件の被害者・島崎陽菜(しまざき ひなた)の遺体が発見される。犯人と思われた男は既に死亡・・・まさか共犯者が?捜査本部が設置されるも、再び未解決の儘解散。
暫く後、5年前の誘拐事件の捜査資料が漏洩する。何と沢村は、漏洩犯としての疑いを掛けられる事に。果たして沢村の運命は?そして、一連の事件の真相とは?
組織に翻弄され乍らも、正義を追い求める沢村。警察官として、1人の女性として、葛藤し成長して行く。
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第67回(2021年)江戸川乱歩賞を受賞した小説「北緯43度のコールドケース」(著者:伏尾美紀さん)は、「5年前に発生し、未解決となっていた誘拐事件の被害者が、5年の時を経て、遺体となって発見される。」という始まり。誘拐事件の捜査に関わるも、途中で捜査から外されてしまった警察官・沢村依理子が、被害者の遺体が発見された事で、真相究明に当たるのだが、彼女は誘拐事件の捜査に当たる部署からは外れているので、直接的な捜査は難しい。加えて、“博士号を持つ女性の警察官”という経歴により、周囲から奇異な目で見られ、そして疎んじられる状況。真相究明も然る事乍ら、「自分の居場所を見付けらず、警察官を辞める事も頭に過っている彼女。」が、事件をどう解決し、自身の進む道をどう決断するのかも注目点。
結論から言えば、余り出来の良い作品では無い。事件の(余りに使い古された)構図や展開、犯人、動機等が早い段階で読めてしまうし、何よりも駄目なのが「一筋縄では自供しなさそうな犯人が、唐突に自供し始める。」という点。「人は誰しもウイーク・ポイントを持っている物だし、其のウイーク・ポイントを的確に突けば、強固な意志ですらも崩れ落ちさせる事は可能。」とは思うが、余りにも唐突過ぎる自供には違和感しか無い。「起承転結」の「起」の“直後”に、行き成り「結」に飛んでしまった様な不自然さ。此の点だけでも、大きな減点ポイントだと思う。
又、沢村が尊敬していた人物が、突然の変貌振りを見せるのだが、其の理由というのも稍“取って付けた感”が在る。そういう不自然さが幾つも積み重なり、読んでいて白けてしまった。
総合評価は、星3つとする。