禅的哲学

禅的哲学は哲学であって禅ではない。禅的視座から哲学をしてみようという試みである。禅を真剣に極めんとする人には無用である。

「消費税上げるな」はワガママか?

2022-11-19 14:15:17 | 政治・社会
 ホリエモンこと堀江貴文さんが「消費税を下げろ」と言う人に対して次のように言ったらしい。

「消費税あげるな、富裕層が負担しろ、移民は嫌だ。中国怖いから防衛費は上げろ、予防とかしたくないけど病気になったら医療費は保険でカバーしろ、年金はちゃんとくれ、とかみんなワガママすぎるんだよな」yahooニュース
 
 「消費税を上げるな」という主張は本当にワガママだろうか? もともと税金というものは所得の再配分であるという考えに立つなら、消費税そのものが税金の趣旨に反しているという考えも成り立つ。堀江さんは若いから消費税が導入された経緯をたぶん御存じないのだろう。消費税が必要になったのは所得税と法人税の度重なる減税のせいであることを忘れてはならない。ちなみに昭和49年度の所得税の最高税率は75%で住民税と併せると93%もの高額負担となっていた。当時はまだ高度成長の途中だったので、個人も企業もその収入はかなりインフレ気味で年々重税感が増していた。だから減税そのものは免れないのだが、本来なら税率はそのままにしておいて税率テーブルの閾値をインフレ調整すれば良いところを、給与所得者の税負担軽減を理由に税率そのものを引き下げてしまったのだ。
 
 収入捕捉率の高い給与所得者を優遇したいなら、それなりの方法はいくらでもあると思うのだが、所得税率を引き下げることによって一番得をしたのは高額所得者である。消費税導入前にあるテレビの報道番組で、普段リベラルな意見を述べていた人が「消費税導入やむなし」と述べているのを見て驚いた。なんの事はないこの国の政策決定に参画している人のほとんどは高額所得者なのである。テレビで意見を述べているような人はほとんどが一般サラリーマンと比較すればはるかにリッチな人達であるということを思い知らされた。とにかく所得税率は度重なる減税でどんどん引き下げられていった、それとともに消費税率の引き上げが取りざたされることになった。将来的には消費税率が20%程度に上げられるのは当然視されているような事態である。
 
 堀江さんは「所得税率を高くすると金持ちが外国へ逃げていく」と言っている。私はそれでいいんじゃないのと思っている。金持ちの人は勝手にルクセンブルクでもバハマでも行って金満生活を謳歌していただければ結構。「貧しきを憂えず、等しからずを憂える。」という言葉もある。日本国内では貧乏人同士が仲良く暮らせばいいのだ。実際のところ資本の海外流出はやっかいな問題だが、対処する方法は必ずあると思う。
 
 消費税導入と歩調をそろえて法人減税も実施されていることを見逃すべきではない。(=>「法人税率の推移」) アベノミクスというのは結局法人税の軽減、財政の大盤振る舞いし、そして低金利で金融をだぶつかせれば経済活動は活発になる、という単純な発想に基づいている。税収の足りない分は国債発行で賄うから大丈夫、景気が良く成れば経済規模も大きくなり、インフレ効果で財政赤字も相対的に縮小するから問題ないという見込みだったのだろう。ところが、日本の人口は頭打ち、近視眼的な視点しか持たない日本の経営者は積極投資より利益確保の方に躍起となった。法人減税がその傾向に拍車をかけることになった。高度成長期には法人税率が高いこともあって、企業は利益を出して税金を取られるくらいなら設備投資したり社員にボーナスを出したりして、極力利益を圧縮しようしたものだが、最近の企業は設備投資や研究開発費をケチり、非正規社員を安くこき使って利益を上げることに血眼になっている。そのおかげで、企業は膨大な内部留保を蓄えることができた。その結果2021年度の企業の内部留保は、金融・保険業をのぞく全業種で500兆円を超えた。なんと国民一人当たりにすると、一人当たり400万円になる。まことに慶賀に堪えない。 

 しかし当たり前の話だが、企業がいくら内部留保を貯め込んでも日本の経済活動は活発にはならない。経営者の思考が内向きになっている間に日本は世界の趨勢から取り残されてしまった。かつて、半導体や液晶の技術は日本が世界の先端を走っていた。ところが、今や韓国や台湾の後塵を拝している。日本のサラリーマン経営者がちまちました利益確保に拘泥している間に、韓国や台湾の企業は研究開発や生産設備への大規模投資で世界市場を日本から奪い取ったのである。そういう観点から見れば、法人減税はすべきではなかった。むしろ法人税率を上げて、研究開発費や設備投資に対して経費一括計上などの税制優遇を検討すべきであったと思う。

 以上のような観点から、私は消費税の引き上げには断固反対である。消費税を上げるくらいなら所得税と法人税を上げるべきで、資産課税の強化を考えても良いと思う。

横浜公園から日本大通りを望む 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

朝令暮改のなにがいけないのか?

2022-10-23 21:33:33 | 政治・社会
【岸田首相は18日の衆院予算委員会で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る問題に言及。宗教法人法に基づく「質問権」を行使することについて、解散命令請求が認められる法令違反の要件として「民法の不法行為は入らない」という認識を示した。  しかし翌19日の参院予算委員会では、「民法の不法行為も入りうると整理した」と一夜にして答弁を一転。これにより野党から、〝朝令暮改にもほどがある〟と批判の声が上がった。 】   (以上、yahooニュースより引用)

 朝令暮改は言うまでもなく望ましいものではない。総理大臣の言っていることが一夜にして頃っと逆転すること等あっていいわけがない。しかし、「過ちては改むるに憚ること勿れ」という言葉もある。間違いを犯したならば、ためらわずに直ちに改めるべきである。問題は最初の発言の「民法の不法行為は入らない」が余りにもお粗末だったということにつきる。 
 
 宗教法人というのは税法上特別に優遇されている、つまり国家は宗教法人を支援している訳である。そうであるからには、宗教活動は人々の幸せに貢献するという前提がなければならない。それがどうだろう、旧統一教会の周りでは自己破産や家庭崩壊で不幸になった人の例が余りにも多すぎる。霊感商法をはじめ高額献金など民事訴訟で敗訴した例もおびただしい。そういう団体が国家から優遇される理由が一体どこにあるのか? 聞くところによると、恋愛結婚もいけないとされているらしい。結婚相手は協会が決めてくれるらしいが、日本国憲法には「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立する」と明記されている。憲法の趣旨に反するような組織を国家が支援しなければならない理由が一体どこにあるのか。

 誤解のないように注意しなくてはならない。宗教法人の解散命令というのは、決してその活動を強制的に停止させるということではない。税法上優遇されている宗教法人格を取り消すというだけのことである。権力の乱用はもちろん慎まなければならないが、むしろこのケースでは率直に言って解散命令請求を出すことに躊躇するその理由が見当たらない。そもそも最初の発言の「民法の不法行為は入らない」という認識がおかしいのだ。はじめからやる気のなさが見えているような気がしてならない。

 とりあえず、「民法の不法行為も入りうると整理した」と岸田総理は述べた。民法上の不法行為があったのは既に事実であるのだから、さっさと解散請求を出してもらいたい。この件に関して政府は今までに十分不作為の罪を犯してきたことを深く反省していただきたい。

称名寺 (横浜市金沢区)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

テロは絶対に許してはいけない‥‥

2022-09-27 06:50:24 | 政治・社会
 安倍銃撃事件が発生した時、「民主主義への挑戦」という言葉が飛び交った。事件直後には自民党の政治家は口々にその言葉を発していたように記憶している。彼らはこの事件をテロだと見做したのだろう。しかし、これはテロとは言えない。テロとはウィキペディアによれば次のように説明されている。

『日本大百科全書』によると、テロリズムとは「政治的目的を達成するために、暗殺、殺害、破壊、監禁や拉致による自由束縛など過酷な手段で、敵対する当事者、さらには無関係な一般市民や建造物などを攻撃し、攻撃の物理的な成果よりもそこで生ずる心理的威圧や恐怖心を通して、譲歩や抑圧などを図るもの」 

 山上被告を事件に駆り立てた動機はあくまで統一教会に対する個人的な怨恨であり、政治的意図はないのは明らかで、彼の行為をテロというのは当たらないように思う。しかし、この事件は教団と政治の関係を浮かび上がらせることによって、大きな政治的効果をもたらした。結果的に教団に天誅を加え、その政治的活動をかなり制約することになった。山上被告が自身の行為の影響についてどの程度意識していたかは不明だが、結果を考えれば、この事件は「テロ」的様相を帯びていることは間違いない。

 そのうえで、私自身がこの問題に関して「テロは絶対に許してはいけない」と自問自答すると、なにかきれいごとを言っているみたいな気がして後ろめたい感情が湧いてくるのである。なんだかんだ言っても、山上被告がこの事件を起こさなければ、旧統一教会もそれと持ちつ持たれつの政治家も何食わぬ顔でやり過ごしていたのではなかったか? 霊感商法であれほど社会を騒がした反社会的集団が政治家と結託しながら今も存続している、その事を世間に対してあからさまにした「功績」が山上被告にはあるのではないか、という思いが私の中で頭をもたげてくる。

 民主主義を標榜するなら「テロは絶対に許してはいけない」のである。それは間違いない。もしテロに対して一分の理を認めてしまえば、思いつめた人間はなにをやっても良いことになってしまう、結局はそういうところに行き着くだろう。それは民主主義とは対極の世界である。テロは絶対認めてはいけないし、そもそも人を殺すこと自体が許されるはずがない。そのことを頭では分かっていながら、山上被告の行為を全面的に否定しきれない自分の本音を払拭できないでいる。一体それはなぜだろう。

 それはやはり日本社会の現状が余りにもでたらめだからではなかろうか。この理不尽な反社会的集団を政治家が支えていたということ、またそのことに感づいていながら真相を追求した報道機関がなかったということ。権力への監視が緩めば官僚機構も腐敗する。日本の官僚は権力者の顔色ばかり窺っていて、命令されずとも公文書の改竄までしてしまうという「忖度文化」がすっかり根付いてしまった。もはや日本は民主主義国とは言えないほどの体たらくである。いつの間にか日本は先進国の中で報道の自由度はずば抜けた最下位(世界全体では71位)になっているのに、国民の大半がそのことを自覚できないでいる。

 もし、今回の事件で報道機関が覚醒し政治の暗部があぶりだされて、日本の政治が少しでも改善されるならば、山上被告はある意味英雄である。殺人を称揚してはいけないのは百も承知だが、私はやむに已まれぬ彼の憤りにある程度共感せざるを得ないのである。それはやはり日本の現状がでたらめすぎるからだと考えざるを得ない。「何があろうとも人を殺めてはいけない」と彼に対して正面から堂々と言える、日本がそんな社会であって欲しい。


信州・小布施の栗ケ丘小学校 (記事内容とは何の関係もありません。)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

統一教会と日本の政治の闇

2022-09-19 16:34:57 | 政治・社会
 自民党の旧統一教会との関係の「自主点検リスト」が物議をかもしているが、問題となっていることのポイントがずれているような気がしてならない。 茂木幹事長によれば、接点があった議員の9割近くが、相手が教団と関係しているとの認識がなかったらしい。「社会的な問題に対する我々の認識が不足していたのだろう」などと空とぼけたことを述べている。そもそも社会的な問題に対する認識が欠けているような人は政治家になるべきではない。そんなことは当たり前の話ではないか。

 重要なのは、旧統一教会のような組織に対して政治家としてどのような態度で臨むべきかということなのだ。1980年代から90年代にかけて霊感商法であれほど話題になった組織がなぜ今も生き残っているのかということが問題にされなければならないのではなかろうか。「旧統一教会の関連団体だとは知らなかったんですぅ。」で済まされる話ではない。
 
 宗教団体は政治家にとってはもろ刃の刃である。味方にすれば選挙の際には草の根として強力にバックアップしてくれるが、逆に、敵に回せば悪い風評を流される。だから、関連団体の集会に顔を出してリップサービスをするということはある程度理解はできる。しかし、多くの人々を塗炭の苦しみに陥れた旧統一教会のような組織を放置しておくだけではなく、政治的力によってその存続に手を貸した疑いがあるということが一番の問題点なのだ。

 1995年に麻原彰晃が逮捕されオウム真理教事件に一区切りついた頃、有田芳生氏は警察庁と警視庁の幹部から、統一教会についてレクチャーして欲しいと依頼があった。その際、レクチャーを受けたメンバーについては秘密にするという約束で、統一教会の現状や霊感商法、朝日新聞を襲撃した赤報隊に関する疑惑などについて1時間ほど説明したらしい。しかし、その後統一教会に対する捜査に動きはなかった。そして10年後の2005年に、レクチャーを受けた幹部と食事をした際に、有田氏が 「なぜ(統一教会をやらなかったの)か」と聞いたところ、「政治の力だ」という答が返ってきたという。

 安倍銃撃事件が勃発した時の国家公安委員長であった二之湯智氏は、2018年に「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の関連団体のイベントで、京都府実行委員長を務めたことが明らかになっている。本人によれば旧統一教会の関連団体とは知らなかったということだが、そういうのんきな人が警察組織を所管する国家公安委員長に任命される日本の政治のユルサは如何なものか。

 二之湯氏はこうも語っている。「警察としては、違法行為があれば法と証拠に基づいて適切に対処していかなければならないが、私が申し上げた(2010年)以降はそういうことがない。被害届があれば別だが、警察として特別、動きはないということです」(だから当該の組織が統一教会の関連団体とは分からなかった、と言いたいらしい。)
ところが、その発言を受けて警察庁が、あわてて2010年を最後に「検挙がない」と訂正した。実際には被害届はその後もあったのである。

以下はyahooニュースから引用する。
【 旧統一教会による霊感商法被害の根絶や、被害者の救済を目的に活動している「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(全国弁連)の集計では、2010年から2021年の12年間で、確認できた被害金額は138億円、相談件数は2875件にのぼる。ところが、この期間中、「検挙」はなかったわけだ。 「2005年から2010年にかけて、警察は、霊感商法による販売行為や献金勧誘に絡む物品販売について検挙し、13件で30人以上の旧統一教会信者が摘発され、逮捕・勾留されました。2009年の『新世事件』では、東京の統一教会信者2名が執行猶予つき懲役刑の判決を受けています。それが2010年以降は、一度も検挙されなくなってしまったわけです」(社会部記者)  

 相談件数は2875件にものぼっているのに1件も検挙がない。この事実をあなたはどう受け止めるだろうか? 
 
  2007年8月に安倍さんが複痛で第一次安倍内閣を放り出した時、誰もが安倍さんは総理大臣としては終わった人だと思ったはずだ。ところが約5年後の2012年12月に再び首相に返り咲くことが出来た。その力の源泉はやはり日本会議と勝共連合の草の根支持ではないかと私は思う。安倍さんの主張は日本会議と勝共連合の方針と一致しているし、SNSの中でも安倍さん支持の連中のコメントはどれもこれも論法がよく似ている。日本会議や勝共連合に感化された人々が草の根的にアンチ・リベラルな政治体制を支えているような気がしてならないのである。

煙樹ケ浜 (和歌山県 美浜町)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロシア 虚偽報道禁止法案を可決 - 空しい言葉の持つ力について

2022-03-09 07:07:06 | 政治・社会
 言葉はいい加減なものである。いい加減だが力を持つのでやっかいなものでもある。言葉は時には論理と一体であるかのごとく振舞うが、実のところ論理に言葉を矯正する力はない。言葉は恣意的に運用される。早い話が人間はいくらでも嘘を付けるのである。しかもその嘘が効力を発揮するということに人間の不条理が存在する。

 4,5日前に、ロシア議会では虚偽報道禁止法案なるものが可決された。「ロシアの軍事行動について『虚偽』とみなされる報道を行うと最大で15年の禁錮や懲役を科す」という内容です。この法案がもし厳格に適用されるならば、屁理屈並べてウクライナ侵攻を命令しているプーチン自身が真っ先に監獄へ送られねばならないはずだ。しかし、皮肉としか言いようがないが、実のところは真逆の話でウクライナに関する真実の報道を禁止するためにこの法案は作られたのである。法案が成立すれば、それはプーチンの意図に従って運用される。外国メディアにもそれは適用されるということなので、ロシア国内ではウクライナ関連の情報は発信できなくなる。

 現在ロシアに起こっている事態は特別なことではない。よくあることなのだ。80年前の日本でも同じようなことが行われていた。口さがない連中に「アカ新聞」と揶揄されている朝日新聞でさえ、当時は大本営発表のニュースをそのままたれ流していた。「アカ新聞」ではない産経や読売は現在でも慰安婦問題等では政府寄りの見解が目立つように私には(この件については異論のある方もおられると思うので、一応「私には」と断っておく)思える。国境なき記者団が発表した、昨年度の日本の報道の自由度ランキングは67位である。もはや「記者が権力監視の役割を十分果たすことが困難だ」というレベルだそうだ。 いわゆる先進国の中では断トツの最下位であることは憶えておくべきだとおもう。

 元首相が公の場で「幅広く募ったが、募集はしていない」と平気で言ってのける。言葉に対する感度がとても鈍い、日本はそんな国であることを日本人は自覚すべきである。 決してロシア国民のことを「遅れている」などと笑うことは出来ないと思う。

 ----------

 先日、「ロシアの良心を信じたい」という記事でウクライナ出身のナターシャ・グジー というミュージシャンを紹介しましたが、今度の土曜日(3/12)BSテレビ東京で「音楽交差点」という番組 に彼女が出演されます。お時間のある方は必見です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする