しょぼい毎日

いつも理想はでっかいが、結果はしょぼい・・・。そんな日常を綴ってみました

北海道を旅する(2) 熱中・熱闘・熱湯編

2008-04-26 23:33:23 | 旅行記

4月19日(土)

Img_3383 宿の部屋のカーテンを開けると4時だというのに、空は白み始め洞爺湖に浮かぶ島の影が鏡のように水面に浮かんでいます。昨日は運転疲れもあり、宿の温泉にも入らないで、布団の上で寝てしまいました。風邪を引かなかったのは幸運でした・・・!そして、天気も良さげです・・・・。今日は土曜日!「カシオペア」「トワイライトエクスプレス」「北斗星」の三本の寝台列車*がそろって本州から北海道に渡って来る日です。

T永先輩のための補足

非鉄なT永先輩でも名前だけは耳にしたことがあると思います。「ブルートレイン○×殺人事件」とか「豪華寝台列車○×の殺意とかで、やたらと人が殺されていますね・・・・ 

①「カシオペア」とは、JR東日本がかつて無いほどの気合いを入れ新造した豪華寝台列車。上野-札幌間を走ります。外国の寝台列車に負けない程の装備(料金も負けてない)で、豪華客船によるクルーズ旅行の鉄道版を目指しています。「カシオペア」こそ「500系新幹線」とならんで、現代の日本の鉄道界のフラッグシップと言っても過言でないと自分は思っています。(人により好き嫌いはあるでしょうが)人気はあるのですが、諸事情で1編成しか建造されませんでした。1編成しか建造されていないので、毎日走りません。運転日注意です・・・。

②「トワイライトエクスプレス」とは、JR西日本が、大阪ー札幌間で、とりあえず豪華列車を走らせてみようと言うことで、既存の寝台客車を改造(リフォームてやつです)し、TV番組<ビフォアー・アフター>も真っ青なほど手を入れ豪華にした列車。とは言え、所詮改造車・・・。車齢が高く、将来どうなるのでしょうか・・・この列車も運転日注意です・・・。

③「北斗星」とは青函トンネルが開通し、JRも発足したことだし、とりあえず上野-札幌間に直通列車を走らせようと言うことで走り出しました。開業当初は大人気でしたが、ブームも過ぎ去り、将来が不安な・・・・。この列車は毎日運転です・・・。

今日はこの3本が一度に撮影できる貴重な日なのです。

洞爺湖のカルデラ外輪山を越え、一気に山を下ると太平洋にぶち当たります。車を長万部方向に向けます。本日の第一目的地は、有名撮影地<礼文カーブ>です。昨日鉄道趣味を封印した分、何時になく気合いが入っています!

Img_3403Img_3400Img_3401礼文駅からほど近い、でも歩くのには少し躊躇する距離のある、線路を見渡せる国道脇で本州から来る列車を待ちます。定刻より若干遅れて「カシオペア」が姿を現しました。日本離れした雄大な景色の中を、エンジンを唸らせながらゆっくりと近づいてくる列車の姿に感動します・・・。

 

続いて「トワイライトエクスプレス」がゆっくりと、通過していきます・・・・。

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その後、赤い機関車REDBEARことDF200牽引コンテナ列車が

Img_3429これまた重低音を響かせながら駆け抜けていきます。

今度来る「北斗星」まで時間があります。静狩~長万部の直線区間に移動します。

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踏切脇で三脚を立てた同業者を発見!お話してみると関西の方とのことで、数日前から北海道入りしており、函館・室蘭本線系統で列車を使って移動しながら写真を撮り続けてきたとの事。私もそうでしたが、彼も北海道にきて同業者と話すのは初めとの事で、列車を待つ間おしゃべりに興じます。撮鉄は、ひたすら列車を待ち続ける孤独な作業ですから、たまの人とのふれあいは、心を和ませるのだと思います。同業者さんのは、ブルートレイン中心に各地をまわられているようで、会話の端々にブルトレに対する<こだわりと愛情>が伝わってきます。でもそう遠くない将来、日本のブルートレインが全て廃止されてしまえば、趣味自体をやめてしまうのかなと、人ごとながら心配してしまいます。

彼の愛機はCanonF1!デジタル以前のカメラ界では、あこがれのフラッグシップでした。あくまで銀塩写真にこだわるとの事。「これだとバッテリーが切れても、何とかなりますから・・・」と

謙遜されていました。私も「デジカメなんかバッテリーが無くなればただの箱ですから・・・」

とあいづちを打ち、笑い合っていました。

そして!「北斗星」が20分以上遅れて通過して行きました。

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←同業者さんと北斗星を見送る。三脚上にはCanonF1が

北斗星を見送った後、同業者さんを静狩駅に送り、お別れです。

分かれる前に同業者さんが推薦してくれた稀府へ向かいます。

当初の情報ではDD51牽引貨物がくる予定でしたが、なぜか来ません。非常に遅れているのか、ウヤなのか、それともDF200に変更になったのか?

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←稀府駅の室蘭方の踏切にて

大気がクリアなら後方に雪を戴いた有珠山が見えるそうです。その日は、後方霞が掛かっており有珠山バックの写真はモノになりませんでした

DD51牽引貨物を諦め、室蘭方向へ向かいます。

駐車場が満杯のお蕎麦屋さんを発見。蕎麦処<なかよし>でざるそばを注文二八蕎麦でおいしくいただきました。

Img_3495ここでトラブル発生!蕎麦の写真を撮ろうとした際、ピントが合わない・・・。レンズのモーターは動くのですがロックが出来ない!オートフォーカスが効かなくなっています。いろいろトライしましたが回復せず。そば湯をすすりながら途方に暮れていました・・・。

が、ここまで来て打ちひしがれている場合じゃありません!オートフォーカスが駄目ならマニアルでピント合わせをすれば良いこと!気持ちを切り替え出発です。

途中室蘭地区の陣屋町に寄ってみました。3月のダイヤ改正前に貨物輸送は止めてしまったと聞いていましたが、現地に立って見て、この現実を実感します。すでにチップ積み貨車の姿はなく、広大なチップヤードに錆びたレールがむなしく延びています。トラ90000現役時代を知る自分としては寂しい限りです。

ここで、室蘭名所の地球岬に行くか、JR貨物・鷲別機関区に行くか迷います。昨日の自分でしたら地球岬に行っていましたが、今日は「鉄分補給日」です。迷わず鷲別に向かいます。今まで振られ続けたDD51が体を休めています。人気のないブルーの塗色変更機やImg_3513DF200-901*が奥Img_3530に停まっています。DE10への給油作業を眺めているうちに時間だけが経っていきます。

T永先輩のための補足 DF200-901とは平成になって製作された大出力高性能のディーゼル機関車DF200型の量産前に造られた試作機です。ディーゼル機関車界のガンダムと言って良いような、いけないような・・・・

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さらに車を走らせ、白老川鉄橋で上り「北斗星」をねらいます。

何とか間に合いました!

Img_3558次にねらう「カシオペア」まで時間があるので近所の温泉で旅の汗を流します。一年前にチップ貨車を撮影するために立ち寄った荻野に温泉がある事を知ったのは、旅から帰った後でした。<内容が濃いらしい>とのことで、行けば良かったと悔しい思いでした。この機会を逃せば再訪はむずかしいとの思いで、太平洋が見下ろせる露天風呂等で有名な虎杖浜温泉の誘惑を振り切りラジウム鉱泉の看板の掛かる「宝湯」にはいります。

典型的な銭湯スタイルで、番台のおかみさんに370円支払い、浴室に入るとびっくり。お湯は墨汁を流したように真っ黒!熱い方の湯Img_3555 船に我慢して入ろうとします。足から入り、胸まで浸かった時点であまりの熱さのため、湯船から飛び出します。あまりに熱いので、湯船の脇を走り回ります。番台のおかみさんが私の叫びを聞きつけ、「お客さん、大丈夫ですか!無理しないで、水で薄めてもらっても構いませんよ・・・」と言ってくれます。が、何故か意固地になって「大丈夫です。これくらい!」と見栄を張ってしまいます。何度かトライして、半分泣きながら、ようやく全身浸かることが出来ましたが、我ながら大人げない振る舞いだと思います。が、このことをきっかけに、おかみさんと会話が弾み、この地域や温泉について色々とお話する事が出来ました。

熱い温泉で汗を流し上りカシオペアを撮影するため、先ほど「北斗星」を撮影した白老鉄橋に戻ります。時間に余裕があった為、来る列車すべてと、すぐ上を飛び回っているパラグライダーなどの風景を撮影し時間を潰します。が、ふとカメラ背面の液晶モニターを見て我が目を疑いましImg_3562Img_3564た・・・。バッテリー残量がほとんど無い!昼前に交換したばかりなのに何故こんなに早く切れてしまうのか・・・。そういえば最近スタミナ切れが早い様な気がしていましたが、こんな大事な時に・・・。でもこの時点でも、私は事態を楽観視していました。「自動車でも警告ランプがついてからしばらくは走れるし、このカメラもあと5~6枚はシャッター切れるだろう・・・」と根拠のない現状認識をしていました。

自分としては、間もなくやって来る「カシオペア」をどうやってモノにするかで頭はいっぱいです。ちょうど陽の光線は日没近くになりオレンジ色にあたりを染めています。この状態でステンレス製の「カシオペア」が通過した場合、陽を反射してオレンジ色に輝いているはずです。「これはいけるぞ!最高かも!この写真は、来年の年賀状に使えるぞ!決定!」何時になくポジティブ思考で「カシオペア」を待ち受けます。そして遠くに青いDD51が見えてきました。予想通り正面と側面全体に赤みを帯びた陽があたっています。ファインダーに全神経を集中します。ベストポジション手前よりシャッターを切り始めます。

が、切れない!

何度押しても切れない!ファインダー内のインジケーターは表示が消えています。

この大事な大事な瞬間、最悪のタイミングでバッテリー残量は0となりました。私に出来ることは、去りゆく列車を見送ることだけ。赤く染まった銀色の客車が目の前を通り過ぎていきます。

食堂車の大きな窓でカップルが幸せそうに食事を取っているのが見えます。窓の外と中で<天国と地獄>が一瞬交錯したことを感じます・・・・。

私は朝、自分が言った「デジカメなんか、バッテリーが無くなればただの箱ですから・・・」という言葉を思い出し、自分の詰めの甘さと運の無さを呪い続けました・・・・。陽は北の大地に沈もうとしています・・・。

それにしても、余計なモノをバシバシ撮影するんじゃなかった!前日の<たかし>像とか・・・・・