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罰が償いで無いならば、加害者はどう生きて行けば良いのだろう。
飲酒運転中、何かに乗り上げた衝撃を受けるも、恐怖の余り走り去ってしまった大学生の籬翔太(まがき しょうた)。翌日、1人の老女の命を奪ってしまった事を知る。自分の未来、家族の幸せ、恋人の笑顔。失う物の大きさに、罪から目を逸らし続ける翔太に下されたのは、懲役4年を超える実刑だった。一方、被害者の夫で在る法輪二三久(のりわ ふみひさ)は、“或る思い”を胸に翔太の出所を待ち続けていた。
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薬丸岳氏の小説「告解」。告解とは、「キリスト教の幾つかの教派に於て、罪の赦しを得るのに必要な儀礼や、告白といった行為を意味する。」のだとか。此の作品では、“贖罪の在り方”というのがテーマとなっている。
金銭的な面も含め、様々な面で恵まれた環境に在る大学生の翔太。そんな彼が或る日、飲酒運転で人を轢き殺してしまう。「気を付けて運転すれば、大丈夫だろう。」、そんな油断が彼の心の中に在ったのだろうけれど、彼、そして彼の家族や彼の恋人の人生は、以降ガラッと変わってしまう。
「恋人を守りたい。」という思いの他に、「自分も守りたい。」という思いも在って、翔太は“或る点”に関して嘘を吐き通す。そして、其の嘘が彼をずっと苦しませ続ける。辛い生き方を自ら選び、真摯に贖罪の思いを抱える翔太に、世間の風は決して暖かく無い。「加害者がどんなに贖罪の思いを抱えていたとしても、被害者に近しい人達の加害者に対する恨みの念は、ずっと消える事が無い。」というのは、自分が被害者と近しい立場の人間で在るならば、非常に理解出来る。でも、同時に「真摯に贖罪の思いを抱える加害者が、冷たい世間の風にずっと晒され、社会復帰の道を閉ざされてしまう。」というのも、遣る瀬無い思いが在ったりするのだ。
「此の作品は、“贖罪の在り方”がテーマとなっている。」と上記した。基本は“主人公で在る翔太の贖罪の在り方”がずっと記されているのだが、最後になって“意外な人物の贖罪の在り方”というのも記される。“或る出来事に対する贖罪の思い”をずっと抱えて来たからこそ、翔太という人物に対して異常な程の拘りを持っていたのだ。其の事実が明らかになった時、「そう来たか!」と薬丸氏の“設定の上手さ”に、思わず唸ってしまった。終わり方も悪く無い。
総合評価は、星4つとさせて貰う。