ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「秋葉断層」

2025年01月22日 | 書籍関連

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1997年10月、神田明神下の路地で起こった轢き逃げ事案。被害者は秋葉原アキバ】に根を下ろす、一族経営の電器店常務・江間和則(えま かずのり)だった。未解決のだった此の事案に、2024年11月、"殺し"の可能性が浮上する。

警視庁捜査一課特命捜査対策室刑事・水戸部(みとべ)と、地元・万世橋署の"遣る気の無い年上部下"柿本邦雄(かきもと くにお)のバディは、電気街歴史搔き分け真実摑めるのか!?
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警察小説十八番とする作家佐々木譲氏の「秋葉断層」は、「特命捜査対策室シリーズ」の第3弾。未解決事件を主に担当する部署「特命捜査対策室」に所属する刑事・水戸部は、27年前の1997年に発生した轢き逃げ事案の"再捜査"に当たる事と成る。秋葉原の電器店で常務を務めていた江間和則(当時38歳)が轢き逃げされたと"見做される"事案で、「加害者は誰なのか?」を含めて未解決の儘だったが、和則の姉・江間美知子(えま みちこ)が或る品物を持参した上で、「単なる轢き逃げでは無かったのではないか?」と主張した事から、再捜査する事に成ったのだ。

何しろ27年も前の話、其れも当時捜査を担当した警察関係者の間では「単なる轢き逃げ」と判断された事案なので、再捜査は難航する。水戸部がバディを組む事に成ったのが所轄署交通課に勤務する柿本邦雄で、事件捜査の経験は無い上に水戸部より年上、そして遣る気が無いという事で、遣り辛さを感じてしまう水戸部。「立場的には相手より上だが、年齢は年下。」というだけでも遣り辛いだろうに、加えて遣る気が無かったりするのだから、そりゃあ大変だ。

地道に再捜査を行って行く上で、少しづつでは在るが"新たな事実"が明らかと成って行く。「新たに見付けた"細い糸"を撚り合わせて行って、"より太い糸"にし、そして其の太い糸同士を更に撚り合わせて行った結果、出来上がった""を手繰り寄せて行く。」みたいな、実に根気要る作業を続ける中、全く遣る気を見せなかった柿本に、少しづつ変化が表れて行くのが興味深い

日本で「殺人罪当該する事案の公訴時効が"廃止"されたのは、2010年4月27日から。」だ。其れ、「(公訴時効の)25年間を逃げ切られてしまうと、犯人を逮捕出来無かった。」のが、「2010年4月27日以降に発生した事案のみならず、此の日迄に公訴時効を迎えていなかった事案も含めて、"永久に逮捕出来る可能性"が生まれた。」訳だ。

轢き逃げ事案の場合、事故の様態によって幅が在る様だが、公訴時効は「5年~20年」との事。そう成ると、最長で在っても「27年前の轢き逃げ事案」は既に公訴時効を迎えている事に成るが、此の事案に"殺人"の要素が出て来れば、其の様態により公訴時効廃止の可能性が出て来る。そういう微妙な状況での再捜査。

(我が国に於けるパソコン黎明期の秋葉原の様子が、在り在りと目に浮かぶ文章。当時、秋葉原を訪れた事は無いが、報道番組等で当時良く街の様子が取り上げられていたので、「確かにそんな感じだったなあ。」と懐かしさを感じる。

又、「此の頃にバイトで貯めたなけなしの金で、PCー9800シリーズ中古パソコンを格安で購入したのだが、購入先は渋谷小汚いビルの3階に在る店で、申し訳無いが胡散臭さ溢れていた。現金払いしか受け付けてくれず、同じ様に現金を握り締めて購入待ちする若者が数人た。」のだが、其の光景を思い起こさせる様な文章にも、又、懐かしさが。

27年も昔に、其れもずっと轢き逃げと見做されて来た事案で在り、尚且つ殺人と断定するには"確固たる証拠"が無い状況では、"モヤモヤが残る結末"に成ってしまうのも仕方無いのだろう。

そして、一番モヤモヤが残ったのは「遣る気の無い柿本に対し、あんなにも真相究明尽力し、どんな状況でも駆け回っていた水戸部が、最後の最後になって"明らかに不審な美知子からの依頼"に応じず、無視する様な形を取った。」事。「全く解せない此の行動により、作品への総合評価がグンと下がってしまった。」と言える。

総合評価は、星2.5個とする。


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