私の見仏記 先日、東北旅行した際、連日にわたる運転の疲れから風呂にも行かずにひとり夕方のNHKテレビを観ていました。ニュースの中で奈良の興福寺で秘仏公開と普段は4体しか展示していない八部衆という仏像を期間限定で8体全部展示しているという事でした。やがて画面に映る1体の像に目が釘付けとなりました。「迦桜羅(カルラ)像だー!」これは、見に行かなくては。遠く岩手の地から平城への強烈な憧憬がわきあがるのでした・・・。 10月26日(金) 天気は雨・・・・!それも激しい!とは言え1年に1回の長期休暇であるからして、無駄に過ごすわけにはいきません。明石経由のバスで神戸へ。三ノ宮から阪急・地下鉄・近鉄を乗り継いで奈良にやってきました。地下駅から外に一歩出てみると雨・雨・雨・・・・!一瞬、「秘仏なんてどうでもいいや」なんて罰当たりな考えが頭をよぎりましたが、意を決して一歩外へ歩み出します。傘を差しても結構ぬれます。 興福寺は、駅からすぐでした。あまり濡れずに済んだなと安心下のですが、お寺の中は広大で、結局は濡れてしまいました。入り口の千手観音の大きな看板に期待がふくらみます。けど、それ以上に境内のあちらこちらに立てかけてある手書きの看板の<普段は公開しておりません>や<秘仏>といった限定を強調するキャッチコピーに弱い私の心は、いやが上にも舞い上がります。 大きな雄鹿が、ミーハーな私に冷たいまなざしを投げかけます。俺様はすべてお見通しだよ・・・ お目当ての国宝館に入ります。入ってみて驚きました。日本史や美術の教科書で見たことがある仏像が多数展示してあります。それらに圧倒されつつ、最後に仏様乾漆八部衆立像(国宝)の前に立ちます。これらの衆はインド古来の鬼霊・悪魔・音楽神・鳥獣神などの異教の神を集め、結構強引に仏法守護や諸仏供養の役目を与えたもので、元々仏教の教理に基づいた神ではないので、生い立ちや性格、また姿やかたちは様々で、それぞれが超個性的であります。中でも三面六臂(手が6本)の阿修羅像が超有名ですが、今回私が一番見たかったのは迦楼羅(かるら)像です。 八部衆の1つ迦楼羅(かるら)は、インド神話の鳥の王ガルーダから来ており、ウルトラマンの前段階の企画「科学特捜隊ベムラー」の主人公のモチーフになっていたとのこと。ただ、渡辺宙氏によるベムラーのデザインはそのままでは敵怪獣に見えてしまうので、同企画は流れ、後に制作された日活唯一の怪獣映画「ガッパ」に迦楼羅(かるら)のデザインが活かされたとのこと。そのような経緯がある為、昔の怪獣少年としては、この像がどんなものか興味津々でした。実際の迦楼羅像を見た感想は、少々乱暴な表現ですが、服を着た大怪獣ガッパでした。 それにしても守護神としての性格上、阿修羅(あしゅら)像を除いて、すべて武装しています。そして一体毎、個性的なポーズを取っています。思わず見とれてしまいます。 最後に売店で修学旅行生のように、お寺Goodsを買い込み、喜々として帰路につきました。(八部衆の写真は、そのとき買ったクリアファイルより) 国宝館を出ると、雨が上がっており、空には虹まで出ています。結構知的好奇心を満たしてくれる仏像探検でした。こういう時は心に隙が出来るのでしょうか。買ったばかりの 傘を電車に忘れてきました。 ←傘を忘れた近鉄電車。半年もすれば、デパートの忘れ物品大会で誰かに買われていくのだろうな。ああ無情なり・・・