ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

ロックンロール

2010年08月28日 | ミュージカル・演劇
市村さんが出るというのでよくわからないままチケット取ってた作品。メイン3人が歌える人なのでミュージカルなのかと思ってたらストレートプレイだったんですねー。(さすがに観に行く前に気がつきましたが(笑))
そして、思ってたよりも重い話でした・・・いやそんな軽い話だと思っていたわけではないけど。
プラハの春から始まったチェコスロバキアの激動の歴史を、真正面からではなく、イギリスから祖国に戻ったヤンを通して断片的に描いているのですが、真っ向から描くのでなく、断片的だったのが良かったかなあと。
またヤンがかなり呑気なお坊ちゃん?で、すぐに反政府活動に参加したりとかしなかったのも、ちょっと呑気すぎる気もしましたが、ある意味リアルだったかな・・・実際社会情勢がいきなり変わっても、そう簡単に信じられないものなのかもしれませんよね。情報は限られているし。外から見ている我々は結果を知っているからわかるけど、というのもありますね。
チェコスロバキアのヤンと平行して、ヤンの恩師でマルクス主義を信奉するケンブリッジの教授マックスの姿が描かれます。
共産主義を信奉し、ロシアのチェコスロバキア占領すら支持したマックスが、ヤンのおかれた状況を通すことで、次第に自分の誤りに気付いていく様は、とても興味深かったです。
まず、イギリスではいわゆるアカ狩りとかなかったんですかね・・・これアメリカだったらとても大学教授なんてやってられなかったと思うんですが・・・
理想的な思想だと思い、ナチスの独裁から世界を救ったものだったはずの共産主義が、今度は独裁を始めてしまった・・・そのことに苦悩する姿は、実際そういう人結構いたのでは・・・と思わせました。
終盤は80年代のサッチャー政権発足当時ですが、労働者たちが目の前の利益に飛びついて保守党を支持した、と憤るマックスの姿を見ながら、小林多喜二とかはバブルの頃の日本を見たらどう思っただろうなあと思いました。(いや「組曲虐殺」この間テレビで観たので・・・)
ケンブリッジの学生らしい、頭の切れる孫娘のボーイフレンドに辛辣に過去の共産主義思想について切り捨てられる様はかわいそうでしたね・・・何も体験せず、後から歴史を見てからなら誰でもそんなこと言えるのに、という生意気さ加減がまた上手かったかな~。
このヤンとマックスの物語、チェロスロバキアの激動の歴史と共産主義の崩壊、というのが物語の主軸なんですが、これに付随していた、マックスの妻エレナや娘のエズミの愛の物語がどう繋がるのかがよくわからなかったな・・・まあそれ自体はいいんですけど。
特に1幕の、死を予感したエレナの演技が素晴らしかったですねー。
エレナやレンカが教える古典文学の愛についての詩が随所に出てきましたが、これがどうつながるのかもわからなかったなあ。ラスト、プラハのジョン・レノンの壁のシーンと、レンカに教えられている女子学生が古典を翻訳する場面が交互に出てきましたから、やっぱり意味があるんでしょうね。よくわかりませんでしたが・・・
そして、タイトルのとおり、当時のロック音楽が随所に出てきます。舞台前方には正方形が斜めになった幕があるのですが、これがレコードジャケットを表しているんですね。その時かかっているアルバムのジャケットがスクリーンとして映し出されていたりして面白かったです。
そして、ヤンもファンである、チェコスロバキアのロックバンド、プラスティック・ピープル・オブ・ザ・ユニバースが弾圧される様子がヤンを通して語られるのですが・・・
このあたりの話、なんだか中国のロックの話とも重なるなーと思って興味深く観てたんですが・・・
ラストに、ローリングストーンズがプラハでコンサートを行うことになった! と、そこでめでたしめでたし、のような話の結びになっているのですが、そこで終わりじゃないよなあと・・・
もう少し、政府がロックを認めるようになったことによる変化までやって欲しかったかなあ・・・あれだけで終わりではないはずですから。(まあそれを言ったらチェコスロバキア自体そうですが・・・その後チェコとスロバキアに別れちゃいますし・・・)
ファンキー末吉さんが書いた中国ロックと中国社会という記事がとても興味深いのですが、チェコスロバキアも同じようなことが起こったのではないかなあと・・・まあ中国ほど極端ではないかもしれませんけどね(汗)プラスティック・ピープル・オブ・ザ・ユニバースは黒豹と違って今でも活動してるようですし・・・(黒豹も解散はしてないのかな・・・)
そもそも、音楽はチェコスロバキアの物語を描く上での道具立てのようなものだったので、もっと音楽そのものについて知りたかったなあと・・・まあ私が勝手に期待していただけですが。
この勢いで来週あたり「ペルシャ猫を誰も知らない」観に行くかなー。

キャストですが、市村さんはハマリ役でしたねー。ところどころかわいく笑えるシーンも交えるところはさすが。
秋山菜津子さんの、特に1幕のエレナの演技が素晴らしかったです。
黒谷友香さんのレンカも良かったな。
キャラメルボックスの西川浩幸さんが出るというのでどんなかな・・・と思ってたんですが、なんか意外にいつものキャラメルの西川さんまんまな感じでした。
メインはエズミの夫なんですが、ちょっと情けないけど結構したたかな小人物な感じ(汗)が西川さんの演じるキャラクターとしてはぴったりでした。というかそういう風に演じてたのか。
1幕でやってたヤンを尋問する役人が上手いなーと思いました。笑わせる役ではないんですが、得体の知れない感じと、ヤンの前に次々と色んなものを出してはひっこめるタイミングの絶妙さ、上手いなーと思いました。
そういや冒頭に出てきたパン(実はピンクフロイドのシド・パレットだったという設定。ケンブリッジ出身なんですねー)誰がやってたのかな。歌が微妙すぎてびっくりだったんですが(汗)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 果物屋さん | トップ | トーマス・マンのミュンヘンの家 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ミュージカル・演劇」カテゴリの最新記事