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コロナ禍が影を落とす異国の街に、9年前の光景が重なり合う。ドイツの学術都市に暮らす私の元に、震災で行方不明になった筈の友人が現れる。人と場所の記憶に向かい合い、静謐な祈りを込めて描く鎮魂の物語。
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第64回(2021年度)群像新人文学賞及び第165回(2021年上半期)芥川賞を受賞した小説「貝に続く場所にて」を読了。著者・石沢麻依さんは1980年に宮城県に生まれ、東北大学大学院文学研究科修士課程修了後、2017年からドイツの大学院の博士課程に於て、ルネサンス美術を専攻されているのだとか。
2011年に発生した東日本大震災を、生まれ故郷の宮城県で経験した石沢さん。“非現実的な世界”を目にして来た彼女が、異国で在るドイツの地で、コロナ禍という矢張り“非現実的な世界”を目にし、此の作品を書き上げたのだろう。東日本大震災で行方不明になっている友人が目の前に現れたり、主人公の背中に歯が生えたり、1935年に亡くなった物理学者でも在る寺田寅彦氏を思わせる“寺田氏”がひょっこり現れたりと、様々な面で“非現実的な世界”を感じさせる内容。
はっきり言って、何を訴えたいのか良く判らない作品。失礼を承知で言えば、「自分の書いた文章に陶酔してるだけ。」という感じすらする。読み手を無視した独り善がりさが在り、芥川賞受賞作で無ければ、自分は読了しなかったろう。
総合評価は、星2.5個とする。