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成瀬あかり(なるせ あかり)の人生は、今日も誰かと交差する。「ゼゼカラ」ファンの小学生、娘の受験を見守る父、近所のクレーマー主婦、観光大使に成るべく育った女子大生等々。個性豊かな面々が、新たに“成瀬あかり史”に名を刻む中、幼馴染みの島崎みゆき(しまざき みゆき)が故郷へ帰ると、成瀬が書き置きを残して失踪しており・・・。
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小説「成瀬は天下を取りにいく」が、2024年(第21回)本屋大賞に選ばれた宮島未奈さん。「優秀&美人なのだが、無愛想&空気を読めないという、兎に角変人。唐突に思いも寄らない事を決断し、そして速攻で実行に移す。」という成瀬あかりが主人公の此の作品は非常に面白く、自分は総合評価「星4つ」を付けた。そして、今回読んだ「成瀬は信じた道をいく」は「成瀬シリーズ」の第2弾に当たり、全部で5つの短編小説から構成されている。
(記憶違いで無ければ)第1弾の「成瀬は天下を取りにいく」では描かれなかった成瀬の家族が、今回は詳しく描かれている。「変人中の変人といった成瀬なので、其の家族も相当に変人なのだろうな。」と思っていたら、母親に少し其の片鱗が感じられなくも無いけれど、父親は到って“普通人”で、変人化してしまった娘に戸惑っている様子が何とも微笑ましい。
YouTuber・ドントテルミー荒井氏が、世界の様々な問題に関して詳しく解説するYouTubeチャンネル「大人の教養TV」及び「大人の教養TV 2nd」が面白くて、良く視聴している。頭脳明晰な彼だが、1ヶ月程前の動画「精神病院に行ってきました」【動画】という動画が興味深かった。是非、当該動画を視聴して貰いたいのだが、ドントテルミー荒井氏の知人の知人が特別支援学校で働いており、其の彼が生配信でのドントテルミー荒井氏の言動を見ていて、特別支援学校での経験から「彼は、間違い無く発達障害が在る。」と感じ、其れをドントテルミー荒井氏に指摘。で、ドントテルミー荒井氏が精神病院に行った所、発達障害の診断を受けたと言う。「自閉症の傾向が強く、ADHDの傾向もまあまあ強い。」との事で、「人の感情が理解出来ない。」、「自分の中で“理由”や“意味合い”を見出だせない事は、覚えられない(覚える気が起きない)。」、「夢中になってしまうと、夢中になった物以外は、視野に入らなくなってしまう。」というのが、ドントテルミー荒井氏には当て嵌まると。
ブランコに乗る為、他の子供達が列を作って待っていた際、子供だったドントテルミー荒井氏が“横入り”をして、トラブルになった事が在った。「列を作っているといっても、間はぴったりと密着している訳では無く、『間が空いているなら、入っても良いんだろうな。』という“全く悪気の無い考え”からの行動だった。」そうだが、人の感情が理解出来ない事も含めて、人間関係で軋轢を生む事が少なくなかったと言う。ドントテルミー荒井氏としては「自身の言動の何処が悪いのだろうか?」と本気で理解出来なかったそうだが、こういう感じだったら“社会生活から逃避”してしまったりと、普通なら非常に生き辛い事だろう。でも、彼を診断した医師曰く「ドントテルミー荒井氏はIQが非常に高いが故に、人の感情が理解出来ない儘でも、何とか切り抜けて来られたのだろう。」と。
「自身の言動が、相手にどういう感情を起こさせるのか?」等を“学習”して行き、社会性を得て行ったというドントテルミー荒井氏。でも、普通の人ならば「何となく判っている積り。」で済ませてしまっている事でも、彼は全く済まされず、徹底的に“理由”や“意味合い”を追求する姿勢は捨てられないからこそ、「とても解説が判り易い!!」と視聴者を感嘆させる動画が作れるのだろう。
成瀬の言動からも発達障害の可能性を強く感じられるのだが、本人が“自身のイレギュラーな言動”に対して全く無自覚で在り、又、IQも非常に高そうな事から、あらゆる困難も切り抜けられるに違い無い。
「やめたいクレーマー」という作品では、何でもクレームの対象にし得てしまうクレーマーの思考に唖然とさせられる一方で、そういう思考の持ち主の“有効な利用法”には、思わずニヤリとしてしまった。
今年で41歳になる宮島未奈さん。「成瀬は天下を取りにいく」のレヴューでも書いた様に、文章を読んでいる限りでは、「大学生が書いたのかな。」と思う程、実に感性が瑞々しく、“若者感”溢れている。今後も、此の瑞々しさを維持して欲しい物。
総合評価は、星3.5個とする。