ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

「指輪物語」は児童文学?

2005年09月01日 | 指輪物語&トールキン
今朝朝日新聞を読んでいて、「児童文学の映画化がブーム」みたいなことが書いてあって、その背景には「ハリポタ」とLotRのヒットの影響が大きい、みたいなことが書かれていて、なんとなく違和感でした。
以前から気になってはいたのですが、果たして「指輪物語」は児童文学なんでしょうか・・・
内容的には、全然児童文学ではないと思うんですが、ジャンル分けとしてはなんとなく児童文学ですよね。日本では。
これには「ホビット」が完全に児童文学の範疇に入るということや、トールキンと関係が深かったルイスの「ナルニア」が児童文学だったりすることの影響が大きいと思います。もしかしたら「ナルニア」の影響が一番大きいかもしれませんね。
というわけで、「指輪物語」は、日本の書店ではコーナー分けされていると、まず間違いなく「ハリーポッター」と同じコーナーに置いてあるわけです。
ところが、欧米だとちょっと事情が変わってきます。私が見たアメリカ、イギリス、ドイツでは、LotRが置いてあるコーナーというのは「Sience Fiction」の棚になりました。
大きな書店だと更に隣に「Fantasy」という棚があってそちらにありましたが、少し小さい書店だと、SFとファンタジーは一緒になってますので、そこにあります。
トールキンの著作は皆まとめてそこになるので、「ホビット」もSFの棚に置いてあるということになります。
が、私が見た限りでは、SFのコーナーで「ハリポタ」を見たことはないですね。「ハリポタ」は「ファンタジー」というよりは、子供の読み物という扱いになっているんですね。
「ホビット」も子供向けのコーナーに置いてあるかどうかはチェックしたことがないですが・・・今度欧米の本屋に行くことがあったら、そのあたりに気をつけて見てみたいと思います。
で、気がつくことなのですが、どうも欧米の本屋で「ファンタジー」というのと、日本の本屋で「ファンタジー」というのが違うジャンルらしいのですね。
欧米でいう「ファンタジー」とは、日本でもハヤカワ文庫のコーナーでやはりSFと一緒にお目にかかれる、所謂「ヒロイックファンタジー」を指すようです。「コナンシリーズ」とか、「時の車輪」あたりもそうでしょうね。
ところが、日本で「ファンタジー」というと、どうも児童文学っぽいイメージが・・・これは「ハリポタ」の影響のような気もしますが・・・ハリポタが流行る前ってどうだったかなあ(汗)
まあ少なくとも、ハリポタが出てくるずっと前から「指輪物語」が児童文学にジャンル分けされていたのは確かですね。
この違いがどこから来るのか、ちょっと考えてみました。
厳密に言うと、「指輪物語」は、ヒロイックファンタジーとも違うし、児童文学でもないと思います。そもそも書いたトールキン自身がそういったジャンル分けなど考えてもいなかったのですから、当然かもしれません。いわば孤高の存在とも言えます。
それが、欧米ではヒロイックファンタジーと同じ棚にあるというのは、多分、「指輪物語」のヒットのおかけで、似たような魔法と剣の異世界を舞台にしたヒロイックファンタジーというジャンルが脚光を浴び、流行したことによるのだと思います。実際に「指輪物語」に影響を受けたり、あからさまに真似た作品も、このヒロイックファンタジーのジャンルの中の作品として生まれたようですから。
日本では、欧米のヒロイックファンタジーは、SFと同じように一部のマニアックな人たちの読み物だったと思います。そこに登場した「指輪物語」がなんとなく児童文学のジャンルになってしまったのは、前にも書きましたが、「ホビット」や「ナルニア」の存在があったように思います。
しかし、もうひとつ不思議に思うのは、「ゲド戦記」も児童文学になっているということなんですね。欧米ではファンタジーの棚にあったか確認してないんですが、たぶん児童文学よりはSFだと思うんですが・・・ル=グィンはSFも書きますしね。
単に岩波書店から出たから、というだけなのかもしれませんが、どうもそうでもないような気がします。そこには「指輪」との共通点も感じたりして。
「指輪」や「ゲド」には、他のヒロイックファンタジーと一線を画している面があります。それは、どこか道徳的、教育的な面がある、ということのように思います。
トールキンはそんな意図はないというでしょうが(笑)作者の意図はともかく、そういう風に読み取れる作品ではありますよね。
そのあたりが、SFではなく児童文学に入れられた-もしかしたらハヤカワ文庫ではなく岩波書店なり評論社なりから出版された、という理由のような気もします。
そのあたりの欧米と日本の事情の違いが、もしかしたら「指輪物語」という作品の読み取り方の違いになっているかもしれませんね。
どちらにしても、文学だろうと音楽だろうと、無理やりどこかのジャンルに入れようとすることの不毛さを感じてしまいますね。
しかし、どこかのジャンルに入っていないと、売るのが難しいのも確かでしょうね・・・
そういう意味では、欧米でも日本でも、或る程度的確な判断のもとジャンル分けされたのかな、という気もしないでもないですが。
最終的に、どのジャンルから入ろうと、同じ作品を読んだり聴いたりしたら、同じ感動を味わうことになるでしょうから。要はどのくらい的確に、その作品にめぐり合うべき人を呼び寄せられる?かということになるのでしょうか。
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