脳の働きである。小脳の動きはどういうものか。大脳、小脳の名称にその働きを評価するようなことである。小脳の障害によって運動失調と似た症状が起こることから、運動機能をつかさどるととらえられていた。運動失調がおこるとは、高齢者にあるつまずきが反射神経にかかわることから、歩いていて石につまずいたときに、無意識に体が倒れないようにするための反射経路がある。また居眠りのときの姿勢が自然にもとに戻ることなど、いずれも小脳を中枢とした働きによるものであると、説明がある。この脳の働きの衰えには、どういう対策があるのだろう。大脳の発達に小脳が密接に関連しているわけだろう、ということでは、大脳の働きを強化するということになる。謎が多いことである。
世界大百科事典 第2版の解説
しょうのう【小脳 cerebellum】
小脳は大脳と並ぶ脳の主要部分である。ヒトの小脳の重量は約130gあり,大脳の10%程度であるが,細かいしわ(皺)が多いため表面積は大脳の25%に達する。ヒトの小脳に含まれる神経細胞の総数は1010~1011個に及び,大脳のそれにほぼ匹敵している。小脳は運動中枢の一つであり,スポーツや楽器弾奏の練習など,いわゆる〈運動学習〉に重要な働きをすると考えられるが,自律神経機能の調節にも関与している
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0311/cerebellum.html
日経サイエンス 2003年11月号
小脳の知られざる役割
J.M. バウアー L. M. パーソンズ(テキサス大学健康科学センター)
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小脳の主な働きは運動の制御だと考えられてきた。しかし最近の研究から,それは過去の常識となりつつある。知覚情報の統合や情動の制御など,その名に反して小脳が受け持つ役割は大きい。
小脳は脳の下部に位置し,その複雑な神経回路の構成は脊椎動物の進化の過程でほとんど変わらずに保たれてきた。ヒトの場合,小脳は中脳よりも大きく,重要な機能を数多く担っている大脳に次いで2番目に大きな脳だ。大脳皮質と同様に,小脳も幾重にも折りたたまれており,表面にできたひだの数は大脳皮質よりも多い。多くの哺乳類では,ひだのある脳組織は小脳だけだ。ヒトの小脳を平たく延ばすと,その面積は大脳皮質を延ばした面積の半分以上になる。
最近の研究によって,小脳はさまざまな場合に活性化することがわかった。運動とは直接関係のない局面でも活発に働いている。また,小脳のある部分が損傷すると運動機能とは関係のない予想外の障害が生じ,とりわけ知覚情報を素早く正確に認識する機能に障害をきたすこともわかった。
短期記憶や注意力,情動の制御,感情,高度な認識力,計画を立案する能力のほか,統合失調症(分裂病)や自閉症といった精神疾患と関係している可能性も示された。小脳は筋肉に動きの指令を出すというよりも,入ってきた感覚信号を統合する役目を果たしているようだ。
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%B0%8F%E8%84%B3
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英語名:cerebellum 独:Kleinhirn 仏:cervelet
小脳は大脳の尾側、脳幹の背側に存在する。小脳皮質とその深部にある白質からなり、さらに白質の中に小脳核が存在する。原始小脳である片葉、垂と小節、中央に古小脳である虫部、外側に新小脳である半球に大別される。半球と虫部はさらに溝により葉に分けられる。小脳の神経回路は学習機械と考えられる。小脳の出力細胞であるプルキンエ細胞には、末梢感覚器や大脳皮質に起源をもつ情報が苔状線維―平行線維を介して入力するが、それらは、下オリーブ核に起源をもつ登上線維の入力により修飾を受ける。さらにプルキンエ細胞の出力は小脳核に伝えられ、そこでさらに長期記憶として保持される。小脳皮質にはプルキンエ細胞以外に4種類の主要な神経細胞が存在し、プルキンエ細胞の信号伝達の特性や可塑性を調節する。小脳はこのような学習の機構を用いて、運動が正確かつ円滑に行われるようにフィードフォーワード制御を行う。また小脳は情動や認知機能の遂行にも関与すると考えられている。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2014/10/20oa6100.htm
米国科学雑誌「PLOS ONE(プロスワン)」において研究成果を発表―
小脳から大脳への出力形成メカニズムを解明
巧みな運動制御における小脳の役割の解明に向けて前進
平成26年10月6日
(公財)東京都医学総合研究所
福祉保健局
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小脳(※1)は後頭部の奥深くにあり、大きさでは大脳に次いで2番目ですが、中に詰め込まれた神経細胞の数では大脳を大きく上回り、極めて高度な情報処理が行われていると考えられています。機能的には大脳と連携して、身体を思い通りに動かすために必須の役割を果たしています。小脳の障害に伴いさまざまな運動失調(※2)が現れることは100年以上前から知られていましたが、複雑な小脳の神経回路がその機能を実現する仕組みは未解明のままでした。特に小脳での情報処理の結果を、大脳に送り返すための出力形成メカニズムが大きな謎であり、数十年来の論争が続いていました。
小脳
その名前はラテン語で「小さな脳」を意味するcerebellumに由来し、大脳の後下方に位置しています。重量では脳全体の10%にすぎませんが、数では1000億の神経細胞から成り(大脳は約140億!)、神経系全体の過半数を占めています。18世紀に小脳の損傷が運動障害の原因となることが発見され、以来多くの研究によって小脳は全身のさまざまな運動をスムーズかつ正確に行うために必須の脳領域であることが明らかになってきました。小脳の主要な役割は運動の調節ですが、近年では認知や感情などの高次脳機能にも重要な貢献をしていることが示されています。
運動失調
小脳疾患に伴って現れる特徴的な運動障害を特に小脳性運動失調と呼ぶ。筋力の低下や感覚異常は認められず、筋の協調的な収縮パターンの乱れが原因と考えられています。指鼻試験、膝踵試験などにおける運動の分解や測定異常、反復拮抗運動不能、筋緊張の低下、時間測定異常などが見られます。