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多国籍料理店でアルバイトをするベトナム人留学生ミンの様子がおかしい。旧友のオーナー・中沢紀見亜(なかざわ きみあ)から相談を持ち込まれたマコトが、彼女の身辺を調査すると、留学生の生活を管理して搾取する日本語学校の存在に行き着いた。
そんな中、ミンから「日本に居る兄・アインが居なくなった。」と知らせが入る。希望を持って日本に来た若者達を食い物にする奴等に罰を与える為、マコトとタカシが池袋の路上で動き出す。 (「絶望スクール」)
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石田衣良氏の小説「池袋ウエストゲートパーク」が上梓されたのは、今から21年前の1998年の事だった。自分の場合、(原作を元にした)TVドラマ版を先に見て、非常に面白かったので、原作「池袋ウエストゲートパーク」を読んだという順番。以降、全シリーズを読み続けている。冒頭の梗概は、今回読了した「絶望スクール 池袋ウエストゲートパークXV」に付いて。同シリーズの第15弾(他に、“番外編”が2作品に存在する。)に当たる。
「絶望スクール 池袋ウエストゲートパークXV」は、4つの短編小説で構成されている。扱っているテーマは「動物虐待」、「無謀運転」、「引き籠もり支援を隠れ蓑にした悪徳ビジネス」、そして「海外からの留学生を食い物にする悪質な留学ビジネス」となっている。
「日本の社会の闇、又、其の闇の中で藻掻き続けている弱者に光を当て、エッジの利いた表現力で描写する。」というのが、池袋ウエストゲートパーク・シリーズの最大の魅力。又、弱者に対する温かい視線が常に感じられるのも、自分が此のシリーズを愛する理由だ。
21年も続いているシリーズなので、正直、マンネリ化していた時期も在った。他の作品が“妙な方向”(セックス描写が、余りにも執拗になる等。)に行き始めた事も加わり、「石田氏も、終わってしまったのかなあ。」と失望させられた事も。でも、今回の作品では、“昔の煌めき”が完全復活している感が在り、ファンとしては嬉しい限り。
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「マコトみたいにいつも興味深い人間に出会う運があるやつもいるんだな。おれが会うのはネットのクズばかりだ。」。うらやましいということか。今まで解決したトラブルを思いだし、おれはいった。「こっちだって出会うのはたいがいクズばかりだ。」。ゼロワンのガラス球のような目が淋し気に光った。「クズでもリアルなクズだろう。おれは最近ネットのなかには、ほんものの人間はいないんじゃないかと思うようになった。偽ものと嘘とお手軽な金儲けばかりだ。昔はネットがこんな腐った世界を正しい方向に導いてくれると信じてたんだがな。」。 (「西池袋ドリンクドライバー」)
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4作品全て良いが、特に印象に残ったのは「要町ホームベース」という作品。自分自身も同じ境遇で育ったという事も在り、「母子家庭」を扱った作品には、どうしても必要以上に心が揺さぶられてしまう。
総合評価は星4.5個。