チャットGPTというのが現在大きな話題を呼んでいる。質問を入力すると人工知能=AIが、自然な会話をするように答えてくれるのだそうだ。最近のAIの進歩は目覚しく、かなりの精度の高い会話が出来るらしい。使用する側から見ると、向こう側に本当に物知りな人がいて、その人が答えてくれているように感じるらしい。しかも、そのAIを使用すると、そのこと自体が情報として蓄積される。チャットGPTはその蓄積されたデータを分析しさらに高度なものへと進化していくというのである。つまり、チャットGPTは自分自身で学習し賢くなっていくという自立性を持っている。素晴らしいシステムだと思う。
高度なAIといえば決まって、「意志を持ちしかも人間より賢くなった人工頭脳はやがて人間を支配しようとするのではないか」というような話が持ち上がってくる。「ターミーネーター」という映画が公開されたのはもう40年近く前になる。この映画の中のストーリーでは、今から5年後の2029年にはスカイネットというAIに世界は支配されているらしい。スカイネットは自己存続ということを最高の優先順位設定されているので、高度な防御システムを築き上げかつ自らを破壊しようとする人間を滅ぼそうとするのである。相手は高度な知性を持つコンピューターであるので、人間にとってはかなり困難な戦いを強いられるという話である。
個人的にはAIがスカイネット化するような脅威は現実的ではないと考えている。AIは欲望する肉体をもたないからである。今のところ、AIは人間を支配したいと考えるようになるだろうとをいうようなことを怖れる必要はない。怖れる必要がないどころか、いずれは誰もがこのAI便利な道具として頻繁に使用するようになるだろう。しかし、Chat GPTにはスカイネット化よりももっと差し迫った問題があるように私には思える。おそらくChat GPTが集積する情報はわたしたちの想像を絶するようなものになるはずである。それは文字通り「想像を絶する」のであり、われわれには決してその内実は公開されない。そして主催者側にとってそれはビジネスなのである。一方は巨大な情報を握り、一方はそのことについて何も知らされない、そこに巨大な差別がある。情報をもたないものは情報をもつものに対して何らかの意味において依存するようになる。情報の支配は新たな支配と従属の関係を生みかねない、これは民主主義にとって大きな脅威であると私は思う。
情報化社会は人類に対してあまりにも大きなインパクトを与えている。若者が本も新聞も読まずにスマートフォンばかり眺めている現状や、インターネットによる情報拡散が社会の分断を加速している事実はもはや差し迫った脅威である。AIが人間を支配するというより、あふれる情報の渦の中で人間が自ら考える主体性を失いつつあることがより重大な問題であると思う。