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「2019年元日に新天皇即位、元号は半年前迄に」(1月11日、読売新聞)
政府は、2019年1月1日に皇太子様が新天皇に即位し、同時に元号を改める検討に入った。
新元号は、改元の半年以上前に公表する方向だ。
平成30年(2018年)の区切りで、天皇陛下の退位を実現すると共に、国民生活への影響を最小限に抑える為、新元号は元日から始め、事前に公表する事が望ましいと判断した。政府は一代限りの退位を可能にする特例法案を20日召集の通常国会に提出する方針で、陛下の退位日は政令で定める事を法案に明記する。
陛下の退位日を定める政令は、閣議決定前に、皇族や首相、衆参両院の正副議長、最高裁長官等がメンバーを務める皇室会議に諮る事も検討している。
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昨夏、今上天皇が“生前退位の意向”を表明した。「天皇は、政治に関与してはならない。」という大原則からすると、此の意向表明は“グレー・ゾーン”に在るけれど、「高齢の身(昨年で83歳)で、多くの公務を完璧に成し遂げる事に限界を感じている。」というのは凄く理解出来るし、個人的には「生前退位を認めて上げるべき。」という思いは在る。現行法では天皇の生前退位は認められていないので、何等かの法改正は必要だとも。
だが然し、「皇位継承を定めた皇室典範の改正」、即ち「天皇の生前退位を、永続的に認めるシステム。」というのには賛成出来ない。過去の歴史を振り返ると、「天皇自身や其の側近が恣意的に生前退位する事で、内乱や政争を生み出して来た。」事が在るので。だから、「一代限りの退位を可能にする特例法案で対応。」というのは、ベターな選択だろう。
今回のニュースから、思った事が3つ在る。1つ目は、「此れで益々、自分が生まれた『昭和』という時代が遠ざかった感じになるのだろうな。」という事。「『明治生まれの人達が、昭和を迎えた時の思い。』は、そういう漢字だったんだろうな。」と。
2つ目は、「新元号になる事で、平成や昭和等の他の元号から何年に当たるのかや、西暦への置き換えが一層面倒になりそう。」という事。「昭和XX年生まれです。」と言われた際、「自分自身が昭和〇〇年生まれだから、XX年との差を考えると、今は△△歳だな。」と計算出来るが、「平成XX年生まれです。」となると、パッと計算出来ない。新元号になる事で、余計厄介になりそうだ。「元号を無くせ。」とは言わないけれど、「少なくとも公の書類は、全て西暦表記にする。」とかして欲しい。
そして3つ目は、「今年から来年に掛けて、マス・メディアで“新元号の予想合戦”が激化するだろうな。」という事。天皇が亡くなられてからの新元号予想となると「不謹慎だ!」等の誹りを受け様が、生前退位に当たってとなると派手にし易くなるだろう。結果として「光文事件」の様な事が起こる可能性も。
過去に、皇室内部がベールに閉ざされていたり、天皇自身が表に出て来ないという情勢下では、確かに政争に利用されたりした事もあったでしょうが、今は開かれた皇室で、天皇のご意思もテレビで見る事が出来ますし、そういう不測の事態はまず起きないと思います。また世界的に見ても生前退位はむしろ主流で、ご高齢になったら公務から外れ、ゆっくりと余生をお送りいただく方が理にかなっているのではないでしょうか。
特例法案といった一時しのぎでは、次の天皇がご高齢になった時、また今回のような生前退位の意向表明→有識者会議→特例法、といった事が繰り返されるような気がします。
それともう一つ、IT化が進んだ現在では、元号変更に伴うシステム変更に膨大な手間と時間がかかるという問題があります。
実は前回の昭和天皇崩御の時、私は金融機関のシステム部に在籍していて、この問題に係って大変な苦労をした経験があります。
もうその時でも、オンライン・システムやパソコンが普及しておりましたが、コンピュータ内部に保存されている誕生日その他の日付は、実は西暦で登録されており、出力書類・画面上に表示される和暦(昭和)は、プログラミングによって西暦から1925を引いて算出していました。
昭和天皇の容態悪化が伝えられた時、おそらく日本中のシステム関係者はパニック状態になったはずです。コンピュータが登場したのは昭和中期以降ですので、開発関係者は何も考えず、和暦表示はすべて「昭和」、年数は西暦マイナス1925としかプログラムしていなかったのです。
元号が変わる、という事は始めての経験となったわけです。今後は全てのプログラムにおいて、1989年1月7日以前は「昭和」それ以降は「平成」と表示、かつ平成の場合は西暦マイナス1988と計算するようプログラム変更を行わなければなりません。
私のいた部署だけでも関連プログラムは1,000本以上、それらの日付表示箇所を1個1個チェックして変更しなければならず、全プログラマに緊急指令が出されてシステム変更にかかりました。
問題なのは、まだいつから変わるか、新元号は何になるかも判らない状態ですので、具体的な変更は行えません。とにかく変更が必要な箇所のみ押さえておき、新元号が決まり次第、一斉に修正出来るよう準備は整えました。
1989年1月7日、小渕官房長官によって「平成」が発表された時、待機していた全プログラマが一斉に作業に入り、修正作業を行いましたが、私も含め全員徹夜になりました。それでも間に合わず、一部ではしばらくは「昭和」が表示されたままのものもありました。全国ではもっと大変な所もあっただろうと想像します。
あの頃よりもっとコンピュータ化は進み、パソコンやタブレット端末の表計算その他アプリ等、日付換算のあるソフトの数は膨大な量になっています。
もし前回同様、天皇の生前退位がなく、崩御される直前までその元号が続いた場合は、大げさな言い方をするとシステム関係者に過労死が続出する事態になるでしょう。
そういうわけで、今後も天皇退位、元号が変わる場合は、絶対に半年以上前に予告していただかないとえらい事になるのは間違いありません。生前退位は、そういった問題からも恒久的な制度化が必要だと、経験上申し上げておきます。
「昭和」から「平成」へと元号が変わった際、システム変更が非常に大変だったという話は見聞した事が在ったのですが、実際に其の場に身を置いておられたKei様の経験談を拝読し、想像以上の修羅場が在った事を知りました。貴重な経験談、有難う御座いました。
テクノロジーが進化した事でシステム変更のスピード化が図れた一方で、対応しなければならないデータ量が大幅に増え、差し引きすれば変更に従事する方々の業務量は格段に増えそうなのですね。
文化としての「元号」の重要性は理解しているものの、「効率化」という面も考慮しないといけない。公の書類では「西暦表記」を主とし、「元号表記」は飽く迄も二次的な物にして欲しいと、個人的には思います。
生前退位を恒久制度にするか否かは、非常に難しい問題ですね。仰る様に特例法での対応となると、将来的に今回と同じ様なドタバタが生まれてしまう。其れは判っているのですが・・・。
以前にも書いた様に、自分は皇室に対して深い思い入れは無い人間です。皇室を必要以上に持ち上げる報道姿勢も好きじゃ無い。でも、皇室という制度が在る以上、政府(安倍首相?)の意向を受けている様な人間許りを集めた様な“有識者会議”で方向性を決めるのも、何か違うと思う。世論が全てでは無いけれど、こういう問題こそ世論を踏まえて進めるべき。世論の多くが「生前退位を恒久制度にすべき。」とするので在れば、其れは尊重されるべきでしょうね。