**********************************************************
外事1課の倉島達夫(くらしま たつお)は、「ゼロ」の研修帰りのエース公安マン。ロシア外相が来日し、随行員の“行動確認”を命じられるが、同時期にヴェトナム人の殺害事件が発生。容疑者にロシア人ヴァイオリニストが浮かび上がる。
一方、外事2課で中国担当の盛本久信(もりもと ひさのぶ)も、此の事件の情報を集めている事が判る。倉島は、ヴェトナム、ロシア、中国が絡む事件の背景を探るが・・・。
**********************************************************
今野敏氏の小説「ロータスコンフィデンシャル」は、公安警察官と諜報機関との“闘い”を描く「倉島警部補シリーズ」の第6弾。今回は、技能実習生として来日し、工場で働いていたヴェトナム人が殺害された事から、ストーリーは始まる。調べを進めて行く中で、件のヴェトナム人には技能実習生としての実態が全く無い事が明らかとなり、容疑者としてロシア人ヴァイオリニストが浮かび上がる。
「日本はスパイを取り締まる法律が無く、スパイが跋扈する“スパイ天国”で在る。」と、良く言われる。スパイ天国で在るとしたら、其れは非常に問題だ。でも、「政府にとって不都合な人達をスパイと偽って、次々と捕まえたり殺害したりした。」という過去が在る我が国では、「スパイを取り締まる法律を早急に設けろ!」と、安直に主張出来なかったりもする。
個性的な登場人物達がストーリーに“彩り”を与えているし、徐々に明らかとなるヴェトナム、ロシア、中国との関係性は興味深い。だが、“真犯人”に付いては意外性が無く、結末もぴんと来ない。
総合評価は、星3つとする。