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・或る理由で家を出た小説家が、葉山の古民家に一時避難。生活を満喫するも、其処で出遭ったのは・・・。(「海の家」)
・早期退職の勧告に応じず、追い出し部屋に追い遣られた男性が、新たに始めた事は・・・。(「ファイトクラブ」)
・人気プロ野球選手と付き合うフリー女性アナウンサー。恋愛相談に訪れた先でのアドヴァイスとは・・・。(「占い師」)
・5歳の息子は、新型コロナウイルスが感知出来る?パパが取った究極の対応策とは・・・。(「コロナと潜水服」)
・ずっと欲しかった古いイタリア車を手に入れて乗り出すと、不思議な事が次々に起こって・・・。(「パンダに乗って」)
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奥田英郎氏の小説「コロナと潜水服」は、“不思議な存在”が登場する5つの短編小説から構成されている。
表題となっている「コロナと潜水服」は、昨夏に発表された作品。新型コロナウイルス感染症の流行が拡大している中で生み出された作品で、新型コロナウイルス感染症に怯える1人の男性の姿を描いた内容で、深刻さの中にもニヤッと笑ってしまう要素が存在している。「良くもまあ、こんな設定を考えたなあ。」と感心。
5つの作品中、「ファイトクラブ」と「パンダに乗って」が強く印象に残った。特に良かったのは「小さな広告会社を営む小林直樹(こばやし なおき)が、2人の子供が相次いで大学を卒業して就職し、55歳となった今、自分への御褒美としてイタリア製の初代フィアット・パンダという車を買う事になった。別にカー・マニアでも無い彼だが、若い頃に此のコンパクト・カーのシンプルで愛らしい外観に魅せられ、ずっと欲しかったのだ。1980年にデビューした“パンダ”を捜していた所、新潟県の中古車店で1台販売されている事を知り、100万円で購入。在住する東京から新幹線に乗り、引き取りに行くと、パンダには非常に古いカーナヴィが搭載されていた。其のカーナヴィの指示に従って車を走らせ、次々に辿り着いた場所は、“或る共通点”で繋がる場所だった。」というストーリーの「パンダに乗って」。「此の作品を読むだけでも、『コロナと潜水服』を手に取る価値在り!」と断言出来る程、素晴らしい作品。
「『占い師』と『コロナと潜水服』の評価は、其れ其れ『星3つ』。『海の家』は『星3.5個』で、『ファイトクラブ』は『星4つ』。そして、『パンダに乗って』は『星4.5個』。」という感じ。総合評価は「星4つ」とする。