ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「彼女が探偵でなければ」

2025年01月26日 | 書籍関連

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こう成る事を知っていたら、私は探偵を辞めていただろうか。

森田みどり(もりた みどり)
は、高校時代に探偵の真似事をして以来、人の"本性"を暴く事に執着して生きて来た。気付けば二児の母と成り、探偵社では部下を育てる立場に。

時計職人の父を亡くした少年(「時の子」)、千里眼を持つという少年(「縞馬コード」)、父を殺す計画をノートに綴る少年(「陸橋の向こう側」)等、"子供達"を巡る謎にのめり込む内に彼女は、真実囚われて、人を傷付けて来た自らの探偵人生と向き合って行く。

謎解きが生んだ犠牲に、光は差すのか?
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今回読了した小説彼女が探偵でなければ」(著者逸木裕氏)は、3年前に読了した「五つの季節に探偵は」(総合評価:星3つ)の続編。人の心の奥底を、覗き見たい。暴かずには居られない。という"宿痾的性質"を持つ森田みどりが主人公で、彼女は探偵業に就いている。

前作の「五つの季節に探偵は」では、17歳から33歳のみどりが描かれている。最初は高校生だった彼女も、最後は結婚して森田に成っている。16年という長い年月を経て、彼女自身に変わった面も在ろうが、「人の心の奥底を、覗き見たい。暴かずには居られない。」という性質は全く変わらず、其れに友人を失ったりもして来た。

今回の「彼女が探偵でなければ」は5つの短編小説で構成されており、(恐らく)37歳から39歳迄の森田みどりが描かれている。

"正義"というのは、非常に危うい概念でも在る。人其れ其れが信じる正義が在り、中には「どう考えても誤っている正義の概念」も在るだろうけれど、「或る人にとっては受け入れ難いが、必ずしも誤りとは言えない正義の概念。」も結構在ったりして、厄介で在る。

とは言え、「犯罪の加害者を突き止める。」という行為自体は正しい事だろう。でも、みどりの場合、根底に在るのが「正義を貫きたい。」というのでは無く、上記した様な「『覗き見趣味』や『自己満足』を充足させたい。」という思いが最優先されているので、読んでいて余り良い気持ちはしない。

だからとも言えるが、「モヤモヤが残ったり、不快な思いが残ったりする結末の物が目立つ。」というのが特徴で、「探偵業に就いている人物が主人公で、似た様な読後感。」という共通点を有する事から、「杉村三郎シリーズ」(著者:宮部みゆきさん)や「葉村晶シリーズ」(著者:若竹七海さん)と似たテーストを感じてしまう

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現在では、花壇の中に大きな時計を設置したものを花時計と呼ぶけれど、もともとは植物の開花によって時刻を知るものだった。開花時刻の決まった花を何十種類も植えておくと、花が開いている状況によって時刻が判るのだ。一時期の父はイヌガラシウニサボテンといった珍しい花を調達して植えていたのだけれど、結局多くの花を一カ所で咲かせるのが難しいらしく、花時計は上手く作れなかった。 (「時の子ー2022年夏」より)

探偵は、あちこちを巡って、色々な手がかりを集め、必死に考えてなんとか答えを出す。でも<答えを簡単に出す人>は違う。自分の信じる答えが先にあって、現実のほうを分解して都合よくそれに当てはめていく。本当の答えが出るはずの地点よりもずっと手前で、答えにたどり着いてしまう。そういう人を相手にするのが大変なのは、判るよ。。 (「太陽は引き裂かれてー2024年 春」より)
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総合評価は、星3つとする。


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