いくさのおほきみ
舒明天皇が讃岐国安益郡に行幸された時に、従駕した軍王詠んだとされる長歌
現在の香川県綾歌群
わづきも知らず 和豆肝之良受 語義不詳
たづきを知らに 鶴寸乎白土 たづき たどき
たづき例 13 たどき例 16
日本国語大辞典より
わずき[わづき]
解説・用例〔名〕
語義未詳。
*万葉集〔8C後〕一・五「霞立つ 長き春日の 暮れにける 和豆肝(ワヅきも)知らず〈軍王〉」
補注
「別(わき)」と同じで区別の意とする説、「たずき」と関連付けて様子・状態の意とする説などがある。
た‐ずき[‥づき] 【方便・活計】
解説・用例〔名〕(後世は「たつき」「たつぎ」とも)
(1)手がかり。よるべき手段。方法。よるべ。
*万葉集〔8C後〕一・五「大夫と 思へる我も 草枕 旅にしあれば 思ひ遣る 鶴寸(たづき)を知らに〈軍王〉」
暮れにける わづきも知らず
思ひ遣る たづきを知らに
[歌番号]01/0005
[題詞]幸讃岐國安益郡之時軍王見山作歌
[原文]霞立 長春日乃 晩家流 和豆肝之良受 村肝乃 心乎痛見 奴要子鳥 卜歎居者 珠手次 懸乃宜久 遠神 吾大王乃 行幸能 山越風乃 獨<座> 吾衣手尓 朝夕尓 還比奴礼婆 大夫登 念有我母 草枕 客尓之有者 思遣 鶴寸乎白土 網能浦之 海處女等之 焼塩乃 念曽所焼 吾下情
[訓読]霞立つ 長き春日の 暮れにける わづきも知らず むらきもの 心を痛み ぬえこ鳥 うら泣け居れば 玉たすき 懸けのよろしく 遠つ神 我が大君の 行幸の 山越す風の ひとり居る 我が衣手に 朝夕に 返らひぬれば 大夫と 思へる我れも 草枕 旅にしあれば 思ひ遣る たづきを知らに 網の浦の 海人娘子らが 焼く塩の 思ひぞ焼くる 我が下心
[仮名]かすみたつ ながきはるひの くれにける わづきもしらず むらきもの こころをいたみ ぬえこどり うらなけをれば たまたすき かけのよろしく とほつかみ わがおほきみの いでましの やまこすかぜの ひとりをる わがころもでに あさよひに かへらひぬれば ますらをと おもへるわれも くさまくら たびにしあれば おもひやる たづきをしらに あみのうらの あまをとめらが やくしほの おもひぞやくる わがしたごころ
[左注](右檢日本書紀 無幸於讃岐國 亦軍王未詳也 但山上憶良大夫類聚歌林曰 記曰 天皇十一年己亥冬十二月己巳朔壬午幸于伊<与>温湯宮[云々] 一<書> 是時 宮前在二樹木 此之二樹斑鳩比米二鳥大集 時勅多挂稲穂而養之 乃作歌[云々] 若疑従此便幸之歟)
[校異]懸 [元][類][紀] 縣 / 居 -> 座 [元][類][古]
[事項]雑歌 作者:軍王 望郷 香川 行幸 羈旅 大夫 枕詞 地名
[訓異]かすみたつ[寛],
ながきはるひの,[寛]なかきはるひの,
くれにける[寛],
わづきもしらず,[寛]わつきもしらす,
むらきもの[寛],
こころをいたみ[寛],
ぬえこどり,[寛]ぬえことり,
うらなけをれば[寛],
たまたすき[寛],
かけのよろしく[寛],
とほつかみ[寛],
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
いでましの,[寛]みゆきの,
やまこすかぜの,[寛]やまこしのかせの,
ひとりをる[寛],
わがころもでに,[寛]わかころもてに,
あさよひに,[寛]あさゆふに,
かへらひぬれば,[寛]かへらひぬれは,
ますらをと[寛],
おもへるわれも[寛],
くさまくら[寛],
たびにしあれば,[寛]たひにしあれは,
おもひやる[寛],
たづきをしらに,[寛]たつきをしらに,
あみのうらの[寛],
あまをとめらが,[寛]あまをとめらか,
やくしほの[寛],
おもひぞやくる,[寛]おもいそやくる,
わがしたごころ,[寛]わかしたこころ,
[歌番号]01/0006
[題詞](讃岐國安益郡之時軍王見山作歌)反歌
[原文]山越乃 風乎時自見 寐<夜>不落 家在妹乎 懸而小竹櫃
[訓読]山越しの風を時じみ寝る夜おちず家なる妹を懸けて偲ひつ
[仮名]やまごしの かぜをときじみ ぬるよおちず いへなるいもを かけてしのひつ
[左注]右檢日本書紀 無幸於讃岐國 亦軍王未詳也 但山上憶良大夫類聚歌林曰 記曰 天皇十一年己亥冬十二月己巳朔壬午幸于伊<与>温湯宮[云々] 一<書> 是時 宮前在二樹木 此之二樹斑鳩比米二鳥大集 時勅多挂稲穂而養之 乃作歌[云々] 若疑従此便幸之歟
[校異]<> -> 夜 [西(右書)][元][類][冷] / 豫 -> 与 [元][類][古] / 書云 -> 書 [元][類][紀] / 乃 [元][紀] 仍
[事項]雑歌 作者:軍王 望郷 香川 行幸 羈旅 大夫 地名
[訓異]やまごしの,[寛]やまこしの,
かぜをときじみ,[寛]かせをときしみ,
ぬるよおちず,[寛]ぬるよおちす,
いへなるいもを,[寛]いへあるいもを,
かけてしのひつ[寛],