前史 日本語史を考える4
日本語史を日本語の呼称とともに考えてみる。和語であれば倭の時代から和になる表記は混淆して用いていたようである。漢文またその文体には和語が見えないならば、表記によるところであろう。この和を、やまと と訓じて、大和を、おほやまと とする。日本を、やまと 大日本を おほやまと と訓じていたので、やまとことば は、日本語を指していてもおかしくはない。大和言葉はまた、和歌をもさしていたので、日本語史についていうなら、やまと おおほやまと の意味では、倭語史、和語史、大和語史ともなり得ない。日本語史に対してその始まりは、いまの通用する国語を用いて前史に国語史を置くことになる。
倭語が日本語になるとすれば、大和朝廷の和語または倭語をとらえ、その経緯において、漢語との対比ではない国語と見える時期を、もうひとつに、和らげに意識する時代となる。日本語史の前史を、日本語史の歴史的事象の成因となった、それ以前の歴史と考えるか、日本語史の時代の前半の歴史を、国語史としてみるか、漢語とポルトガル語と、日本語への影響にある。
外国語に対して、日本の国語である日本語。その語彙には漢語などの外来の要素も含まれる。
*霊異記〔810~824〕上・二八「吾が聖朝の人、道照法師〈略〉新羅に至り、其の山中に有りて法花経を講ず。時に虎衆の中に人有り、倭語を以て問を挙げたり」
和歌。やまとうた。
*明衡往来〔11C中か〕中本「聊慰愁緒耳。就中倭語雖無其能、稟外戚之風所嗜思給也」
漢語や外来語など外来の語に対して、日本語本来のものと考えられる語。「ひと(人)」「われ(我)」「ある(有)」「ゆたか(豊)」など。固有の日本語。やまとことば。
*神皇正統記〔1339~43〕上・神武「人皇第一代、神日本磐余彦天皇と申。後に神武となづけたてまつる。〈略〉第二代、綏靖天皇〈これより和語の尊号をばのせず〉神武第二の御子」
おお‐やまと[おほ:] 【大和・大倭・大日本】
(「おお」は接頭語)
〔一〕大和国(やまとのくに=奈良県)全体の称。
*二十巻本和名抄〔934頃〕五「畿内国 〈略〉大和〈於保夜万止〉」
〔二〕日本国の異称。
*万葉〔8C後〕三・四七五「わが王(おほきみ) 皇子(みこ)の命(みこと) 万代(よろづよ)に 食(め)したまはまし 大日本(おほやまと) 久邇(くに)の京は〈大伴家持〉」
やわらげ[やはらげ] 【和】
〔名〕
(動詞「やわらげる(和)」の連用形の名詞化)
むずかしいものを、平易にすること。やさしく説明すること。
*天草本平家・伊曾保言葉の和げ〔1593〕「コノ ヘイケモノガタリト、エソポノ ファブラスノ ウチノ フンベツ シニクキ コトバノ yauarague (ヤワラゲ)」
*羅葡日辞書〔1595〕「Definitio 〈略〉コトノ yauarague (ヤワラゲ)、または、ココロ」
*日葡辞書〔1603~04〕「Yauarague (ヤワラゲ)〈訳〉説明」
http://esopo.fc2web.com/Esopo/esopo.html
天草版平家物語・エソポのハブラス 言葉の和らげ 01-08 - 伊曽保物語
esopo.fc2web.com/Esopo/esopo/yauarague01_08.html
底本は、「(大英図書館蔵 福島邦道解説) 天草版 伊曾保物語 勉誠社文庫 3 」を用いた。 (現在の版は、イソポ物語 となっている。) 翻字は、『天草本平家物語』亀井高孝 翻字 岩波書店 の該当箇所から採った。
日本語史を日本語の呼称とともに考えてみる。和語であれば倭の時代から和になる表記は混淆して用いていたようである。漢文またその文体には和語が見えないならば、表記によるところであろう。この和を、やまと と訓じて、大和を、おほやまと とする。日本を、やまと 大日本を おほやまと と訓じていたので、やまとことば は、日本語を指していてもおかしくはない。大和言葉はまた、和歌をもさしていたので、日本語史についていうなら、やまと おおほやまと の意味では、倭語史、和語史、大和語史ともなり得ない。日本語史に対してその始まりは、いまの通用する国語を用いて前史に国語史を置くことになる。
倭語が日本語になるとすれば、大和朝廷の和語または倭語をとらえ、その経緯において、漢語との対比ではない国語と見える時期を、もうひとつに、和らげに意識する時代となる。日本語史の前史を、日本語史の歴史的事象の成因となった、それ以前の歴史と考えるか、日本語史の時代の前半の歴史を、国語史としてみるか、漢語とポルトガル語と、日本語への影響にある。
外国語に対して、日本の国語である日本語。その語彙には漢語などの外来の要素も含まれる。
*霊異記〔810~824〕上・二八「吾が聖朝の人、道照法師〈略〉新羅に至り、其の山中に有りて法花経を講ず。時に虎衆の中に人有り、倭語を以て問を挙げたり」
和歌。やまとうた。
*明衡往来〔11C中か〕中本「聊慰愁緒耳。就中倭語雖無其能、稟外戚之風所嗜思給也」
漢語や外来語など外来の語に対して、日本語本来のものと考えられる語。「ひと(人)」「われ(我)」「ある(有)」「ゆたか(豊)」など。固有の日本語。やまとことば。
*神皇正統記〔1339~43〕上・神武「人皇第一代、神日本磐余彦天皇と申。後に神武となづけたてまつる。〈略〉第二代、綏靖天皇〈これより和語の尊号をばのせず〉神武第二の御子」
おお‐やまと[おほ:] 【大和・大倭・大日本】
(「おお」は接頭語)
〔一〕大和国(やまとのくに=奈良県)全体の称。
*二十巻本和名抄〔934頃〕五「畿内国 〈略〉大和〈於保夜万止〉」
〔二〕日本国の異称。
*万葉〔8C後〕三・四七五「わが王(おほきみ) 皇子(みこ)の命(みこと) 万代(よろづよ)に 食(め)したまはまし 大日本(おほやまと) 久邇(くに)の京は〈大伴家持〉」
やわらげ[やはらげ] 【和】
〔名〕
(動詞「やわらげる(和)」の連用形の名詞化)
むずかしいものを、平易にすること。やさしく説明すること。
*天草本平家・伊曾保言葉の和げ〔1593〕「コノ ヘイケモノガタリト、エソポノ ファブラスノ ウチノ フンベツ シニクキ コトバノ yauarague (ヤワラゲ)」
*羅葡日辞書〔1595〕「Definitio 〈略〉コトノ yauarague (ヤワラゲ)、または、ココロ」
*日葡辞書〔1603~04〕「Yauarague (ヤワラゲ)〈訳〉説明」
http://esopo.fc2web.com/Esopo/esopo.html
天草版平家物語・エソポのハブラス 言葉の和らげ 01-08 - 伊曽保物語
esopo.fc2web.com/Esopo/esopo/yauarague01_08.html
底本は、「(大英図書館蔵 福島邦道解説) 天草版 伊曾保物語 勉誠社文庫 3 」を用いた。 (現在の版は、イソポ物語 となっている。) 翻字は、『天草本平家物語』亀井高孝 翻字 岩波書店 の該当箇所から採った。