安全保障法制をキーワードに検索したら、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会というのが、グーグルの見出しにあった。それは、第1次安倍内閣で設置された、日本の集団的自衛権の問題と日本国憲法の関係整理および研究を行うための、内閣総理大臣の私的諮問機関とある。 2007年5月に初の会議があった。 安全保障有識者懇談会、安保法制懇ともいうらしい。安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会 - Wikipedia それでヒットしたものを見ると、内閣官房の広報がでてきて、35問の疑問に答える形で説明がある。分かり良いと言えば、それは政府の解釈によることであり、多くはこれまでに議論されていることなのだろう。このような論理を見ていくと、政府や在野、民間の議論にある根柢をなすものの説明がない。それは何か。たとえば、なぜ日本が専守防衛の立場を持つように至ったか、徴兵制がないのはどうしてか、隊員のリスクが何であるかというようなことだ。その根底にあるのは米国軍隊の庇護下にいて平和憲法を維持し、二度と武器を取らせないと誓った国民の世代がまだ生きていて、さらには、はらから、同胞が国のために死すことを考えなくなったか、それを
安全保障法制整備の具体的な方向性について : 特集 : 読売新聞 ...
www.yomiuri.co.jp/feature/matome/20150319-OYT8T50063.html
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2015年03月20日 20時00分
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自民、公明両党が20日に合意した共同文書「安全保障法制整備の具体的な方向性について」の全文は次の通り。
◇
今般の安全保障法制の整備については、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(2014年7月1日閣議決定)に示された基本方針に基づき、政府において検討作業が進められてきた。
自由民主党、公明党の両党は、14年12月15日の連立政権合意において「先の閣議決定に基づく安全保障関連法案を速やかに成立させる。」とするとともに、政府においても、15年度予算成立後において、「国の存立を全うし国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備関連法律案」の提出を目指していることから、15年2月13日に「安全保障法制整備に関する与党協議会」を再開した。同協議会においては、再開後第1回の協議会で示した考え方に従い、政府の説明を聴取しつつ、7回にわたり精力的に議論を重ねてきた。
こうした検討の結果、与党として、現時点における法整備の具体的な方向性について、別紙のとおり、一定の認識を共有するに至ったところである。政府はこの方向性に即して作業を加速化し、必要な法案を本年5月半ばには国会に提出できるようさらに準備を進めていくよう求める。
政府における法案の準備状況を踏まえつつ、さらに与党協議会での議論を継続し、法案審査に向けた検討を行うこととする。
【別紙】
1、全般
▽我が国が日本国憲法の下で平和国家として歩んできたことを踏まえつつ、いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを守りぬくため、切れ目のない対応を可能とする国内法制を整備する。
▽特に自衛隊の海外における活動の参加に当たっては、以下の3つの方針を確立し、その下に適切な判断を行う。
<1>自衛隊が参加し、実施する活動が国際法上の正当性を有すること
<2>国民の理解が得られるよう、国会の関与等の民主的統制が適切に確保されること
<3>参加する自衛隊員の安全の確保のための必要な措置を定めること
2、武力攻撃に至らない侵害への対処
米軍等の武器等の防護(自衛隊法関連)
▽現行自衛隊法第95条の趣旨を踏まえつつ、以下の法整備を検討する。
・我が国の防衛に資する活動に現に従事する米軍の武器等について自衛隊の部隊による防護を可能とする。
・米軍以外の他国軍隊の武器等の防護についても法整備の検討の対象とするが、以下の点を踏まえたものに限る。
<1>「我が国の防衛に資する活動」として認められるものであること
<2>我が国の防衛義務を負う米軍の武器等と同様な「我が国の防衛力を構成する重要な物的手段」に当たり得る場合であること
・米軍及び米軍以外の他国軍隊の武器等の防護に当たっての手続について国家安全保障会議の審議を含め内閣の関与を確保すること
(注)海上警備行動や治安出動の下令手続の迅速化については、「大規模テロ等のおそれがある場合の政府の対処について」(01年11月2日閣議決定)等も参考に、いくつかの典型事例についての手続に関して、(別途)閣議決定を行う。
3、我が国の平和と安全に資する活動を行う他国軍隊に対する支援活動(周辺事態法関連)
▽安全保障環境の変化や日米安保条約を基盤とする米国との防衛協力の進展を踏まえつつ、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態において、日米安保条約の効果的な運用に寄与し、当該事態に対応して活動を行う米軍及びその米軍以外の他国軍隊に対する支援を実施すること等、改正の趣旨を明確にするため目的規定を見直すほか、これまでの関連規定を参考にしつつ、対応措置の内容について必要な改正を検討する。
▽このような改正の検討に当たっては、以下の要件を前提とする。
<1>他国の「武力の行使」との一体化を防ぐための枠組みを設定すること
<2>国会の関与については、対応措置の実施につき原則国会の事前承認を要するという現行周辺事態法の枠組みを維持すること
4、国際社会の平和と安全への一層の貢献
(1)国際社会の平和と安全のために活動する他国軍隊に対する支援活動(新法を検討)
▽国際社会の平和と安全のために活動する他国軍隊に対する支援活動を自衛隊が実施できるようにするため、以下の要件を前提として法整備を検討する。
<1>他国の「武力の行使」との一体化を防ぐための枠組みを設定すること
<2>国連決議に基づくものであること又は関連する国連決議があること
<3>国会の関与については、対応措置の実施につき国会の事前承認を基本とすること
<4>対応措置を実施する隊員の安全の確保のための必要な措置を定めること
(2)国際的な平和協力活動の実施(国連平和維持活動隧PKO隱協力法関連)
▽国連PKOにおいて実施できる業務の拡大及び業務の実施に必要な武器使用権限の見直しを行う。
▽国連が統括しない人道復興支援活動や安全確保活動等の国際的な平和協力活動の実施については、以下の要件を前提として法整備を検討する。
<1>従来のPKO参加5原則と同様の厳格な参加原則によること
<2>国連決議に基づくものであること又は関連する国連決議等があること
<3>国会の関与については、その実施につき国会の事前承認を基本とすること
<4>参加する隊員の安全の確保のための必要な措置を定めること
5、憲法第9条の下で許容される自衛の措置(自衛隊法、武力攻撃事態法等事態対処法制関連)
▽憲法第9条の下で許容される自衛の措置については、閣議決定及びその後の国会における質疑において明らかにされた政府の考え方を踏まえ、武力攻撃事態法、自衛隊法などに規定されている「武力の行使」の要件を精査し、「新3要件」及び上記考え方をそれらの条文に過不足なく盛り込むこととする。具体的には以下の方向性で法整備を検討する。
<1>「新3要件」によって新たに「武力の行使」が可能となる新事態については、既存の武力攻撃事態等との関係を整理した上で、その名称及び定義を現行の武力攻撃事態法に明記すること
<2>上記の整理を踏まえ、新事態に対応する自衛隊の行動及びその際の武力行使については、必要な改正を盛り込んだ上で、現行の自衛隊法第76条(防衛出動)及び第88条(防衛出動時の武力行使)によるものとすること
<3>新事態に対応するために自衛隊に防衛出動を命ずるに際しては、現行自衛隊法の規定と同様、原則国会の事前承認を要すること
▽武力攻撃事態法や自衛隊法のほか、上記を踏まえ改正が必要となる関連法律の改正を検討する。
6、その他関連する法改正事項
(1)船舶検査活動(船舶検査活動法関連)
▽現行の船舶検査活動法について、周辺事態法の見直しに伴う改正を検討するとともに、現行の船舶検査活動法の自衛隊部隊の権限を基本として、国際社会の平和と安全に必要な場合の船舶検査活動の実施について法整備を検討する。その際、国会の関与のあり方について、検討する。
(2)自衛隊法の規定に基づく他国軍隊に対する物品・役務の提供(自衛隊法関連)
▽自衛隊と米軍が共に活動することが想定される具体的な場面において、情報収集・警戒監視等具体的なニーズが存在する分野についても、物品・役務の提供が実施できるよう法整備を検討する。
(3)在外邦人の救出(自衛隊法関連)
▽領域国の受入れ同意がある場合には、武器使用を伴う在外邦人の救出についても以下の要件を前提に対応できるよう法整備を検討する。
<1>領域国の同意が及ぶ範囲、すなわちその領域において権力が維持されている範囲で活動すること
<2>派遣手続については内閣総理大臣の承認を要すること
<3>在外邦人の安全を含む活動の安全な実施に必要な措置を定めること
(4)国家安全保障会議の審議事項(国家安全保障会議設置法関連)
▽国際的な平和協力活動や憲法第9条の下で許容される自衛の措置にかかる審議事項等について整理し、必要な法改正を検討する。
平和安全法制等の整備について - 内閣官房
http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/housei_seibi.html
平和安全法制等の整備について
>政府は平成27年5月14日、国家安全保障会議及び閣議において、平和安全法制関連2法案を決定しました。
平和安全法制
http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/gaiyou-heiwaanzenhousei.pdf
内閣官房室
「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」の一問一答
国民の命と平和な暮らしを守ることは政府の最も重要な責務です。我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しています。我が国の安全を確保していくには、日米>間の安全保障・防衛協力を強化するとともに、域内外のパートナーとの信頼及び協力関係を深め、その上で、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする法整備を行うことが必要なのです。これにより、争いを未然に防ぐ力、つまり抑止力を高めることができます。今回の閣議決定は、このような問題意識で、自民、公明の連立与党で濃密な協議を行った結果に基づき、政府として新しい安全保障法制の整備のための基本方針を示したものです。今後、この方針の下、法案作成を行い、国会に十分な審議をお願いしていきます。
【問1】 集団的自衛権とは何か?
【答】 集団的自衛権とは、国際法上、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利です。しかし、政府としては、憲法がこのような活動の全てを許しているとは考えていません。今回の閣議決定は、あくまでも国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るための必要最小限度の自衛の措置を認めるだけです。他国の防衛それ自体を目的とするものではありません。
【問2】 我が国を取り巻く安全保障環境の変化とは、具体的にどのようなものか?
【答】 例えば、大量破壊兵器や弾道ミサイル等の軍事技術が高度化・拡散し、北朝鮮は日本の大部分をノドンミサイルの射程に入れており、また、核開発も行っています。さらに、グローバルなパワーバランスの変化があり、国際テロの脅威や、海洋、サイバー空間へのアクセスを妨げるリスクも深刻化しています。
【問3】 なぜ、今、集団的自衛権を容認しなければならないのか?
【答】 今回の閣議決定は、我が国を取り巻く安全保障環境がますます厳しさを増す中、我が国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るため、すなわち我が国を防衛するために、やむを得ない自衛の措置として、必要最小限の武力の行使を認めるものです。
【問4】 解釈改憲は立憲主義の否定ではないのか?
【答】 今回の閣議決定は、合理的な解釈の限界をこえるいわゆる解釈改憲ではありません。これまでの政府見解の基本的な論理の枠内における合理的なあてはめの結果であり、立憲主義に反するものではありません。
【問5】 なぜ憲法改正しないのか?
【答】 今回の閣議決定は、国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るために必要最小限の自衛の措置をするという政府の憲法解釈の基本的考え方を、何ら変えるものではありません。必ずしも憲法を改正する必要はありません。
【問6】 今後、更に憲法解釈を変更して、世界各国と同様に国際法上合法な集団的自衛権の行使を全面的に認めるようになるのではないか?
【答】 その場合には憲法改正が必要です。なぜなら、世界各国と同様に集団的自衛権の行使を認めるなど、憲法第9条の解釈に関する従来の政府見解の基本的な論理を超えて武力の行使が認められるとするような解釈を現憲法の下で採用することはできません。
【問7】 国会での議論を経ずに憲法解釈を変えるのは、国民の代表を無視するものではないか?
【答】 5月に総理が検討の方向性を示して以降、国会では延べ約70名※の議員から質問があり、考え方を説明してきました。自衛隊の実際の活動については法律が決めています。閣議決定に基づき、法案を作成し、国会に十分な審議をお願いしていきます。
【問8】 議論が尽くされておらず、国民の理解が得られないのではないか?
【答】 この論議は第一次安倍内閣時から研究を始め、その間、7年にわたりメディア等で議論され、先の総選挙、参院選でも訴えてきたものです。5月に総理が検討の方向性を示して以降、国会では延べ約70名※の議員から質問があり、説明してきました。今後も皆様の理解を頂くよう説明努力を重ねます。
【問9】 今回の閣議決定は密室で議論されたのではないか?
【答】 これまで、国会では延べ約70名※の議員からの質問があり、総理・官房長官の記者会見など、様々な場でたびたび説明し、議論しました。閣議決定は、その上で、自民、公明の連立与党の濃密な協議の結果を受けたものです。
【問10】 今回拙速に閣議決定だけで決めたのは、集団的自衛権の行使に向けた政府の独走ではないか?
【答】 閣議決定は、政府が意思決定をする方法の中で最も重い決め方です。憲法自体には、自衛権への言及は何もなく、自衛権をめぐるこれまでの昭和47年の政府見解は、閣議決定を経たものではありません。今回の閣議決定は、時間をかけて慎重に議論を重ねた上で行いました。今回の閣議決定があっても、実際に自衛隊が活動できるようになるためには、根拠となる国内法が必要になります。今後、法案を作成し、国会に十分な審議をお願いしていきます。これに加え、実際の行使に当たっては、これまでと同様、国会承認を求めることになり、「新三要件」を満たしているか、政府が判断するのみならず、国会の承認を頂かなければなりません。
【問11】 今回の閣議決定で議論は終わりなのか?
【答】 今回の閣議決定は、自民、公明の連立与党の濃密な協議の結果に基づき、政府として新しい安全保障法制の整備のための基本方針を示したものです。今後、閣議決定に基づき、法案を作成し、国会に十分な審議をお願いしていきます。
【問12】 憲法解釈を変え、平和主義を放棄するのか?
【答】 憲法の平和主義を、いささかも変えるものではありません。大量破壊兵器、弾道ミサイル、サイバー攻撃などの脅威等により、我が国を取り巻く安全保障環境がますます厳しくなる中で「争いを未然に防ぎ、国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るために、いかにすべきか」が基点です。
【問13】 憲法解釈を変え、専守防衛を放棄するのか?
【答】 今後も専守防衛を堅持していきます。国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを、とことん守っていきます。
【問14】 戦後日本社会の大前提である平和憲法が根底から破壊されるのではないか?
【答】 日本国憲法の基本理念である平和主義は今後とも守り抜いていきます。
【問15】 徴兵制が採用され、若者が戦地へと送られるのではないか?
【答】 全くの誤解です。例えば、憲法第18条で「何人も(中略)その意に反する苦役に服させられない」と定められているなど、徴兵制は憲法上認められません。
【問16】 今回、集団的自衛権に関して憲法解釈の変更をしたのだから、徴兵制も同様に、憲法解釈を変更して導入する可能性があるのではないか?
【答】 徴兵制は、平時であると有事であるとを問わず、憲法第13条(個人の尊重・幸福追求権等)、第18条(苦役からの自由等)などの規定の趣旨から見て許容されるものではなく、解釈変更の余地はありません。
【問17】 日本が戦争をする国になり、将来、自分達の子供や若者が戦場に行かされるようになるのではないか?
【答】 日本を戦争をする国にはしません。そのためにも、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しくなる中で、国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るために、外交努力により争いを未然に防ぐことを、これまで以上に重視していきます。
【問18】 自衛隊員が、海外で人を殺し、殺されることになるのではないか?
【答】 自衛隊員の任務は、これまでと同様、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるというときに我が国と国民を守ることです。
【問19】 今回の閣議決定で、自衛隊員が戦闘に巻き込まれ血を流すリスクがこれまで以上に高まるのではないか?
【答】 自衛隊員は、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえること」を宣誓して、任務に当たっています。自衛隊員がいざという時に備えて日頃から厳しい訓練を徹底的に行っている理由はただ一つ。国民の命と平和な暮らしを守るためであり、そのために、他に手段がないからです。
新たな法整備により与えられる任務は、これまで同様、危険度の高い任務になります。あくまでも、国民の命と平和な暮らしを守り抜くためのものであるという自衛隊員の任務には、何ら変更はありません。自衛隊員が、海外で、我が国の安全と無関係な戦争に参加することは断じてありません。
また、我が国の安全の確保や国際社会の平和と安定のために活動する他国の軍隊に対して、いわゆる後方支援といわれる支援活動を行う場合については、いかなる場所で活動する場合であっても、これまでと同様、自衛隊の部隊の安全を確保しつつ行うことは言うまでもありません。
【問20】 歯止めがあいまいで、政府の判断次第で武力の行使が無制約に行われるのではないか?
【答】 国の存立を全うし、国民を守るための自衛の措置としての武力の行使の「新三要件」が、憲法上の明確な歯止めとなっています。さらに、法案においても実際の行使は国会承認を求めることとし、国会によるチェックの仕組みを明確にします。
【問21】 国会で議論されている「新三要件」に言う「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」の有無は、どのような基準で判断するのか?
【答】 現実に発生した事態の個別・具体的な状況に即して、主に、攻撃国の意思・能力・事態の発生場所、その規模・態様・推移などの要素を総合的に考えて、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民が被ることとなる犠牲の深刻性、重大性などから、「新三要件」を満たすか否か客観的、合理的に判断します。
【問22】 自衛隊は世界中のどこにでも行って戦うようになるのではないか?
【答】 従来からの「海外派兵は一般に許されない」という原則は全く変わりません。国の存立を全うし、国民を守るための自衛の措置としての武力の行使の「新三要件」により、日本がとり得る措置には自衛のための必要最小限度という歯止めがかかっています。
【問23】 国民生活上、石油の供給は必要不可欠ではないか?
【答】 石油なしで国民生活は成り立たないのが現実です。石油以外のエネルギー利用を進める一方で、普段から産油国外交や国際協調に全力を尽くします。
【問24】 狭いところで幅33キロメートルの地点もあるホルムズ海峡に機雷が敷設された場合、我が国に大きな影響があるのか?
【答】 我が国が輸入する原油の約8割、天然ガスの2割強は、ホルムズ海峡を通過しており、ホルムズ海峡は、エネルギー安全保障の観点から極めて重要な輸送経路となっています。現在、中東情勢が不安定になっただけで、石油価格が上昇し、ガソリン価格も高騰していますが、仮に、この海峡の地域で武力紛争が発生し、ホルムズ海峡に機雷が敷設された場合には、かつての石油ショックも比較にならない程に高騰し、世界経済は大混乱に陥り、我が国に深刻なエネルギー危機が発生するでしょう。
【問25】 日本は石油を備蓄しているから、ホルムズ海峡が封鎖されても「新三要件」に言う「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」に当たらないのではないか?
【答】 石油備蓄が約6ヶ月分ありますが、機雷が除去されなければ危険はなくなりません。石油供給が回復しなければ我が国の国民生活に死活的な影響が生じ、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されることとなる事態は生じ得ます。実際に「新三要件」に当てはまるか否かは、その事態の状況や、国際的な状況等も考慮して判断していくことになります。
【問26】 日本は石油のために戦争するようになるのではないか?
【答】 憲法上許されるのは、あくまでも我が国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るための必要最小限の自衛の措置だけです。
【問27】 機雷の除去は、海外で武力を行使するものであり、海外派兵に当たるのではないか?
【答】 国際紛争を力で解決するために機雷を敷設し、船舶の自由な航行を妨げることは国際法違反です。自由航行を回復するために機雷を除去することは、国際法上は武力の行使に分類されますが、機雷の除去は受動的、限定的な行為であり、敵を撃破するための大規模な空爆や地上戦とは、性格が大きく異なります。機雷の除去を行う自衛隊の船舶は攻撃的なものではなく、木や強化プラスチックでできており脆弱なため、まさに、そこで戦闘行為が行われているところに派遣して、機雷の除去を行うことは、想定されません。
【問28】 従来の政府見解を論拠に逆の結論を導き出すのは矛盾ではないか?
【答】 憲法の基本的な考え方は、何ら変更されていません。我が国を取り巻く安全保障環境がますます厳しくなる中で、他国に対する武力攻撃が我が国の存立を脅かすことも起こり得ます。このような場合に限っては、自衛のための措置として必要最小限の武力の行使が憲法上許されると判断したものです。
【問29】 今回の閣議決定により、米国の戦争に巻き込まれるようになるのではないか?
【答】 憲法上許されるのは、あくまで我が国の存立を全うし、国民の命を守るための自衛の措置だけです。もとより、外交努力による解決を最後まで重ねていく方針は今後も揺らぎません。万が一の事態での自衛の措置を十分にしておくことで、却って紛争も予防され、日本が戦争に巻き込まれるリスクはなくなっていきます。
【問30】 米国から戦争への協力を要請された場合に、断れなくなるのではないか?
【答】 武力行使を目的として、イラク戦争や湾岸戦争のような戦闘に参加することは、これからもありません。我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がない場合、他に適当な手段がある場合、必要最小限の範囲を超える場合は、「新三要件」を満たさず、「できない」と答えるのは当然のことです。
【問31】 今回の閣議決定により、必要ない軋轢を生み、戦争になるのではないか?
【答】 総理や大臣が、世界を広く訪問して我が国の考え方を説明し、多くの国々から理解と支持を得ています。万が一の事態での自衛の措置を十分にしておくことで、かえって紛争も予防され、日本が戦争に巻き込まれるリスクはなくなっていきます。
【問32】 今回の閣議決定によっても、結局戦争を起こそうとする国を止められないのではないか?
【答】 日本自身が万全の備えをし、日米間の安全保障・防衛協力を強化することで、日本に対して戦争を仕掛けようとする企みをくじく力、すなわち抑止力が強化されます。閣議決定を受けた法案を、国会で審議、成立を頂くことで、日本が戦争に巻き込まれるリスクはなくなっていきます。
【問33】 武器輸出の緩和に続いて今回の閣議決定を行い、軍国主義へ突き進んでいるのではないか?
【答】 今回の閣議決定は戦争への道を開くものではありません。むしろ、日本の防衛のための備えを万全にすることで、日本に戦争を仕掛けようとする企みをくじく。つまり抑止力を高め、日本が戦争に巻き込まれるリスクがなくなっていくと考えます。
【問34】 今回の政府の決定が防衛予算を増加させ、軍拡競争をあおるのではないか?
【答】 決して軍拡につながることはありません。我が国の防衛予算は、中期防衛力整備計画に基づき、5年間、毎年0.8パーセントずつ増やすことが既に決められていますが、それでも2002年の水準に戻るにすぎません。
【問35】 安倍総理はなぜこれほどまでに安全保障政策が好きなのか?
【答】 好き嫌いではありません。総理大臣は、国民の命、平和な暮らしを守るために重い責任を負います。いかなる事態にも対応できるよう、常日頃から隙のない備えをするとともに、各国と協力を深めていかなければなりません。
※ 人数については安保法制懇報告書提出(平成26年5月15日)から閣議決定(平成26年7月1日)の間に、国会に質問通告した議員の述べ人数
自衛の措置としての武力の行使の新三要件
○ 我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること
○ これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
○ 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
天声人語
2015年6月13日(土)付
これ以上は膨らまないが、再び元の大きさにまでしぼむことはありうる――。自衛隊による武力の行使をめぐる安倍政権の答弁を、ありふれた言葉で言いかえるとこうなる。どういうことか
日本が直接攻撃された場合の個別的自衛権は行使できるが、他国が攻撃された場合に日本が一緒に戦う集団的自衛権は行使することができない。これが憲法9条に関する歴代内閣の解釈だった。安倍政権は昨年7月に解釈を変え、集団的自衛権を行使できるとした。自衛隊が武力行使できる範囲を「膨らませた」わけである
日本を取りまく安全保障環境が根本的に変化したから、というのがその理由だ。では、安保環境が良くなったら、憲法解釈も元に戻せばいいのか。10日、民主党の辻元清美衆院議員が質問した
内閣法制局の横畠(よこばたけ)裕介長官は仮定の話としつつ、解釈が元に戻りうるという趣旨の答弁をした。この場合、武力行使できる範囲が「しぼむ」わけだ。中谷防衛相も長官の答弁を追認した
このやりとりの意味は大きい。歴代内閣は、憲法解釈は自由に変更できるものではない、としてきた。時の政権の考えで容易に変えられるとなると、解釈への信頼、「ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねない」という理由だ▼この長年の禁を、安倍政権は昨年破った。今回の答弁はその延長線上にある。膨らますのも、しぼませるのも、政権の意向次第で何とでもなる、と。憲法規範そのものの危機はいよいよ深い。
安全保障法制整備の具体的な方向性について : 特集 : 読売新聞 ...
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自民、公明両党が20日に合意した共同文書「安全保障法制整備の具体的な方向性について」の全文は次の通り。
◇
今般の安全保障法制の整備については、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(2014年7月1日閣議決定)に示された基本方針に基づき、政府において検討作業が進められてきた。
自由民主党、公明党の両党は、14年12月15日の連立政権合意において「先の閣議決定に基づく安全保障関連法案を速やかに成立させる。」とするとともに、政府においても、15年度予算成立後において、「国の存立を全うし国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備関連法律案」の提出を目指していることから、15年2月13日に「安全保障法制整備に関する与党協議会」を再開した。同協議会においては、再開後第1回の協議会で示した考え方に従い、政府の説明を聴取しつつ、7回にわたり精力的に議論を重ねてきた。
こうした検討の結果、与党として、現時点における法整備の具体的な方向性について、別紙のとおり、一定の認識を共有するに至ったところである。政府はこの方向性に即して作業を加速化し、必要な法案を本年5月半ばには国会に提出できるようさらに準備を進めていくよう求める。
政府における法案の準備状況を踏まえつつ、さらに与党協議会での議論を継続し、法案審査に向けた検討を行うこととする。
【別紙】
1、全般
▽我が国が日本国憲法の下で平和国家として歩んできたことを踏まえつつ、いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを守りぬくため、切れ目のない対応を可能とする国内法制を整備する。
▽特に自衛隊の海外における活動の参加に当たっては、以下の3つの方針を確立し、その下に適切な判断を行う。
<1>自衛隊が参加し、実施する活動が国際法上の正当性を有すること
<2>国民の理解が得られるよう、国会の関与等の民主的統制が適切に確保されること
<3>参加する自衛隊員の安全の確保のための必要な措置を定めること
2、武力攻撃に至らない侵害への対処
米軍等の武器等の防護(自衛隊法関連)
▽現行自衛隊法第95条の趣旨を踏まえつつ、以下の法整備を検討する。
・我が国の防衛に資する活動に現に従事する米軍の武器等について自衛隊の部隊による防護を可能とする。
・米軍以外の他国軍隊の武器等の防護についても法整備の検討の対象とするが、以下の点を踏まえたものに限る。
<1>「我が国の防衛に資する活動」として認められるものであること
<2>我が国の防衛義務を負う米軍の武器等と同様な「我が国の防衛力を構成する重要な物的手段」に当たり得る場合であること
・米軍及び米軍以外の他国軍隊の武器等の防護に当たっての手続について国家安全保障会議の審議を含め内閣の関与を確保すること
(注)海上警備行動や治安出動の下令手続の迅速化については、「大規模テロ等のおそれがある場合の政府の対処について」(01年11月2日閣議決定)等も参考に、いくつかの典型事例についての手続に関して、(別途)閣議決定を行う。
3、我が国の平和と安全に資する活動を行う他国軍隊に対する支援活動(周辺事態法関連)
▽安全保障環境の変化や日米安保条約を基盤とする米国との防衛協力の進展を踏まえつつ、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態において、日米安保条約の効果的な運用に寄与し、当該事態に対応して活動を行う米軍及びその米軍以外の他国軍隊に対する支援を実施すること等、改正の趣旨を明確にするため目的規定を見直すほか、これまでの関連規定を参考にしつつ、対応措置の内容について必要な改正を検討する。
▽このような改正の検討に当たっては、以下の要件を前提とする。
<1>他国の「武力の行使」との一体化を防ぐための枠組みを設定すること
<2>国会の関与については、対応措置の実施につき原則国会の事前承認を要するという現行周辺事態法の枠組みを維持すること
4、国際社会の平和と安全への一層の貢献
(1)国際社会の平和と安全のために活動する他国軍隊に対する支援活動(新法を検討)
▽国際社会の平和と安全のために活動する他国軍隊に対する支援活動を自衛隊が実施できるようにするため、以下の要件を前提として法整備を検討する。
<1>他国の「武力の行使」との一体化を防ぐための枠組みを設定すること
<2>国連決議に基づくものであること又は関連する国連決議があること
<3>国会の関与については、対応措置の実施につき国会の事前承認を基本とすること
<4>対応措置を実施する隊員の安全の確保のための必要な措置を定めること
(2)国際的な平和協力活動の実施(国連平和維持活動隧PKO隱協力法関連)
▽国連PKOにおいて実施できる業務の拡大及び業務の実施に必要な武器使用権限の見直しを行う。
▽国連が統括しない人道復興支援活動や安全確保活動等の国際的な平和協力活動の実施については、以下の要件を前提として法整備を検討する。
<1>従来のPKO参加5原則と同様の厳格な参加原則によること
<2>国連決議に基づくものであること又は関連する国連決議等があること
<3>国会の関与については、その実施につき国会の事前承認を基本とすること
<4>参加する隊員の安全の確保のための必要な措置を定めること
5、憲法第9条の下で許容される自衛の措置(自衛隊法、武力攻撃事態法等事態対処法制関連)
▽憲法第9条の下で許容される自衛の措置については、閣議決定及びその後の国会における質疑において明らかにされた政府の考え方を踏まえ、武力攻撃事態法、自衛隊法などに規定されている「武力の行使」の要件を精査し、「新3要件」及び上記考え方をそれらの条文に過不足なく盛り込むこととする。具体的には以下の方向性で法整備を検討する。
<1>「新3要件」によって新たに「武力の行使」が可能となる新事態については、既存の武力攻撃事態等との関係を整理した上で、その名称及び定義を現行の武力攻撃事態法に明記すること
<2>上記の整理を踏まえ、新事態に対応する自衛隊の行動及びその際の武力行使については、必要な改正を盛り込んだ上で、現行の自衛隊法第76条(防衛出動)及び第88条(防衛出動時の武力行使)によるものとすること
<3>新事態に対応するために自衛隊に防衛出動を命ずるに際しては、現行自衛隊法の規定と同様、原則国会の事前承認を要すること
▽武力攻撃事態法や自衛隊法のほか、上記を踏まえ改正が必要となる関連法律の改正を検討する。
6、その他関連する法改正事項
(1)船舶検査活動(船舶検査活動法関連)
▽現行の船舶検査活動法について、周辺事態法の見直しに伴う改正を検討するとともに、現行の船舶検査活動法の自衛隊部隊の権限を基本として、国際社会の平和と安全に必要な場合の船舶検査活動の実施について法整備を検討する。その際、国会の関与のあり方について、検討する。
(2)自衛隊法の規定に基づく他国軍隊に対する物品・役務の提供(自衛隊法関連)
▽自衛隊と米軍が共に活動することが想定される具体的な場面において、情報収集・警戒監視等具体的なニーズが存在する分野についても、物品・役務の提供が実施できるよう法整備を検討する。
(3)在外邦人の救出(自衛隊法関連)
▽領域国の受入れ同意がある場合には、武器使用を伴う在外邦人の救出についても以下の要件を前提に対応できるよう法整備を検討する。
<1>領域国の同意が及ぶ範囲、すなわちその領域において権力が維持されている範囲で活動すること
<2>派遣手続については内閣総理大臣の承認を要すること
<3>在外邦人の安全を含む活動の安全な実施に必要な措置を定めること
(4)国家安全保障会議の審議事項(国家安全保障会議設置法関連)
▽国際的な平和協力活動や憲法第9条の下で許容される自衛の措置にかかる審議事項等について整理し、必要な法改正を検討する。
平和安全法制等の整備について - 内閣官房
http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/housei_seibi.html
平和安全法制等の整備について
>政府は平成27年5月14日、国家安全保障会議及び閣議において、平和安全法制関連2法案を決定しました。
平和安全法制
http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/gaiyou-heiwaanzenhousei.pdf
内閣官房室
「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」の一問一答
国民の命と平和な暮らしを守ることは政府の最も重要な責務です。我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しています。我が国の安全を確保していくには、日米>間の安全保障・防衛協力を強化するとともに、域内外のパートナーとの信頼及び協力関係を深め、その上で、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする法整備を行うことが必要なのです。これにより、争いを未然に防ぐ力、つまり抑止力を高めることができます。今回の閣議決定は、このような問題意識で、自民、公明の連立与党で濃密な協議を行った結果に基づき、政府として新しい安全保障法制の整備のための基本方針を示したものです。今後、この方針の下、法案作成を行い、国会に十分な審議をお願いしていきます。
【問1】 集団的自衛権とは何か?
【答】 集団的自衛権とは、国際法上、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利です。しかし、政府としては、憲法がこのような活動の全てを許しているとは考えていません。今回の閣議決定は、あくまでも国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るための必要最小限度の自衛の措置を認めるだけです。他国の防衛それ自体を目的とするものではありません。
【問2】 我が国を取り巻く安全保障環境の変化とは、具体的にどのようなものか?
【答】 例えば、大量破壊兵器や弾道ミサイル等の軍事技術が高度化・拡散し、北朝鮮は日本の大部分をノドンミサイルの射程に入れており、また、核開発も行っています。さらに、グローバルなパワーバランスの変化があり、国際テロの脅威や、海洋、サイバー空間へのアクセスを妨げるリスクも深刻化しています。
【問3】 なぜ、今、集団的自衛権を容認しなければならないのか?
【答】 今回の閣議決定は、我が国を取り巻く安全保障環境がますます厳しさを増す中、我が国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るため、すなわち我が国を防衛するために、やむを得ない自衛の措置として、必要最小限の武力の行使を認めるものです。
【問4】 解釈改憲は立憲主義の否定ではないのか?
【答】 今回の閣議決定は、合理的な解釈の限界をこえるいわゆる解釈改憲ではありません。これまでの政府見解の基本的な論理の枠内における合理的なあてはめの結果であり、立憲主義に反するものではありません。
【問5】 なぜ憲法改正しないのか?
【答】 今回の閣議決定は、国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るために必要最小限の自衛の措置をするという政府の憲法解釈の基本的考え方を、何ら変えるものではありません。必ずしも憲法を改正する必要はありません。
【問6】 今後、更に憲法解釈を変更して、世界各国と同様に国際法上合法な集団的自衛権の行使を全面的に認めるようになるのではないか?
【答】 その場合には憲法改正が必要です。なぜなら、世界各国と同様に集団的自衛権の行使を認めるなど、憲法第9条の解釈に関する従来の政府見解の基本的な論理を超えて武力の行使が認められるとするような解釈を現憲法の下で採用することはできません。
【問7】 国会での議論を経ずに憲法解釈を変えるのは、国民の代表を無視するものではないか?
【答】 5月に総理が検討の方向性を示して以降、国会では延べ約70名※の議員から質問があり、考え方を説明してきました。自衛隊の実際の活動については法律が決めています。閣議決定に基づき、法案を作成し、国会に十分な審議をお願いしていきます。
【問8】 議論が尽くされておらず、国民の理解が得られないのではないか?
【答】 この論議は第一次安倍内閣時から研究を始め、その間、7年にわたりメディア等で議論され、先の総選挙、参院選でも訴えてきたものです。5月に総理が検討の方向性を示して以降、国会では延べ約70名※の議員から質問があり、説明してきました。今後も皆様の理解を頂くよう説明努力を重ねます。
【問9】 今回の閣議決定は密室で議論されたのではないか?
【答】 これまで、国会では延べ約70名※の議員からの質問があり、総理・官房長官の記者会見など、様々な場でたびたび説明し、議論しました。閣議決定は、その上で、自民、公明の連立与党の濃密な協議の結果を受けたものです。
【問10】 今回拙速に閣議決定だけで決めたのは、集団的自衛権の行使に向けた政府の独走ではないか?
【答】 閣議決定は、政府が意思決定をする方法の中で最も重い決め方です。憲法自体には、自衛権への言及は何もなく、自衛権をめぐるこれまでの昭和47年の政府見解は、閣議決定を経たものではありません。今回の閣議決定は、時間をかけて慎重に議論を重ねた上で行いました。今回の閣議決定があっても、実際に自衛隊が活動できるようになるためには、根拠となる国内法が必要になります。今後、法案を作成し、国会に十分な審議をお願いしていきます。これに加え、実際の行使に当たっては、これまでと同様、国会承認を求めることになり、「新三要件」を満たしているか、政府が判断するのみならず、国会の承認を頂かなければなりません。
【問11】 今回の閣議決定で議論は終わりなのか?
【答】 今回の閣議決定は、自民、公明の連立与党の濃密な協議の結果に基づき、政府として新しい安全保障法制の整備のための基本方針を示したものです。今後、閣議決定に基づき、法案を作成し、国会に十分な審議をお願いしていきます。
【問12】 憲法解釈を変え、平和主義を放棄するのか?
【答】 憲法の平和主義を、いささかも変えるものではありません。大量破壊兵器、弾道ミサイル、サイバー攻撃などの脅威等により、我が国を取り巻く安全保障環境がますます厳しくなる中で「争いを未然に防ぎ、国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るために、いかにすべきか」が基点です。
【問13】 憲法解釈を変え、専守防衛を放棄するのか?
【答】 今後も専守防衛を堅持していきます。国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを、とことん守っていきます。
【問14】 戦後日本社会の大前提である平和憲法が根底から破壊されるのではないか?
【答】 日本国憲法の基本理念である平和主義は今後とも守り抜いていきます。
【問15】 徴兵制が採用され、若者が戦地へと送られるのではないか?
【答】 全くの誤解です。例えば、憲法第18条で「何人も(中略)その意に反する苦役に服させられない」と定められているなど、徴兵制は憲法上認められません。
【問16】 今回、集団的自衛権に関して憲法解釈の変更をしたのだから、徴兵制も同様に、憲法解釈を変更して導入する可能性があるのではないか?
【答】 徴兵制は、平時であると有事であるとを問わず、憲法第13条(個人の尊重・幸福追求権等)、第18条(苦役からの自由等)などの規定の趣旨から見て許容されるものではなく、解釈変更の余地はありません。
【問17】 日本が戦争をする国になり、将来、自分達の子供や若者が戦場に行かされるようになるのではないか?
【答】 日本を戦争をする国にはしません。そのためにも、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しくなる中で、国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るために、外交努力により争いを未然に防ぐことを、これまで以上に重視していきます。
【問18】 自衛隊員が、海外で人を殺し、殺されることになるのではないか?
【答】 自衛隊員の任務は、これまでと同様、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるというときに我が国と国民を守ることです。
【問19】 今回の閣議決定で、自衛隊員が戦闘に巻き込まれ血を流すリスクがこれまで以上に高まるのではないか?
【答】 自衛隊員は、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえること」を宣誓して、任務に当たっています。自衛隊員がいざという時に備えて日頃から厳しい訓練を徹底的に行っている理由はただ一つ。国民の命と平和な暮らしを守るためであり、そのために、他に手段がないからです。
新たな法整備により与えられる任務は、これまで同様、危険度の高い任務になります。あくまでも、国民の命と平和な暮らしを守り抜くためのものであるという自衛隊員の任務には、何ら変更はありません。自衛隊員が、海外で、我が国の安全と無関係な戦争に参加することは断じてありません。
また、我が国の安全の確保や国際社会の平和と安定のために活動する他国の軍隊に対して、いわゆる後方支援といわれる支援活動を行う場合については、いかなる場所で活動する場合であっても、これまでと同様、自衛隊の部隊の安全を確保しつつ行うことは言うまでもありません。
【問20】 歯止めがあいまいで、政府の判断次第で武力の行使が無制約に行われるのではないか?
【答】 国の存立を全うし、国民を守るための自衛の措置としての武力の行使の「新三要件」が、憲法上の明確な歯止めとなっています。さらに、法案においても実際の行使は国会承認を求めることとし、国会によるチェックの仕組みを明確にします。
【問21】 国会で議論されている「新三要件」に言う「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」の有無は、どのような基準で判断するのか?
【答】 現実に発生した事態の個別・具体的な状況に即して、主に、攻撃国の意思・能力・事態の発生場所、その規模・態様・推移などの要素を総合的に考えて、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民が被ることとなる犠牲の深刻性、重大性などから、「新三要件」を満たすか否か客観的、合理的に判断します。
【問22】 自衛隊は世界中のどこにでも行って戦うようになるのではないか?
【答】 従来からの「海外派兵は一般に許されない」という原則は全く変わりません。国の存立を全うし、国民を守るための自衛の措置としての武力の行使の「新三要件」により、日本がとり得る措置には自衛のための必要最小限度という歯止めがかかっています。
【問23】 国民生活上、石油の供給は必要不可欠ではないか?
【答】 石油なしで国民生活は成り立たないのが現実です。石油以外のエネルギー利用を進める一方で、普段から産油国外交や国際協調に全力を尽くします。
【問24】 狭いところで幅33キロメートルの地点もあるホルムズ海峡に機雷が敷設された場合、我が国に大きな影響があるのか?
【答】 我が国が輸入する原油の約8割、天然ガスの2割強は、ホルムズ海峡を通過しており、ホルムズ海峡は、エネルギー安全保障の観点から極めて重要な輸送経路となっています。現在、中東情勢が不安定になっただけで、石油価格が上昇し、ガソリン価格も高騰していますが、仮に、この海峡の地域で武力紛争が発生し、ホルムズ海峡に機雷が敷設された場合には、かつての石油ショックも比較にならない程に高騰し、世界経済は大混乱に陥り、我が国に深刻なエネルギー危機が発生するでしょう。
【問25】 日本は石油を備蓄しているから、ホルムズ海峡が封鎖されても「新三要件」に言う「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」に当たらないのではないか?
【答】 石油備蓄が約6ヶ月分ありますが、機雷が除去されなければ危険はなくなりません。石油供給が回復しなければ我が国の国民生活に死活的な影響が生じ、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されることとなる事態は生じ得ます。実際に「新三要件」に当てはまるか否かは、その事態の状況や、国際的な状況等も考慮して判断していくことになります。
【問26】 日本は石油のために戦争するようになるのではないか?
【答】 憲法上許されるのは、あくまでも我が国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るための必要最小限の自衛の措置だけです。
【問27】 機雷の除去は、海外で武力を行使するものであり、海外派兵に当たるのではないか?
【答】 国際紛争を力で解決するために機雷を敷設し、船舶の自由な航行を妨げることは国際法違反です。自由航行を回復するために機雷を除去することは、国際法上は武力の行使に分類されますが、機雷の除去は受動的、限定的な行為であり、敵を撃破するための大規模な空爆や地上戦とは、性格が大きく異なります。機雷の除去を行う自衛隊の船舶は攻撃的なものではなく、木や強化プラスチックでできており脆弱なため、まさに、そこで戦闘行為が行われているところに派遣して、機雷の除去を行うことは、想定されません。
【問28】 従来の政府見解を論拠に逆の結論を導き出すのは矛盾ではないか?
【答】 憲法の基本的な考え方は、何ら変更されていません。我が国を取り巻く安全保障環境がますます厳しくなる中で、他国に対する武力攻撃が我が国の存立を脅かすことも起こり得ます。このような場合に限っては、自衛のための措置として必要最小限の武力の行使が憲法上許されると判断したものです。
【問29】 今回の閣議決定により、米国の戦争に巻き込まれるようになるのではないか?
【答】 憲法上許されるのは、あくまで我が国の存立を全うし、国民の命を守るための自衛の措置だけです。もとより、外交努力による解決を最後まで重ねていく方針は今後も揺らぎません。万が一の事態での自衛の措置を十分にしておくことで、却って紛争も予防され、日本が戦争に巻き込まれるリスクはなくなっていきます。
【問30】 米国から戦争への協力を要請された場合に、断れなくなるのではないか?
【答】 武力行使を目的として、イラク戦争や湾岸戦争のような戦闘に参加することは、これからもありません。我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がない場合、他に適当な手段がある場合、必要最小限の範囲を超える場合は、「新三要件」を満たさず、「できない」と答えるのは当然のことです。
【問31】 今回の閣議決定により、必要ない軋轢を生み、戦争になるのではないか?
【答】 総理や大臣が、世界を広く訪問して我が国の考え方を説明し、多くの国々から理解と支持を得ています。万が一の事態での自衛の措置を十分にしておくことで、かえって紛争も予防され、日本が戦争に巻き込まれるリスクはなくなっていきます。
【問32】 今回の閣議決定によっても、結局戦争を起こそうとする国を止められないのではないか?
【答】 日本自身が万全の備えをし、日米間の安全保障・防衛協力を強化することで、日本に対して戦争を仕掛けようとする企みをくじく力、すなわち抑止力が強化されます。閣議決定を受けた法案を、国会で審議、成立を頂くことで、日本が戦争に巻き込まれるリスクはなくなっていきます。
【問33】 武器輸出の緩和に続いて今回の閣議決定を行い、軍国主義へ突き進んでいるのではないか?
【答】 今回の閣議決定は戦争への道を開くものではありません。むしろ、日本の防衛のための備えを万全にすることで、日本に戦争を仕掛けようとする企みをくじく。つまり抑止力を高め、日本が戦争に巻き込まれるリスクがなくなっていくと考えます。
【問34】 今回の政府の決定が防衛予算を増加させ、軍拡競争をあおるのではないか?
【答】 決して軍拡につながることはありません。我が国の防衛予算は、中期防衛力整備計画に基づき、5年間、毎年0.8パーセントずつ増やすことが既に決められていますが、それでも2002年の水準に戻るにすぎません。
【問35】 安倍総理はなぜこれほどまでに安全保障政策が好きなのか?
【答】 好き嫌いではありません。総理大臣は、国民の命、平和な暮らしを守るために重い責任を負います。いかなる事態にも対応できるよう、常日頃から隙のない備えをするとともに、各国と協力を深めていかなければなりません。
※ 人数については安保法制懇報告書提出(平成26年5月15日)から閣議決定(平成26年7月1日)の間に、国会に質問通告した議員の述べ人数
自衛の措置としての武力の行使の新三要件
○ 我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること
○ これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
○ 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
天声人語
2015年6月13日(土)付
これ以上は膨らまないが、再び元の大きさにまでしぼむことはありうる――。自衛隊による武力の行使をめぐる安倍政権の答弁を、ありふれた言葉で言いかえるとこうなる。どういうことか
日本が直接攻撃された場合の個別的自衛権は行使できるが、他国が攻撃された場合に日本が一緒に戦う集団的自衛権は行使することができない。これが憲法9条に関する歴代内閣の解釈だった。安倍政権は昨年7月に解釈を変え、集団的自衛権を行使できるとした。自衛隊が武力行使できる範囲を「膨らませた」わけである
日本を取りまく安全保障環境が根本的に変化したから、というのがその理由だ。では、安保環境が良くなったら、憲法解釈も元に戻せばいいのか。10日、民主党の辻元清美衆院議員が質問した
内閣法制局の横畠(よこばたけ)裕介長官は仮定の話としつつ、解釈が元に戻りうるという趣旨の答弁をした。この場合、武力行使できる範囲が「しぼむ」わけだ。中谷防衛相も長官の答弁を追認した
このやりとりの意味は大きい。歴代内閣は、憲法解釈は自由に変更できるものではない、としてきた。時の政権の考えで容易に変えられるとなると、解釈への信頼、「ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねない」という理由だ▼この長年の禁を、安倍政権は昨年破った。今回の答弁はその延長線上にある。膨らますのも、しぼませるのも、政権の意向次第で何とでもなる、と。憲法規範そのものの危機はいよいよ深い。