10月19日(日)
目覚めてみると、天気予報通りの晴天!
昨日灯った<撮り鉄の炎>がいまだに燃えています。
徳島自動車道を西へ走ります。井川池田ICで下りて、撮影場所を捜します。本日は本格的な俯瞰を狙います。お立ち台通信に載っていた土讃線の佃~箸蔵《雄大なオメガカーブを俯瞰できるポイント》を目指します。本来は<佃駅前より国道192号線に出て徳島方向に進み、徳島自動車をアンダークロスした先に桜ケ丘公園の看板を右折し、急坂を上った場所にある「桜ヶ丘公園」付近が目指すポイントとのことです。が、どうやら西よりの地点から国道右折してしまったようで。険しく、かつ荒れ果てた作業道路?を車で上っていきます。車幅ぎりぎりまで突出している木々の枝や、路面を突き破って生えている草木で車を傷つけない様に慎重にハンドルを切りながら、お立ち台通信の作例とよく似た情景が望めるポイントに出ました。どうやらテキストのポイントと極めて至近距離ですが違う場所(少し西側)に出てしまったようです。とは言え、既に先客2名。しかも2人とも重装備!複数台のカメラを三脚にセットして準備万端!
エントリー機の手持ちでチャレンジする私としては、昨日同様に同業者の装備に圧倒されますが、こんな事で萎縮してしまう訳にはいきません。
「やれるとは言えない。けど、やるしかないんだ!」
とガンダムに乗りたてのアムロ少年の様に自分を奮い立たせます。
この区間、ほとんど特急列車ばかりですが、車両は同じ2000系を名乗りながら同じ姿をした編成はなかなか出会いません。
やがて遙か遠くの対岸の山中から吉野川の作った狭い平野を目指して2両のキハ58系「土佐」が駆け下りていきます。やがて長い吉野川鉄橋を渡り始めると、そこで初めて列車のたてる轟音が響いてきます。鉄橋を渡り終えカーブにさしかかると、何時の間に現れたのか一群のカメラマン達が・・・・・!とは言え、<髭付きさよなら列車>は美しかった・・・・
列車が通り過ぎると、重装備の先客達は撤収に掛かります。数台のカメラを三脚から外し、三脚をたたんで、車に全て積み込むまで、2~3分掛かるなと判断した私は、「お疲れでした」と声を掛け、草木が迫り出している小道を降り始めます。軽装備のメリットを活かし、先行する「土佐」に追いつき、あと1ショットモノにするぞと、意気込みます。
両側から突き出ている小枝に、車体を当てぬよう慎重に車を動かしていきます。が、ミラーを見るとまだ遥か後ろにいると思っていた重装備カメラマンの運転するバンがいつの間にかぴったり後ろに付いています。<あれだけ拡げていた装備を、1分以内で撤収完了出来るなんて・・・。ただ者では無い!この人は本気なんだ!>そして、運転手の表情を見て驚愕してしまいました。ものすごい形相で運転しています(実際は、違うかもしれません。でも私には、そのように見えたのです)。「何をとろとろしてるんや・・・・!追っかけできんやろ!」という強烈な波動が伝わり、あと50Mで抜けられた、荒道をあわてて駆け下ります。その次の瞬間、私の愛車のボディーから<ガリリ>という乾いた音が聞こえてきました。次の10秒後には、広いスペースに出て後ろの車に、道を譲りましたが、後の祭り・・・・。
ドアを開け車の左側を見てみます。小さなひっかき傷が見えます。
「これくらいなら想定内・・・・」少し安心しました。右側も一見したところ目立った損傷は無さそうに見えますが・・・。「なんじゃ!これ」
グフのように青い愛車の左前ドア中央部に直径1センチほどのえぐれた様な凹みが、私の愚かさを笑うように自己主張しています。
「と、取り返しのつかないこと・・・・・。取り返しのつかないこと・・・・・をしてしまった」
と誤ってララーを殺めてしまったアムロの様に思わず口走ってしまいます。心の中では、これまたアムロの様に何時までも泣きむせんでしまいました・・・・。
昨日自分の中に灯った、<撮り鉄の炎>は、2日目で静かに消えていくのが、自分で分かりました。
←気を取り直して、高知方面へ車を走らせます。阿波川口駅で長時間停車してくれたおかげで小歩危~大歩危駅の第2吉野川鉄橋にて追いつく事ができました。が撮影した写真を見てみると、少し橋脚が斜めになっています。どうやら先ほどの一件の動揺が続いていたようです。
ともかく、今の自分には写真の腕を磨くより、何事にも動じないという精神的タフさを獲得する方が重要みたいです・・・。