倫理は倫理学を基にする。道徳は道徳学を持つか、必ずしもそうではない。道徳は道徳であって、道徳論を成立するも、さまざまな場合による。倫理学は道徳哲学を意味する。>倫理学(希: Ηθική、羅: ethica、英: ethics)あるいは道徳哲学(英: moral philosophy)とは一般に行動の規範となる物事の道徳的な評価を理解しようとする哲学の研究領域の一つである。ウイキペディアより 倫理性は道徳性と異なるか。ともに人間の行為を対象として、その規範をとらえようとする。日本倫理思想を、
>日本倫理思想は日本に古くからある倫理的な思想・哲学を研究する倫理学の分野である。考察の対象は仏教思想、儒教(朱子学・陽明学・古学)思想、神道思想、国学から物語や民話にまで至る。日本倫理思想の源流は和辻哲郎による和辻倫理学である。新しい分野だけにこの学問のカバーする範囲はやたらに広い。
また、脳死問題など新しい倫理問題において日本人固有の倫理的判断や価値観が問題となる場面では応用倫理学とオーバーラップする部分もある。同上
とみると、日本人の倫理性は思想におよぶ。
日本倫理思想
日本倫理思想史(一) - 岩波書店
www.iwanami.co.jp/.BOOKS/38/4/3811050.html
倫理学』と並ぶ和辻哲郎の主著.古代から近代に至る倫理思想の展開とそれを支える社会構造の変遷を,宗教から文学まで視野に収めた壮大なスケールで描き出す試みは,日本思想の通史としていまだ唯一のもの.戦後まもない1952年に刊行された本書は, ...
楽天ブックス: 日本倫理思想史増補改訂版 - 佐藤正英 - 4130120603 : 本
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日本倫理思想史増補改訂版
佐藤正英
2012年04月
著者/編集
出版社: 東京大学出版会
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
古代から現代までー『古事記』から吉本隆明まで展望する。いま人が生きるための知恵の在りかたを問う。叙述を全面的見直し、注を追加、さらに昭和期を中心に増補した。何を信じ、何を願ってきたか。日本人の心を描く決定版通史。
【目次】(「BOOK」データベースより)
序論 対象と方法/第1章 神をめぐる思想(“もの”神の顕現ー原初神道の第一次神話/“たま”神の発生ー神代神話/天皇をめぐる物語と和歌)/第2章 仏法をめぐる思想(仏法の伝来/仏法の土着/仏法の成熟/原郷世界と栄華)/第3章 天をめぐる思想(武士の思想/儒学の思想/国学の思想/庶民の思想/幕末の思想)/第4章 文明をめぐる思想(文明開化/国家の核としての天皇の創出/キリスト教の解禁/さまざまな潮流/回折する理知/『善の研究』の成立/大正デモクラシー/和辻倫理学ー間柄の理法/土俗への根ざし/敗戦)
曖昧さ回避のためのページ
>
道徳 - 社会慣習として成立している行為規範。
倫理学 - 善・規範・道徳的言明といったものについて研究する学問。
日本の高等学校における科目名。また、日本の大学入試における科目名 - 公民という教科は政治・経済、倫理、現代社会の3科目からなるが、倫理はそのひとつ(大学入試センター試験では「倫理、政治・経済」という科目も存在する)。
人として守り行うべき道。善悪・正邪の判断において普遍的な規準となるもの。道徳。モラル。「―にもとる行為」「―観」「政治―」
http://dictionary.goo.ne.jp/jn/233447/example/m0u/
>
りん‐り【倫理】 例文一覧 30件
・・・大学教授某博士は倫理学上の見地から、蟹の猿を殺したのは復讐の意志に出たものである、復讐は善と称し難いと云った。それから社会主義の某首領は蟹は柿とか握り飯とか云う私有財産を難有がっていたから、臼や蜂や卵なども反動的思想を持っていたのであろう、・・・
<芥川竜之介「猿蟹合戦」 青空文庫>
・・・年齢は三十五歳、職業は東京帝国文科大学哲学科卒業後、引続き今日まで、私立――大学の倫理及英語の教師を致して居ります。妻ふさ子は、丁度四年以前に、私と結婚致しました。当年二十七歳になりますが、子供はまだ一人もございません。ここで私が特に閣下の・・・
<芥川竜之介「二つの手紙」 青空文庫>
・・・「また、今時に珍しい、学校でも、倫理、道徳、修身の方を御研究もなされば、お教えもなさいます、学士は至っての御孝心。かねて評判な方で、嫁御をいたわる傍の目には、ちと弱すぎると思うほどなのでございますから、困じ果てて、何とも申しわけも面目も・・・
<泉鏡花「眉かくしの霊」 青空文庫>
・・・文学が閑余の遊戯として見られていたばかりでなく、倫理も哲学も学者という小団体の書斎に於ける遊戯であった。科学の如きは学校教育の一課目とのみ見られていた。真に少数なる読書階級の一角が政治論に触るゝ外は一般社会は総ての思想と全く没交渉であって、・・・
<内田魯庵「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」 青空文庫>
・・・今時の聖書研究は大抵は来世抜きの研究である、所謂現代人が嫌う者にして来世問題の如きはない、殊に来世に於ける神の裁判と聞ては彼等が忌み嫌って止まざる所である、故に彼等は聖書を解釈するに方て成るべく之れを倫理的に解釈せんとする、来世に関する聖書・・・
<内村鑑三「聖書の読方」 青空文庫>
・・・ 其れを、今にも実現し得られるなら、倫理や哲学上の知識は、其の時から、必要ではないのであります。もう、一度昔のある時代に於けるような感激がこの地上に湧き来ったなら、其れで私達は、満足しなければならない。平等で、自由で、親睦で、虚偽という・・・<小川未明「草木の暗示から」 青空文庫>
・・・ 概念的な教育、束縛的な倫理観が、健全な真実な教育上にどれ程禍しているか分らない。又この頃自由教育云々に就てある知事とある教育者とが争った事があるが、今日に至ってまだ学校教育を政治の上から云為せんとするそれらの人が、どれだけ人間性の発達・・・<小川未明「人間性の深奥に立って」 青空文庫>
・・・ 殊に自分は児童の教員、又た倫理を受持っているので常に忠孝仁義を説かねばならず、善悪邪正を説かねばならず、言行一致が大切じゃと真面目な顔で説かねばならず、その度毎に怪しく心が騒ぐ。生徒の質問の中で、折り折り胸を刺れるようなのがある。中に・・・<国木田独歩「酒中日記」 青空文庫>
一 倫理的な問いの先行 何が真であるかいつわりであるかの意識、何が美しいか、醜いかの感覚の鈍感な者があったら誰しも低級な人間と評するだろう。何が善いか、悪いか、正不正の感覚と興味との稀薄なことが人間として低・・・<倉田百三「学生と教養」 青空文庫>
・・・ 二 倫理的憧憬と恋愛 性の目ざめと同時に善への憧憬が呼びさまされるということは何という不思議な、そしてたのもしいことであろう。これが青年の健康性の標徴だ。ヒューマニティーの根源だ。この二つのものは同時に起こるだけで・・・
<倉田百三「学生と生活」 青空文庫>
・・・医者は生と、精神の課題に、弁護士は倫理と社会制度の問題に、軍人は民族と国際協同の問題に接触せずにはおられない。その最も適切の例証は、最近に結成せられた「産業技術連盟」の声明書である。それは純粋に専門的な技術家のみの結社であるが、技術は社会的・・・
<倉田百三「学生と読書」 青空文庫>
所謂社会主義の世の中になるのは、それは当り前の事と思わなければならぬ。民主々義とは云っても、それは社会民主々義の事であって、昔の思想と違っている事を知らなければならぬ。倫理に於いても、新しい形の個人主義の擡頭しているこの現・・・
<太宰治「新しい形の個人主義」 青空文庫>
・・・これは、おれの最後のエゴイズムだ。倫理は、おれは、こらえることができる。感覚が、たまらぬのだ。とてもがまんができぬのだ。 笑いの波がわっと館内にひろがった。嘉七は、かず枝に目くばせして外に出た。「水上に行こう、ね。」その前のとしのひ・・・
<太宰治「姥捨」 青空文庫>
・・・私のいま夢想する境涯は、フランスのモラリストたちの感覚を基調とし、その倫理の儀表を天皇に置き、我等の生活は自給自足のアナキズム風の桃源である。
<太宰治「苦悩の年鑑」 青空文庫>
・・・ ある哲学者の著書の中に、小説戯曲は倫理的の実験のようなものだという意味の事があった。実際たとえば理論物理学で常に使用さるるいわゆる思考実験と称するものはある意味において全く物理学的の小説である。かつて何人も実験せずまた将来も実現する事・・・<寺田寅彦「科学者と芸術家」 青空文庫>
・・・ こういう芸術上のグロテスクな傾向が、循環的に吾々の倫理思想や人生観に与える反応はどんなものであろうか。これもその方面の人々の深く考えてみるべき問題の一つではあるまいか。 彫刻部に関する私の心像は空虚である。ただ意味のありそうな・・・
<寺田寅彦「帝展を見ざるの記」 青空文庫>
・・・しかし中学校では既に倫理道徳などという事すら教えているではないか。生徒の老成後の倫理道徳観が中学校で教わった所と如何ほど懸隔しても仕方がない。やはり中学校の倫理は無益ではない。自分は科学というものの方法や価値や限界などを多少でも暗示する事が・・・<寺田寅彦「方則について」 青空文庫>
・・・ただ僅かに倫理と芸術と両立せないで、どちらかを捨てねばならぬ場合がないではありません。例えば私がこの机を推している、何時しかこの机と共に落ちたとします。この落ちたという事実に対して、諸君は必ず笑われるに違いない。しかし倫理的に申したならば、・・・
<夏目漱石「教育と文芸」 青空文庫>
・・・道学者は倫理的の立場から始終奢侈を戒しめている。結構には違ないが自然の大勢に反した訓戒であるからいつでも駄目に終るという事は昔から今日まで人間がどのくらい贅沢になったか考えて見れば分る話である。かく積極消極両方面の競争が激しくなるのが開化の・・・
<夏目漱石「現代日本の開化」 青空文庫>
・・・どうかしてこの込み入った画の配合や人間の立ち廻りを鷲抓みに引っくるめてその特色を最も簡明な形式で頭へ入れたいについてはすでに幼稚な頭の中に幾分でも髣髴できる倫理上の二大性質――善か悪かを取りきめてこの錯雑した光景を締め括りたい希望からこうい・・・
<夏目漱石「中味と形式」 青空文庫>
・・・形而上学者としてのニイチェ、倫理学者としてのニイチェ、文明批判家としてのニイチェには、僕として追跡することが出来なかつた。換言すれば、僕は権力主義者でもなく、英雄主義者でもなく、況んやツァラトストラの弟子でもない。僕は「心理学」と「文学」だ・・・
<萩原朔太郎「ニイチェに就いての雑感」 青空文庫>
・・・然るに、徳教書編纂の事は、先年も文部省に発起して、すでに故森大臣の時に倫理教科書を草し、その草案を福沢先生に示して批評を乞いしに、その節、先生より大臣に贈りたる書翰ならびに評論一編あり。久しく世人の知らざるところなりしかども、今日また徳教論・・・
<福沢諭吉「読倫理教科書」 青空文庫>
・・・ある一派の倫理学者の如く行為の結果を以て善悪の標準とする者はお七を大悪人とも呼ぶであろう。この、無垢清浄、玉のようなお七を大悪人と呼ぶ馬鹿もあるであろう。けれどお七の心の中には賢もなく愚もなく善もなく悪もなく人間もなく世間もなく天地万象もな・・・
<正岡子規「恋」 青空文庫>
・・・勿論今日の人間社会で善には善報ありというような事は全く嘘ではないので、それも因果の一部には相違ないけれども、宇宙に行われて居る因果の道理は単に倫理の上を支配するような簡単なるものではないので、一方には倫理上から或人に幸を与えるような因果の筋・・・
<正岡子規「病牀苦語」 青空文庫>
・・・ 真実を儚かない態度とか、同情、愛というような私たち人間の感情を、古風な学問の範疇では道徳、倫理の枠に入れて考えて、科学とそういうものとは別々に云いもし、教えもしていた。仮に二つのものを一つに結び合わして考えたい心持のひとは、二つに分け・・・
<宮本百合子「科学の精神を」 青空文庫>
・・・ 従って、既成の倫理学の概念や習俗の力は、いざという時、どれ程の力を持っているのかは疑います。これ等はただ、その人の内奥にある人格的な天質がそれ自身で見出すべき道に暗示を与え、自身の判断を待つ場合、思考の内容を豊富にするという点にのみ価・・・
<宮本百合子「偶感一語」 青空文庫>
・・・その無いものを有るかのように考えなくては、倫理は成り立たない。理想と云っているものはそれだ。法律の自由意志と云うものの存在しないのも、疾っくに分かっている。しかし自由意志があるかのように考えなくては、刑法が全部無意味になる。どんな哲学者も、・・・
<森鴎外「かのように」 青空文庫>
・・・そしてそれが倫理を変化させる。形而上学を変化させる。Schopenhauer は衝動哲学と云っても好い。系統家の Hartmann や Wundt があれから出たように、Aphorismen で書く Nietzsche もあれから出た。発展・・・
<森鴎外「沈黙の塔」 青空文庫>
・・・こうもりが光を恐れるように倫理的な苦しみを恐れる。それゆえに、「一生を旅行で暮らすような」彼は、「生の流転をはかなむ心持ちに纏絡する煩わしい感情から脱したい、乃至時々それから避けて休みたい、ある土台を得たい」という心を起こすのである。そうし・・・
<和辻哲郎「享楽人」 青空文庫>
・・・五 自然をただ醜悪に観察して喜んでいた作家たちが、近ごろ何となく認識論的な、あるいは倫理学的な思想を、その作品中に混ずるに至ったことは、新しい時代が彼らに及ぼした影響としてかなり我々の興味をひく。しかし彼らは、彼ら自身の思索・・・
<和辻哲郎「「自然」を深めよ」 青空文庫>
>日本倫理思想は日本に古くからある倫理的な思想・哲学を研究する倫理学の分野である。考察の対象は仏教思想、儒教(朱子学・陽明学・古学)思想、神道思想、国学から物語や民話にまで至る。日本倫理思想の源流は和辻哲郎による和辻倫理学である。新しい分野だけにこの学問のカバーする範囲はやたらに広い。
また、脳死問題など新しい倫理問題において日本人固有の倫理的判断や価値観が問題となる場面では応用倫理学とオーバーラップする部分もある。同上
とみると、日本人の倫理性は思想におよぶ。
日本倫理思想
日本倫理思想史(一) - 岩波書店
www.iwanami.co.jp/.BOOKS/38/4/3811050.html
倫理学』と並ぶ和辻哲郎の主著.古代から近代に至る倫理思想の展開とそれを支える社会構造の変遷を,宗教から文学まで視野に収めた壮大なスケールで描き出す試みは,日本思想の通史としていまだ唯一のもの.戦後まもない1952年に刊行された本書は, ...
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日本倫理思想史増補改訂版
佐藤正英
2012年04月
著者/編集
出版社: 東京大学出版会
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
古代から現代までー『古事記』から吉本隆明まで展望する。いま人が生きるための知恵の在りかたを問う。叙述を全面的見直し、注を追加、さらに昭和期を中心に増補した。何を信じ、何を願ってきたか。日本人の心を描く決定版通史。
【目次】(「BOOK」データベースより)
序論 対象と方法/第1章 神をめぐる思想(“もの”神の顕現ー原初神道の第一次神話/“たま”神の発生ー神代神話/天皇をめぐる物語と和歌)/第2章 仏法をめぐる思想(仏法の伝来/仏法の土着/仏法の成熟/原郷世界と栄華)/第3章 天をめぐる思想(武士の思想/儒学の思想/国学の思想/庶民の思想/幕末の思想)/第4章 文明をめぐる思想(文明開化/国家の核としての天皇の創出/キリスト教の解禁/さまざまな潮流/回折する理知/『善の研究』の成立/大正デモクラシー/和辻倫理学ー間柄の理法/土俗への根ざし/敗戦)
曖昧さ回避のためのページ
>
道徳 - 社会慣習として成立している行為規範。
倫理学 - 善・規範・道徳的言明といったものについて研究する学問。
日本の高等学校における科目名。また、日本の大学入試における科目名 - 公民という教科は政治・経済、倫理、現代社会の3科目からなるが、倫理はそのひとつ(大学入試センター試験では「倫理、政治・経済」という科目も存在する)。
人として守り行うべき道。善悪・正邪の判断において普遍的な規準となるもの。道徳。モラル。「―にもとる行為」「―観」「政治―」
http://dictionary.goo.ne.jp/jn/233447/example/m0u/
>
りん‐り【倫理】 例文一覧 30件
・・・大学教授某博士は倫理学上の見地から、蟹の猿を殺したのは復讐の意志に出たものである、復讐は善と称し難いと云った。それから社会主義の某首領は蟹は柿とか握り飯とか云う私有財産を難有がっていたから、臼や蜂や卵なども反動的思想を持っていたのであろう、・・・
<芥川竜之介「猿蟹合戦」 青空文庫>
・・・年齢は三十五歳、職業は東京帝国文科大学哲学科卒業後、引続き今日まで、私立――大学の倫理及英語の教師を致して居ります。妻ふさ子は、丁度四年以前に、私と結婚致しました。当年二十七歳になりますが、子供はまだ一人もございません。ここで私が特に閣下の・・・
<芥川竜之介「二つの手紙」 青空文庫>
・・・「また、今時に珍しい、学校でも、倫理、道徳、修身の方を御研究もなされば、お教えもなさいます、学士は至っての御孝心。かねて評判な方で、嫁御をいたわる傍の目には、ちと弱すぎると思うほどなのでございますから、困じ果てて、何とも申しわけも面目も・・・
<泉鏡花「眉かくしの霊」 青空文庫>
・・・文学が閑余の遊戯として見られていたばかりでなく、倫理も哲学も学者という小団体の書斎に於ける遊戯であった。科学の如きは学校教育の一課目とのみ見られていた。真に少数なる読書階級の一角が政治論に触るゝ外は一般社会は総ての思想と全く没交渉であって、・・・
<内田魯庵「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」 青空文庫>
・・・今時の聖書研究は大抵は来世抜きの研究である、所謂現代人が嫌う者にして来世問題の如きはない、殊に来世に於ける神の裁判と聞ては彼等が忌み嫌って止まざる所である、故に彼等は聖書を解釈するに方て成るべく之れを倫理的に解釈せんとする、来世に関する聖書・・・
<内村鑑三「聖書の読方」 青空文庫>
・・・ 其れを、今にも実現し得られるなら、倫理や哲学上の知識は、其の時から、必要ではないのであります。もう、一度昔のある時代に於けるような感激がこの地上に湧き来ったなら、其れで私達は、満足しなければならない。平等で、自由で、親睦で、虚偽という・・・<小川未明「草木の暗示から」 青空文庫>
・・・ 概念的な教育、束縛的な倫理観が、健全な真実な教育上にどれ程禍しているか分らない。又この頃自由教育云々に就てある知事とある教育者とが争った事があるが、今日に至ってまだ学校教育を政治の上から云為せんとするそれらの人が、どれだけ人間性の発達・・・<小川未明「人間性の深奥に立って」 青空文庫>
・・・ 殊に自分は児童の教員、又た倫理を受持っているので常に忠孝仁義を説かねばならず、善悪邪正を説かねばならず、言行一致が大切じゃと真面目な顔で説かねばならず、その度毎に怪しく心が騒ぐ。生徒の質問の中で、折り折り胸を刺れるようなのがある。中に・・・<国木田独歩「酒中日記」 青空文庫>
一 倫理的な問いの先行 何が真であるかいつわりであるかの意識、何が美しいか、醜いかの感覚の鈍感な者があったら誰しも低級な人間と評するだろう。何が善いか、悪いか、正不正の感覚と興味との稀薄なことが人間として低・・・<倉田百三「学生と教養」 青空文庫>
・・・ 二 倫理的憧憬と恋愛 性の目ざめと同時に善への憧憬が呼びさまされるということは何という不思議な、そしてたのもしいことであろう。これが青年の健康性の標徴だ。ヒューマニティーの根源だ。この二つのものは同時に起こるだけで・・・
<倉田百三「学生と生活」 青空文庫>
・・・医者は生と、精神の課題に、弁護士は倫理と社会制度の問題に、軍人は民族と国際協同の問題に接触せずにはおられない。その最も適切の例証は、最近に結成せられた「産業技術連盟」の声明書である。それは純粋に専門的な技術家のみの結社であるが、技術は社会的・・・
<倉田百三「学生と読書」 青空文庫>
所謂社会主義の世の中になるのは、それは当り前の事と思わなければならぬ。民主々義とは云っても、それは社会民主々義の事であって、昔の思想と違っている事を知らなければならぬ。倫理に於いても、新しい形の個人主義の擡頭しているこの現・・・
<太宰治「新しい形の個人主義」 青空文庫>
・・・これは、おれの最後のエゴイズムだ。倫理は、おれは、こらえることができる。感覚が、たまらぬのだ。とてもがまんができぬのだ。 笑いの波がわっと館内にひろがった。嘉七は、かず枝に目くばせして外に出た。「水上に行こう、ね。」その前のとしのひ・・・
<太宰治「姥捨」 青空文庫>
・・・私のいま夢想する境涯は、フランスのモラリストたちの感覚を基調とし、その倫理の儀表を天皇に置き、我等の生活は自給自足のアナキズム風の桃源である。
<太宰治「苦悩の年鑑」 青空文庫>
・・・ ある哲学者の著書の中に、小説戯曲は倫理的の実験のようなものだという意味の事があった。実際たとえば理論物理学で常に使用さるるいわゆる思考実験と称するものはある意味において全く物理学的の小説である。かつて何人も実験せずまた将来も実現する事・・・<寺田寅彦「科学者と芸術家」 青空文庫>
・・・ こういう芸術上のグロテスクな傾向が、循環的に吾々の倫理思想や人生観に与える反応はどんなものであろうか。これもその方面の人々の深く考えてみるべき問題の一つではあるまいか。 彫刻部に関する私の心像は空虚である。ただ意味のありそうな・・・
<寺田寅彦「帝展を見ざるの記」 青空文庫>
・・・しかし中学校では既に倫理道徳などという事すら教えているではないか。生徒の老成後の倫理道徳観が中学校で教わった所と如何ほど懸隔しても仕方がない。やはり中学校の倫理は無益ではない。自分は科学というものの方法や価値や限界などを多少でも暗示する事が・・・<寺田寅彦「方則について」 青空文庫>
・・・ただ僅かに倫理と芸術と両立せないで、どちらかを捨てねばならぬ場合がないではありません。例えば私がこの机を推している、何時しかこの机と共に落ちたとします。この落ちたという事実に対して、諸君は必ず笑われるに違いない。しかし倫理的に申したならば、・・・
<夏目漱石「教育と文芸」 青空文庫>
・・・道学者は倫理的の立場から始終奢侈を戒しめている。結構には違ないが自然の大勢に反した訓戒であるからいつでも駄目に終るという事は昔から今日まで人間がどのくらい贅沢になったか考えて見れば分る話である。かく積極消極両方面の競争が激しくなるのが開化の・・・
<夏目漱石「現代日本の開化」 青空文庫>
・・・どうかしてこの込み入った画の配合や人間の立ち廻りを鷲抓みに引っくるめてその特色を最も簡明な形式で頭へ入れたいについてはすでに幼稚な頭の中に幾分でも髣髴できる倫理上の二大性質――善か悪かを取りきめてこの錯雑した光景を締め括りたい希望からこうい・・・
<夏目漱石「中味と形式」 青空文庫>
・・・形而上学者としてのニイチェ、倫理学者としてのニイチェ、文明批判家としてのニイチェには、僕として追跡することが出来なかつた。換言すれば、僕は権力主義者でもなく、英雄主義者でもなく、況んやツァラトストラの弟子でもない。僕は「心理学」と「文学」だ・・・
<萩原朔太郎「ニイチェに就いての雑感」 青空文庫>
・・・然るに、徳教書編纂の事は、先年も文部省に発起して、すでに故森大臣の時に倫理教科書を草し、その草案を福沢先生に示して批評を乞いしに、その節、先生より大臣に贈りたる書翰ならびに評論一編あり。久しく世人の知らざるところなりしかども、今日また徳教論・・・
<福沢諭吉「読倫理教科書」 青空文庫>
・・・ある一派の倫理学者の如く行為の結果を以て善悪の標準とする者はお七を大悪人とも呼ぶであろう。この、無垢清浄、玉のようなお七を大悪人と呼ぶ馬鹿もあるであろう。けれどお七の心の中には賢もなく愚もなく善もなく悪もなく人間もなく世間もなく天地万象もな・・・
<正岡子規「恋」 青空文庫>
・・・勿論今日の人間社会で善には善報ありというような事は全く嘘ではないので、それも因果の一部には相違ないけれども、宇宙に行われて居る因果の道理は単に倫理の上を支配するような簡単なるものではないので、一方には倫理上から或人に幸を与えるような因果の筋・・・
<正岡子規「病牀苦語」 青空文庫>
・・・ 真実を儚かない態度とか、同情、愛というような私たち人間の感情を、古風な学問の範疇では道徳、倫理の枠に入れて考えて、科学とそういうものとは別々に云いもし、教えもしていた。仮に二つのものを一つに結び合わして考えたい心持のひとは、二つに分け・・・
<宮本百合子「科学の精神を」 青空文庫>
・・・ 従って、既成の倫理学の概念や習俗の力は、いざという時、どれ程の力を持っているのかは疑います。これ等はただ、その人の内奥にある人格的な天質がそれ自身で見出すべき道に暗示を与え、自身の判断を待つ場合、思考の内容を豊富にするという点にのみ価・・・
<宮本百合子「偶感一語」 青空文庫>
・・・その無いものを有るかのように考えなくては、倫理は成り立たない。理想と云っているものはそれだ。法律の自由意志と云うものの存在しないのも、疾っくに分かっている。しかし自由意志があるかのように考えなくては、刑法が全部無意味になる。どんな哲学者も、・・・
<森鴎外「かのように」 青空文庫>
・・・そしてそれが倫理を変化させる。形而上学を変化させる。Schopenhauer は衝動哲学と云っても好い。系統家の Hartmann や Wundt があれから出たように、Aphorismen で書く Nietzsche もあれから出た。発展・・・
<森鴎外「沈黙の塔」 青空文庫>
・・・こうもりが光を恐れるように倫理的な苦しみを恐れる。それゆえに、「一生を旅行で暮らすような」彼は、「生の流転をはかなむ心持ちに纏絡する煩わしい感情から脱したい、乃至時々それから避けて休みたい、ある土台を得たい」という心を起こすのである。そうし・・・
<和辻哲郎「享楽人」 青空文庫>
・・・五 自然をただ醜悪に観察して喜んでいた作家たちが、近ごろ何となく認識論的な、あるいは倫理学的な思想を、その作品中に混ずるに至ったことは、新しい時代が彼らに及ぼした影響としてかなり我々の興味をひく。しかし彼らは、彼ら自身の思索・・・
<和辻哲郎「「自然」を深めよ」 青空文庫>