環太平洋戦略的経済連携協定という。
Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement
戦略的の語を、また、略して、TPPで呼ばれる。
加盟国間の経済制度においてサービス、人の移動、基準認証など協定を結び、貿易関税については、例外品目を認めない形の関税撤廃をめざしている。
アジア太平洋地域の広域経済圏、FTAAP アジア太平洋自由貿易圏の実現に向けた取り組みともみられる。
2006年にシンガポール・ニュージーランド・チリ・ブルネイによるP4協定、2010年に環太平洋パートナーシップとして、アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナムの4カ国をさらに加えた8カ国となった。
Japan, U.S. offer different takes on progress in TPP negotiations
2014/4/26THE ASAHI SHIMBUN
>The failure of Japan and the United States to hammer out an agreement on the Trans-Pacific Partnership free trade arrangement over two days of intense negotiations has led to different appraisals of the progress that was made.
環太平洋戦略的経済連携協定
かんたいへいようせんりゃくてきけいざいれんけいきょうてい
英語: Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement
または Trans-Pacific Partnership、略称TPP、環太平洋経済協定
デジタル大辞泉の解説
ティー‐ピー‐ピー 【TPP】
《 Trans‐Pacific Partnership 》環太平洋諸国が締結を目指して交渉を行う広域的な経済連携協定。原則として全品目の関税を撤廃する。シンガポール・ニュージーランド・チリ・ブルネイの4か国が締結したP4協定を拡大するもので、オーストラリア・ペルー・ベトナム・米国・マレーシア・メキシコ・カナダ・日本を加えた12か国が交渉を行う。日本は2013年7月から交渉に参加。環太平洋連携協定。環太平洋経済連携協定。環太平洋パートナーシップ協定。
朝日新聞掲載「キーワード」の解説
環太平洋経済連携協定。太平洋をとりまく12カ国が集まり、関税の撤廃や投資などに関するルールを決め、地域内の経済活動を活発にしようという取り組み。シンガポールとブルネイ、ニュージーランド、チリの4カ国で発効し、米国、豪州、ペルー、ベトナム、マレーシア、メキシコ、カナダ、日本が交渉に加わった。韓国も参加方針を表明している。
( 2013-12-11 朝日新聞 朝刊 2経済 )
政権、TPPと安保取引
東京新聞
2014年4月25日 夕刊
> 環太平洋連携協定(TPP)をめぐる日米首脳会談などの交渉は、共同声明に「二国間の重要な課題について前進する道筋を特定した」と盛り込み、ようやく一区切りついた。日本は安全保障分野で配慮を受ける代わりに、TPPで米国に譲るという筋違いの取引をしたことになる。 (城島建治、吉田通夫)
米国はオバマ米大統領の訪日に合わせ、日本からTPPで譲歩を引き出そうと異常なまでの執念をみせた。交渉の焦点は、日本のコメなど農産品五項目の関税引き下げや自動車の規制緩和など。背景には、米国内の関連業界団体や労働組合が強く日本の市場開放を求めていることがある。
オバマ氏訪日までに、担当のフロマン米通商代表部(USTR)代表と甘利明TPP担当相の集中的な事前協議は三十時間に到達。来日後も、米側の意向で首脳会談を挟んだ協議を続け、フロマン氏は関税の大幅引き下げなどを迫った。
共同声明には沖縄県・尖閣諸島が日米安全保障条約の適用範囲で、日本が検討する集団的自衛権の行使容認を米国が支持すると明記された。いずれも日本が望んだ内容で、オバマ氏も首脳会談で初めて触れた。
国民生活に直結したTPPと安全保障は本質の違う政策だが、オバマ氏は会談で「私が日本を出発するのは二十五日だ」と、TPPで進展がなければ共同声明は出せないと言わんばかりの姿勢をみせた。
米側の強硬さは日本の予想を超え、共同声明の表現は日本側が考えていた「前進している」などの抽象的なものではなく「道筋を特定」と絞り込まれた。米側の意向が反映され、今後の交渉で主導権を握られる可能性は高い。
声明には、日米は他のTPP交渉参加国に「妥結するために必要な措置をとるため、可能な限り早期に行動するよう呼び掛ける」との一文も盛り込まれた。日本は自らだけでなく、他国が米国に譲歩することにも協力させられる。
TPPと安全保障 「貸し借り」が試す結束
日本経済新聞
2014/4/25 1:41
> 突きつめれば、外交は貸し借りだ。結束している同盟国でも、持ちつ持たれつの計算とは無縁ではない。
「TPPと安全保障はがっちり連動している。前者の行方によって、他の合意の着地点も変わる」。会談前、安倍政権の関係者はこうもらした。
TPPはただの貿易自由化ではなく、日米主導のアジア太平洋秩序に中国を組み込んでいく長期戦略だ。日米はその目標を共有しているが、実際の交渉はきれいごとでは済まない。安保も絡んだ駆け引きが続いた。
首脳会談までにTPPが決着できなかったことに連動し、「尖閣諸島」を明記した共同声明の発表もお預けになったのが、まさにその表れだ。
来日をにらみ、最初にカードを切ったのはオバマ氏だった。「尖閣への日米安保条約の適用は、安倍首相との会談で必ず言明する」。米側は今月半ば、日本側に秘密裏にこんな意向を伝えた。
米政府筋によると、昨秋に中国が東シナ海で防空識別圏(ADIZ)を設けて以来、米国は対中政策を見直し、圧力を強めることにした。今月にはヘーゲル国防長官が訪中、尖閣への日米安保条約の適用を通告した。
この流れに沿って、オバマ氏も当初から、尖閣について首脳会談で言明する腹を固めていたフシがある。だが、あえて今月半ばになってからその意向を明かすことで、TPP交渉で日本側に歩み寄りを促そうとした。
実際、オバマ氏側が「尖閣言及」を約束したのは、交渉の打開に向け、甘利明経済財政・再生相が訪米する直前だった。TPP交渉の詳細は伏せられているが、日本はそのころから牛肉の関税などについて、サラミを切るように、小刻みの譲歩を始めたもようだ。
そうして迎えた首脳会談の数日前、オバマ氏側はひそかに、温存していたとっておきの切り札を出した。「日米の共同声明で『尖閣諸島』を明記してもいい」。日本にこう伝達したのだった。
米国による尖閣の防衛義務について、これまで日米の公式文書に盛り込まれたことはない。安倍氏からすれば、「満額回答」に近い内容だった。
他の分野でそちらの要望に応じたのだから、何とか、TPPでは譲ってもらえないか――。オバマ氏は会談前夜のすし屋談議で、口にこそ出さなかったが、こんな期待をにじませたとみられる。
むろん、すべてが貸し借りで動くわけではない。日米はともにTPPの早期実現を望み、中国の尖閣への挑発を認めない点でも一致している。
そうした共通目標を足場に、TPP交渉をまとめられるか。その成否は中国の台頭を受けたアジア太平洋の将来図も左右する。
(編集委員 秋田浩之)
Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement
戦略的の語を、また、略して、TPPで呼ばれる。
加盟国間の経済制度においてサービス、人の移動、基準認証など協定を結び、貿易関税については、例外品目を認めない形の関税撤廃をめざしている。
アジア太平洋地域の広域経済圏、FTAAP アジア太平洋自由貿易圏の実現に向けた取り組みともみられる。
2006年にシンガポール・ニュージーランド・チリ・ブルネイによるP4協定、2010年に環太平洋パートナーシップとして、アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナムの4カ国をさらに加えた8カ国となった。
Japan, U.S. offer different takes on progress in TPP negotiations
2014/4/26THE ASAHI SHIMBUN
>The failure of Japan and the United States to hammer out an agreement on the Trans-Pacific Partnership free trade arrangement over two days of intense negotiations has led to different appraisals of the progress that was made.
環太平洋戦略的経済連携協定
かんたいへいようせんりゃくてきけいざいれんけいきょうてい
英語: Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement
または Trans-Pacific Partnership、略称TPP、環太平洋経済協定
デジタル大辞泉の解説
ティー‐ピー‐ピー 【TPP】
《 Trans‐Pacific Partnership 》環太平洋諸国が締結を目指して交渉を行う広域的な経済連携協定。原則として全品目の関税を撤廃する。シンガポール・ニュージーランド・チリ・ブルネイの4か国が締結したP4協定を拡大するもので、オーストラリア・ペルー・ベトナム・米国・マレーシア・メキシコ・カナダ・日本を加えた12か国が交渉を行う。日本は2013年7月から交渉に参加。環太平洋連携協定。環太平洋経済連携協定。環太平洋パートナーシップ協定。
朝日新聞掲載「キーワード」の解説
環太平洋経済連携協定。太平洋をとりまく12カ国が集まり、関税の撤廃や投資などに関するルールを決め、地域内の経済活動を活発にしようという取り組み。シンガポールとブルネイ、ニュージーランド、チリの4カ国で発効し、米国、豪州、ペルー、ベトナム、マレーシア、メキシコ、カナダ、日本が交渉に加わった。韓国も参加方針を表明している。
( 2013-12-11 朝日新聞 朝刊 2経済 )
政権、TPPと安保取引
東京新聞
2014年4月25日 夕刊
> 環太平洋連携協定(TPP)をめぐる日米首脳会談などの交渉は、共同声明に「二国間の重要な課題について前進する道筋を特定した」と盛り込み、ようやく一区切りついた。日本は安全保障分野で配慮を受ける代わりに、TPPで米国に譲るという筋違いの取引をしたことになる。 (城島建治、吉田通夫)
米国はオバマ米大統領の訪日に合わせ、日本からTPPで譲歩を引き出そうと異常なまでの執念をみせた。交渉の焦点は、日本のコメなど農産品五項目の関税引き下げや自動車の規制緩和など。背景には、米国内の関連業界団体や労働組合が強く日本の市場開放を求めていることがある。
オバマ氏訪日までに、担当のフロマン米通商代表部(USTR)代表と甘利明TPP担当相の集中的な事前協議は三十時間に到達。来日後も、米側の意向で首脳会談を挟んだ協議を続け、フロマン氏は関税の大幅引き下げなどを迫った。
共同声明には沖縄県・尖閣諸島が日米安全保障条約の適用範囲で、日本が検討する集団的自衛権の行使容認を米国が支持すると明記された。いずれも日本が望んだ内容で、オバマ氏も首脳会談で初めて触れた。
国民生活に直結したTPPと安全保障は本質の違う政策だが、オバマ氏は会談で「私が日本を出発するのは二十五日だ」と、TPPで進展がなければ共同声明は出せないと言わんばかりの姿勢をみせた。
米側の強硬さは日本の予想を超え、共同声明の表現は日本側が考えていた「前進している」などの抽象的なものではなく「道筋を特定」と絞り込まれた。米側の意向が反映され、今後の交渉で主導権を握られる可能性は高い。
声明には、日米は他のTPP交渉参加国に「妥結するために必要な措置をとるため、可能な限り早期に行動するよう呼び掛ける」との一文も盛り込まれた。日本は自らだけでなく、他国が米国に譲歩することにも協力させられる。
TPPと安全保障 「貸し借り」が試す結束
日本経済新聞
2014/4/25 1:41
> 突きつめれば、外交は貸し借りだ。結束している同盟国でも、持ちつ持たれつの計算とは無縁ではない。
「TPPと安全保障はがっちり連動している。前者の行方によって、他の合意の着地点も変わる」。会談前、安倍政権の関係者はこうもらした。
TPPはただの貿易自由化ではなく、日米主導のアジア太平洋秩序に中国を組み込んでいく長期戦略だ。日米はその目標を共有しているが、実際の交渉はきれいごとでは済まない。安保も絡んだ駆け引きが続いた。
首脳会談までにTPPが決着できなかったことに連動し、「尖閣諸島」を明記した共同声明の発表もお預けになったのが、まさにその表れだ。
来日をにらみ、最初にカードを切ったのはオバマ氏だった。「尖閣への日米安保条約の適用は、安倍首相との会談で必ず言明する」。米側は今月半ば、日本側に秘密裏にこんな意向を伝えた。
米政府筋によると、昨秋に中国が東シナ海で防空識別圏(ADIZ)を設けて以来、米国は対中政策を見直し、圧力を強めることにした。今月にはヘーゲル国防長官が訪中、尖閣への日米安保条約の適用を通告した。
この流れに沿って、オバマ氏も当初から、尖閣について首脳会談で言明する腹を固めていたフシがある。だが、あえて今月半ばになってからその意向を明かすことで、TPP交渉で日本側に歩み寄りを促そうとした。
実際、オバマ氏側が「尖閣言及」を約束したのは、交渉の打開に向け、甘利明経済財政・再生相が訪米する直前だった。TPP交渉の詳細は伏せられているが、日本はそのころから牛肉の関税などについて、サラミを切るように、小刻みの譲歩を始めたもようだ。
そうして迎えた首脳会談の数日前、オバマ氏側はひそかに、温存していたとっておきの切り札を出した。「日米の共同声明で『尖閣諸島』を明記してもいい」。日本にこう伝達したのだった。
米国による尖閣の防衛義務について、これまで日米の公式文書に盛り込まれたことはない。安倍氏からすれば、「満額回答」に近い内容だった。
他の分野でそちらの要望に応じたのだから、何とか、TPPでは譲ってもらえないか――。オバマ氏は会談前夜のすし屋談議で、口にこそ出さなかったが、こんな期待をにじませたとみられる。
むろん、すべてが貸し借りで動くわけではない。日米はともにTPPの早期実現を望み、中国の尖閣への挑発を認めない点でも一致している。
そうした共通目標を足場に、TPP交渉をまとめられるか。その成否は中国の台頭を受けたアジア太平洋の将来図も左右する。
(編集委員 秋田浩之)