現代日本語文法文章論 題材は、タイトルが、精緻なひょうたん砂時計 とあり、副題に、日本唯一のハンドメード職人、誤差は1分で1秒以内 とある。日本経済新聞の文化面、20140922付けである。執筆者は 金子実氏である。なお、有料会員サイトであり、著作の全文をこのように言語分析に資料としているので、そのことをお断りするとともに、ここにお礼を申したい。
冒頭の文は、次である。
> かつて一般家庭の台所や黒電話の脇などによく置かれていた砂時計。
末尾の文は、つぎである。
>正確な砂時計を作り続けるために、オーダーメードの製作は技術を磨く格好の機会となっている。
書き出しの文段は、次のようである。
> かつて一般家庭の台所や黒電話の脇などによく置かれていた砂時計。いま多いのは細長いガラス管にくびれをつけた円筒型のものだが、私はガラス管に息を吹き込んでひょうたん型に成形する古いスタイルの砂時計を手作りしている。国内でひょうたん型砂時計を専門に手作業で作っているのはわが家だけ。形の美しさと計る時間の正確さを身上としている。
末尾の文段は、次のようである。
> 砂が落ちると婚約指輪が現れる仕掛けの砂時計をプロポーズのために作ってほしいという注文も受けた。正確な砂時計を作り続けるために、オーダーメードの製作は技術を磨く格好の機会となっている。
段落は、見出しのもと、次のようである。
>米国向け、円高で苦戦
砂時計作りを始めたのは昭和30年代。貿易会社から米国向けの家庭用3分計を量産してほしいという注文をもらったことがきっかけだった。「エッグタイマー」と呼ばれていて、卵をゆでる時間などを計るものだ。
>乾燥させた砂鉄使用
計量器業者からの注文を受けて、父とともに試作を始めたのが約40年前。見本となる製品もあまりなく、教わる相手もいない。米国向けエッグタイマーよりも正確に時間を計ることが求められたので、再び砂選びから着手。石英を成分とする珪(けい)砂や乾燥剤のシリカゲルなどを試したが、時間の正確さがいまひとつだった。最終的には砂鉄を使うことにした。粒子が比較的均一で、温度変化の影響を受けにくく、安定して入手できるためだ。
>くびれ部分が最重要
ガラスの加工で最も重要なのは「蜂の腰」と呼ぶくびれの部分だ。穴の細さだけでなく、ガラスの表面に傷やゆがみがないようにしないといけない。そうしないと上下を逆にしたときに計れる時間が変わってしまうことがある。くびれ作りもすべて目分量。最小の30秒計だと穴の直径は1.2ミリメートル、最大の60分計は0.8ミリメートルまで狭くする。
春秋
2014/9/22付日本経済新聞
復興への意気込みは格別だった。戦後、「人間宣言」した昭和天皇は精力的に被災地や生産現場を訪問して、国民と共に歩む姿勢を示した。先に公表された「昭和天皇実録」には、「今後は平和の基礎の上に新日本建設に力を尽くしたい」という言葉が記録されている。
昭和37年に天皇が視察したのがソニーの工場だった。世界最小、最軽量のテレビの試作品を見た。当時社長の井深大は「身を乗り出すようにして小さなテレビの絵をご覧いただいた」(「私の履歴書」)と述懐している。極秘の新製品で「まだ世の中にでていませんから」と説明、のち「天皇に口止め」と話題になった。
同社は独創的な製品を次々に開発して世界企業に成長した。が、いま創業以来の危機にあえぐ。伝統のテレビが売れない。活路を開こうとしたスマートフォン事業でも躓(つまず)いた。今期の赤字予想を500億円から2300億円に下方修正し無配に転落する。中国など海外勢の台頭に押されっぱなしで、打つ手が見つからない。
ソニーの前身は、新兵器を開発していた技術者が戦後、設立した。技術をたよりに日本再建につながる製品の開発に全力を注ごう。会社が大きくなり組織が膨らんで、その初心を忘れたのではないか。井深は早くから「大企業病」の弊害を社内に警告していた。まず初心に帰る。そこから復活への意気込みを見せてほしい。