**********************************************************
裏金作りに巻き込まれ、全てを失った元官僚の古葉慶太(こば けいた)は、イタリア人大富豪のマッシモ・ジョルジアンニに、世界を揺るがす計画を託される。其れは、国籍もバラバラな“負け犬”仲間達とチームを組み、香港の銀行地下に隠された国家機密を奪取するという物だった。敵は大国、狙うは国家機密。1997年、返還前夜の香港で、負け犬達の逆襲が始まる。
**********************************************************
長浦京氏の小説「アンダードッグス」は、第164回(2020年下半期)直木賞の候補作となった(受賞ならず。)他、「このミステリーがすごい! 2021年版【国内偏】」の5位に選ばれた作品。
「アメリカの陰謀により、自らが育てた会社と息子の命を奪われたイタリア人大富豪のマッシモ・ジョルジアンニが、莫大な資金を元に復讐を果たすべく、国家機密奪取要員を集め出す。」という1996年の年末から、ストーリーは始まる。国家に嵌められ、全てを失った古葉慶太もグループの一員に選ばれたのだが、其のグループを構成するメンバー達は“負け犬”揃い。(アンダードッグとは、負け犬を意味するそうだ。)一癖も二癖も在るメンバー達を、単なる官僚に過ぎなかった古葉がリーダーとして束ねなければならないのだ。
香港の主権が、イギリスから中国に返還&移譲されたのは1997年7月1日の事。「アンダードッグス」では、「1997年」と「2018年」という時代、即ち「香港返還前」と「香港返還から21年後」という時代を交互に描いている。「1997年」は古葉が、そして「2018年」は彼の義理の娘・古葉瑛美(こば えいみ)が主人公。「義理の娘という事だが、彼女と古葉は抑、どういう関係だったのだろうか?」等、全く判らない事が多い状態で、話は進んで行く。
所謂“スパイ小説”に良く在る様に、国からも人からも次々と裏切られて行く古葉。大国によって、虫螻の様に消されて行く人々。我々一般人には窺い知れない“闇”が、此の世の中には少なからず存在しているのだろう。
最後の最後に古葉を裏切る人物のバックには、雇い主たる或る国が存在するのだけれど、「大国を相手に回して、“彼の国”のトップが、そんな大決断を出来るだろうか?」という疑問が。又、最後に待ち受ける結末も、「幾つもの大国が執拗に命を狙い続け、実際に何人も殺害されて来たのに、〇を変えた位で生き永らえていたというのは、とても無理が在るだろう。」と感じた。
総合評価は、星3つとする。