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或る事情から刑事弁護に使命感を抱く持月凛子(もちづき りんこ)が、当番弁護士に指名されたのは、埼玉県警の現役女性警察官・垂水涼香(たるみ すずか)が起こしたホスト殺人事件。凛子は同じ事務所の西大輔(にし だいすけ)と弁護に当たるが、加害者に虚偽の供述をされた挙げ句の果て、弁護士解任を通告されてしまう。一方、西は事件の真相に辿りつつ在った。 そして、最後に現れた究極の存在とは?
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薬丸岳氏の小説「刑事弁護人」を読了。刑事弁護人とは、「刑事事件に関し、被疑者、又は被告人が正当に権利を行使し、又、正当な利益を保護する為の支援者・代弁者。」を指す。
此の小説には、「過去に悲しい経験をし、今現在も其の懊悩から脱却出来ていない。」という者達が何人か登場している。被疑者・垂水涼子だけでは無く、彼女を弁護する持月凛子や西大輔も例外では無い。懊悩から脱却出来ていないからこそ、彼等の言動は其の儘受け取る事が出来ず、非常に複雑で在る。
「男女間の痴情の縺れから発生した物。」、当初はそういう単純な構図で捉えられていた殺人事件だが、凛子達が涼子と接見し、又、事件関係者と接触して調査を進めて行く中で、意外な真相が浮かび上がって行く。「凛子は何故、嘘を吐いたのか?」、「彼女は、何を守ろうとしているのか?」といった点が、「刑事弁護人」の肝となっている。
読み終えて、心の中に“澱”が残る作品。すっきりしない点が在り、最後の最後に“事件を起こしてしまった老女”の今後も気になる所。
総合評価は、星3つとする。