2015.5.15 11:20
日本語教育ボランティア シニア、活躍の場を東南アジアに 「自分を生かせる」
フードコートで女子生徒と日本語で楽しく会話する猿田多磨夫さん(右端)=タイ・バンコク
東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国で日本語教育を支援するボランティア「日本語パートナーズ」として、シニアが活躍している。平成26年に始まった政府の政策の一環で、第1陣の最年長、東京都日野市の猿田(えんだ)多磨夫さん(70)もその一人。同年9月から今年3月までタイに派遣された。現役時代は海外業務も多く、「年齢差に関係なく、生徒の中に入れた。経験を生かして充実した生活ができた」とやりがいを語った。(寺田理恵)
◆五輪までに3000人
日本語パートナーズは、25年12月の日・ASEAN特別首脳会議で安倍晋三首相が発表した文化交流政策の柱の一つ。東南アジアの高校などで日本語の授業のアシスタントや日本文化の紹介活動を行うのが役目だ。自身も現地の言語や文化、習慣などを学び、友好の懸け橋となることが期待されている。東京五輪・パラリンピックが開催される2020年までに3千人以上が派遣される予定だ。
かつて大手メーカーで海外営業を担当していた猿田さんは昨年3月、新聞で募集告知を読み、「世話になったアジアの方々に恩返しがしたい」と応募した。要件は20歳から69歳まで。ぎりぎりの年齢だった。派遣先には、出発時期が最も早いタイを選んだ。
現役時代は韓国や台湾の戦前世代からビジネスを教わり、9年間のマレーシア駐在も経験。リタイア後は地元の国際交流協会の日本語教室でボランティアをしており、「自分がしていることを生かせる」との思いがあった。
◆年の差意識せず
7月に採用内示があり、合宿形式の事前研修ではタイやフィリピン、インドネシアに派遣される第1陣59人で約1カ月間、現地語習得などのプログラムを受けた。文化交流という同じ目標があるため、若い同期との年齢差を意識することなく打ち解けたという。
タイでは同期29人が各地に散らばり、猿田さんは首都バンコクの学校に赴任。初日に教員の誘いでスーパーマーケット内にあるフードコートに行くと、集まっていた女子生徒たちとすぐに日本語の会話が始まった。学校では、授業のアシスタントのほか文化紹介活動で折り紙を教えたり、イベントで生徒の盆踊りを楽しんだりした。
「日本人が一緒にすると、これが本当の日本なんだなと感じて面白いのだと思います」と猿田さん。応募を検討中のシニアに向け、「生徒と一緒に何かをすることが距離を縮める。赴任までに時間があれば踊りの一つも覚えていけば役に立つ」とアドバイスする。
日本語パートナーズの派遣事業は、国際交流基金アジアセンター(東京都新宿区)が20~69歳の日常英会話ができる人を対象に募集、書類や面接で選考される。これまでに100人が派遣済みで、応募者は大学・大学院生と「経験を生かして社会貢献がしたい」などというシニアが多い。日本語を教えた経験を問われないため門戸は広く、派遣先の人々と協力しながら活動できる人が求められている。
□
■「高い志や社会貢献意識」格好いい
ソニー生命保険が昨年7月、50~79歳の男女1000人を対象に実施したインターネット調査によると、シニアにとっての「格好いいシニア像」(複数回答)として「高い志や社会貢献意識を持っている」(26.8%)を4人に1人が挙げた。最も多かったのは「社会のマナーやルールを守れる」(49.9%)で、シニアの半数が選んだ。
「どのようなときに『シニアも悪くないな』と思うか」(複数回答)では、「自分の知識・経験が役立ったとき」(37.7%)を挙げた人が最も多く、2番目の「のんびり過ごせているとき」(37.5%)とほぼ同率だった。
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日本語教育ボランティア シニア、活躍の場を東南アジアに 「自分を生かせる」
フードコートで女子生徒と日本語で楽しく会話する猿田多磨夫さん(右端)=タイ・バンコク
東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国で日本語教育を支援するボランティア「日本語パートナーズ」として、シニアが活躍している。平成26年に始まった政府の政策の一環で、第1陣の最年長、東京都日野市の猿田(えんだ)多磨夫さん(70)もその一人。同年9月から今年3月までタイに派遣された。現役時代は海外業務も多く、「年齢差に関係なく、生徒の中に入れた。経験を生かして充実した生活ができた」とやりがいを語った。(寺田理恵)
◆五輪までに3000人
日本語パートナーズは、25年12月の日・ASEAN特別首脳会議で安倍晋三首相が発表した文化交流政策の柱の一つ。東南アジアの高校などで日本語の授業のアシスタントや日本文化の紹介活動を行うのが役目だ。自身も現地の言語や文化、習慣などを学び、友好の懸け橋となることが期待されている。東京五輪・パラリンピックが開催される2020年までに3千人以上が派遣される予定だ。
かつて大手メーカーで海外営業を担当していた猿田さんは昨年3月、新聞で募集告知を読み、「世話になったアジアの方々に恩返しがしたい」と応募した。要件は20歳から69歳まで。ぎりぎりの年齢だった。派遣先には、出発時期が最も早いタイを選んだ。
現役時代は韓国や台湾の戦前世代からビジネスを教わり、9年間のマレーシア駐在も経験。リタイア後は地元の国際交流協会の日本語教室でボランティアをしており、「自分がしていることを生かせる」との思いがあった。
◆年の差意識せず
7月に採用内示があり、合宿形式の事前研修ではタイやフィリピン、インドネシアに派遣される第1陣59人で約1カ月間、現地語習得などのプログラムを受けた。文化交流という同じ目標があるため、若い同期との年齢差を意識することなく打ち解けたという。
タイでは同期29人が各地に散らばり、猿田さんは首都バンコクの学校に赴任。初日に教員の誘いでスーパーマーケット内にあるフードコートに行くと、集まっていた女子生徒たちとすぐに日本語の会話が始まった。学校では、授業のアシスタントのほか文化紹介活動で折り紙を教えたり、イベントで生徒の盆踊りを楽しんだりした。
「日本人が一緒にすると、これが本当の日本なんだなと感じて面白いのだと思います」と猿田さん。応募を検討中のシニアに向け、「生徒と一緒に何かをすることが距離を縮める。赴任までに時間があれば踊りの一つも覚えていけば役に立つ」とアドバイスする。
日本語パートナーズの派遣事業は、国際交流基金アジアセンター(東京都新宿区)が20~69歳の日常英会話ができる人を対象に募集、書類や面接で選考される。これまでに100人が派遣済みで、応募者は大学・大学院生と「経験を生かして社会貢献がしたい」などというシニアが多い。日本語を教えた経験を問われないため門戸は広く、派遣先の人々と協力しながら活動できる人が求められている。
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■「高い志や社会貢献意識」格好いい
ソニー生命保険が昨年7月、50~79歳の男女1000人を対象に実施したインターネット調査によると、シニアにとっての「格好いいシニア像」(複数回答)として「高い志や社会貢献意識を持っている」(26.8%)を4人に1人が挙げた。最も多かったのは「社会のマナーやルールを守れる」(49.9%)で、シニアの半数が選んだ。
「どのようなときに『シニアも悪くないな』と思うか」(複数回答)では、「自分の知識・経験が役立ったとき」(37.7%)を挙げた人が最も多く、2番目の「のんびり過ごせているとき」(37.5%)とほぼ同率だった。
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