先月、フィギュアスケートファンにはショッキングな事件がありました。
驚くべき実態が報じられた日本スケート連盟の橋本聖子会長と、驚くべき認識を露呈させてしまった鈴木恵一副会長。
それに対して、どのような対処をなさるのか、どのように責任をとられるのかを見ていこうと思っていましたが・・・
悪しき前例となってしまうように私には見えます。
今回、まだかろうじて未成年であった羽生選手は巻き込まれていなかったようですが、このままなら今後、どのような影響があるかわかりませんので、 羽生選手には、あらゆる状況を想定した、まさかの新技・「4回転キック!」の練習までもをお願いしなければならないようで、なんとも残念です・・・
そんなことやっている暇は全くないでしょうけれども、護身術を身につけておいて欲しいと切実に思ってしまうファンは私だけではないでしょう。(苦笑)
さて、この問題については、報じられた問題となる写真をきちんと取り上げて検証して扱っていない報道・・・すなわち、問題の本質から意図的にずらして焦点を外しているような報道がいくつもありました。
私が、今回の件で最も怒りを感じた点は、「セクハラ」「パワハラ」についての、連盟幹部の方々のあまりにも酷いレベルの「認識の甘さ」と、結果的には、全選手が侮辱され、傷つけられていることになっている点、そこに対して、何の責任も取っていない点です。
問題となった写真複数を見ました。
あまりにも鮮明で、特に時系列から先だとされる写真は明らかに「避けようと」しており、私にはどう見ても、権力者が(たとえ酔った勢いとはいえ、)相手の立場の弱みに付け込んだ、「セクハラ+パワハラ」(セクシュアル・ハラスメント+パワー・ハラスメント)の典型的なケースであり、それを周囲がはやし立てた、などという、最も迷惑で厄介な状態に見えます。
これが「セクハラ」「パワハラ」に該当しないのは、弱い立場の側が心の底からそういう行為を望んでいた場合のみで、まさに相思相愛だった場合のみ。
選手を守るはずの組織のトップの立場でありながら、守るどころか、そのファンたちを最も激怒させる行為に及んでしまっている、というだけで、もう、それだけで、十分すぎるほど、組織のトップに君臨する資格はないと私には思えます。
誤解を恐れずにいうならば、もし、このお二人が本当に相思相愛で、あれが、「人目もはばからず心から望んで堂々とされたこと」だったのなら、どんなにまだよかったか、マシだったか、と本当に思います。
でも、スケート連盟の幹部の方々に、選手がもし、「望まない行為を事実上、強いられていた」、となったら、その意味は全く違ってきます。
私は、高橋選手の本当の好みや、その詳細までは存じ上げません。しかし、「場の雰囲気を読んで、女性でもある相手の立場をも配慮し、自分なりに耐えながら、被害を最小限に抑えようとしている高橋選手の意思」が、あの写真からは見えるように感じられました。
弱い立場に置かれている高橋選手の側は「セクハラともパワハラとも思っていない」とコメントしてしまいましたが、これは本心でしょうか。本心ならまだマシです。そのほうが絶対にいいですよ。
本当に本心なら、私にはビックリではあっても、「あ、そうなんですか」で、羽生ファンの私としては、終わりそうです。
でも、立場や、今までの恩、周囲の状況などを考えて、”そうコメントせざるを得なかった”のなら、ますます「パワハラ」度が高くなり、深刻な問題は残ったままにされていることになります。
最も泣き寝入りさせられる「セクハラ」「パワハラ」の状況の一つは、私の知る限り、
仕事がらみで、さらに、「お祝いの場」に乗じてやられる時。
まさに、今回のようなケースです。
皆でお祝いしていて、誰もが上機嫌で明るく楽しく・・・という場。
怒ったり拒否したりしにくい、お祝いの場に乗じてやる、その見えにくい悪質性。
その現場を、誰も止められなかった、という異常性。
今回のことは、対等な選手同士が、お互いに好意をもっていて、ノリで~などという、「対等で自由な関係」の二人の間で起きたことではなく、明確な上下関係や支配関係がある、一方が明らかな権力者、もう一方が弱い立場、の間柄で起きたことなのです。
そこを、絶対に勘違いしてはならない。
キスも、頬への挨拶キスはあっても、口どうしのキスなんて、たとえ外国でも、上下関係のある間で「挨拶」や「励まし」としてすることは普通はありません。
仮にどこかの国でそのような習慣がある国が存在したとしても、日本の国会議員でありスケート連盟のトップが、所属している日本人選手とする行動として不適切極まりないのは明らかです。
外国でも、むしろセクハラ・パワハラと取られないよう、誤解を招かないように細心の配慮をして避けるのが、普通であり、そのような配慮の出来ない人は、組織の上に立つ器の人物とはみなされないと思います。
しかも今回の場合、絶えず権力がその背後に見え隠れしている「与党の議員」です。本人に意識があろうがなかろうが、典型的な「支配関係を利用し」調子に乗った結果だった、と見えます。
セクシュアルハラスメントは、男から男へだって成立するし、女から男へだって成立します。
セクハラなどと呼ばず、本来は、本心が伴わなければ「強制わいせつ罪」でさえあることを、もっと認識すべきです。
セクハラが悪質なのは、本来は強制わいせつ罪となるにも関わらず、「強制わいせつ罪」は、「親告罪」(被害者が訴え出ることが必要な罪)だから、被害者が告訴しない限り、逮捕されない―――告訴したくても、出来ない状態に追い込まれて泣き寝入りさせられることが繰り返される、という点にあります。
被害者は羞恥心や対外事情その他を考えて、なかなか自分から言えないし、言わない。
その結果、闇に葬り去られる。
さらに、繰り返されることにより、耐えることになれた被害者側も感覚が麻痺してきて、自覚ないままに自尊心を傷つけられ続けるーーーそこにこそ、最大の問題点と、深い闇があると思います。
今回、私から見て最悪だと思えたのが、もう一つあります。
鈴木恵一副会長の、「これがもし浅田選手への男幹部からのものだったならどう思うか」という質問に対して、「お前、度胸あんじゃねえか」と思うだけだ、と言ったという報道。 この報道がもし真実なら、本当に、恐ろしいです。
浅田選手のファンでもある私には、吐き気と眩暈のする言葉です。
本当にこれが実態だというのなら、悲しくても、浅田選手にも、即・引退してもらったほうが選手のためだと思えるくらいです。
思春期から20代前半のうら若き乙女達を管理・統括する団体としては、完全に失格の発言です。
仮に、百歩譲って、今回のお二人が合意だったとします。 それはそれで組織として別の大問題が生じています。
この場合、代表を選ぶ側だった人たちと、選ばれるはずの選手側との「異常な癒着」とみなされるので、ただでさえ大激戦だったソチ五輪代表メンバーについて、納得できていなかった他選手たちやそのファン層が激怒しても当然、という状況です。
特に、昨年のNHK杯で明らかにおかしな点数をつけられた織田ファンの怒りが収まらないのは、私には当たり前に思えます。
あの採点がおかしかったのは、誰の目にも明らかすぎるほど明らかでした。それを受けてか、佐野稔さんが、次のようなコラムを書いています。→http://no-border.co.jp/archives/16451/
しかしここで、織田さんの回転不足判定による得点問題は、なんと、「カメラの角度のせい」「運が悪い」の一言で終わらせられています。
ここでさらに問いたいのは、なぜテクニカル判断のためのカメラを、たった1台しかつけないのか、ということ。角度で判定が変わってしまうくらいなら、数台つければよいことです。そしてそれを公開すれば良い。今の時代、機材が高価すぎて買えない、はあり得ません。競技として最も大事な技術判定に用いることを思えば、通用しない言い訳です。
つい先日あった、テニスの錦織選手の決勝でも、相手の打ち込んだ球がギリギリ「アウト」になったように見えたけど、結局インだったため、錦織選手が点を奪われる結果になった場面が数回ありました。しかし、即座に映像が拡大表示され、コンピューター解析されて、イン・アウトの判定が、万人に判るようにされています。だから、誰も文句つけません。
なぜ、フィギュアスケートも、回転不足判定について、そのようにしないのでしょうか。
「回転不足ではなく、回転がまともに認定されていたら」・・・としても、結果、あの大会の順位に変わりはなかった可能性は高いです。あの時の高橋選手の演技は、シーズンベストと呼べるほど凄い演技でした。
でも、それ以前に、そもそもそういう「明らかにおかしな判定&低い得点がつけられてしまった」という段階で、織田ファンが、「これは最初から、どのみち勝てないようにされていたのだ」と判断・推測するのは、当然だと思います。羽生ファンの私でさえそう思いましたから。
結果として、両選手共に、本当に素晴らしい渾身の演技をしてくれていたのに、その両選手のどちらに対しても、最も嫌な形の侮辱的な状況を招いてしまった・・・ 私はそう思って、ものすごく残念に思っていました。
(これは私の推測ですが、織田選手の年末の引退決意には、こういうことが大きく影響しただろう、と思っています。)
今後は、そのようなことがないことを願います。
人生を賭けて頑張っている選手たちが、本当に気の毒です。
(ちなみに私は、高橋選手の怪我がソチまでに治るという診断が本当であった、ということを前提としたならば、ソチ代表3人について異論はありません。)
幹部が誰のファンでも構いませんが、立場上、誤解を招かないように、細心の注意を払い、対等・平等に接しなければならない立場のはずです。
今回のことは、夢をもって頑張っている選手たちやファン層、選手を目指している子供たち、及びそのご家族まで、ほぼすべての人が、本当に失望させられる出来事でした。
正常に機能している、一般企業や組織なら、一発で左遷となる事例で、それが今の常識だと思います。
リークの裏の政治的意図だの駆け引きだの言われていますけど、「政治が政治が」と騒いで騒動を収めようとすることそのものも、何らかの政治的意図があるとしか見えないのが、皮肉です。
今回のことは、そもそも、政治だの何だの、それ以前の問題で、「こういうことが平気で、スケート連盟の幹部の間で存在すること自体」が大問題であり、フィギュアスケートの未来や選手たちをつぶしていくことに繋がる、本当に悲しいことだと、私は思います。
私が最も問いたいのは、「本当に選手たちを大事に思ってくれているのだろうか?守ろうとしてくれているのだろうか?」 という、その一言に尽きます。
フィギュアスケートを統括する団体の幹部には、これこそが、絶対的に必要な資質です。
選手を、金づるや、己の欲望の対象、ストレスのはけ口に使うような方には、絶対になってほしくありません。
「リラックスさせるために色々~」との言い訳が使われましたが、今まで報道されてきた、ソチ五輪フリー前日に羽生選手に向けたとされる、脅迫じみた言葉が真実であったなら驚きですし、どこがリラックスなのかと問いたい。
連盟表彰式の時の動画で公開されていた、金メダリストの羽生選手にかけられた言葉は、むしろ皮肉や嫌味が込められているようにも聞こえますし、およそ表彰の場にふさわしいとは言い難い言葉だと思えますが、あれも、羽生選手は本当に心から笑ってリラックス出来たなどと本当に思われているのでしょうか?
こういうことに、百戦錬磨の経験をお持ちであろう羽生選手は、もはや大して気にもしていないかもしれません。
でも、あれを言われて嬉しい選手って、果たしているのでしょうか?
絶対にいないと、私は思います。
フィギュアスケートのコーチによる、選手たちの窮地を救った「名言」とされるような言葉とは、まさに正反対の言葉ですから。
それに、高橋選手は、あのようなキス(強要)によって、逆にリラックスするというような、そんな摩訶不思議な精神をお持ちの方だったのでしょうか?これも、正真正銘の相思相愛の場合のみ、リラックスになりえるかとは思えますが。
選手たちには、大事にしてくれる組織に所属していて欲しいし、その資質と覚悟のある方にこそ、幹部でいて欲しいと切に願います。
幹部お一人お一人が、誰のファンでも構いません。 好みはその人特有のものだし、変えられるものでもないでしょう。
しかし、本当に高橋選手のファンであり、高橋選手を大切に思ってくださっていたならば、このようなことを「すること自体」が、幹部としては、最も避けなければならなかったはずです。
今回、会長と副会長のされた言動は、「選手を軽んじて、欲望の対象とみなしている」と非難されても仕方のない言動です。
私は、フィギュアスケートに興味を持ったお子さんをもつお母さんから、フィギュアスケートをやらせるべきかどうか、やらせることについてどう思うか、等の相談を受けることがたまにあります。
その視点から見て、ハッキリいえるのは、今回のことは、日本国内のトップ3人にまでなったところで、こんな風に扱われるのが行き着く先ならば、その親御さんの立場と、将来子供さんが受ける被害を考えたら、たとえそれほどの才能があったとしても、「おススメ出来ないです」・・・ そういうしかなくなるな、という気持ちにさせられるほど、本当に悲しい事件でした。
才能のある選手なら、やめたくてもやめられなくて、非常に苦しむでしょう。
仮にそのご両親の立場だったとしても、子供の未来を危惧して、本気でやめさせることを考えるくらいの、そういう事件です。
他に所属すればスケートを継続できる組織があるのなら、すぐさまそちらに移させるでしょう。
こういった私の思いを書くことは、フィギュアスケートの未来を真剣に思う、羽生選手を悲しませることになるとわかっています。
羽生選手を応援するためのブログには、書きたくもありませんでした。
だから、しばらく考えました。
でも、だからといってこのままなら、その「事実」は変わらないし、放置することで更なる被害が続き、未成年の羽生選手を含む、下の世代に広がっていくのは、もっと避けたい。
セクハラ・パワハラは、認識を改めない限り、絶対に繰り返されます。
今回、「セクハラ・パワハラではなかった」などという言葉でうやむやに終焉させられているのを見て、明るい気持ちにはなれません。
しかし、羽生選手の演技や、存在そのもの、他の選手たちの頑張りなどには、強い希望を感じているので、応援は当然続けます。
羽生選手には、おかしな実態を見続けさせられて、いつの日か、その豊かな感性・感覚を狂わせて欲しくない。
もちろん、未来ある他の選手たちにも。
そう思って、書いています。
スケート界の問題で、おかしいと思えるものは他にも沢山あります。
たとえば、オリンピック前に国際スケート連盟会長が「誰々が金メダルだ、賭けてもいい」と言ったとか言わないとかというような報道があったり、ジャッジ(審判)でありながら、選手に自分との写真撮影を公衆の面前で要求したりする方がいたり、という・・・
「選手の立場や周囲の目線を考えない、あまりにも立場をわきまえない自分本位すぎる言動」は、もう、本当にやめて頂きたい。
選手たちの評判を落とし、結果的には侮辱することに繋がっているだけでなく、それを知った他のすべての選手のやる気と士気を落とす、非常識極まりない行為だということを、本当に認識して欲しいと思います。
「セクハラ」「パワハラ」についての、あまりにも世間離れした、甘すぎる認識を改めることを要求すると同時に、こういった点について、その他にも存在する沢山のフィギュアスケート界の問題点について、すべてが一つずつ、根本的に改善されていくことを期待したいです。
私は、今回のことは、このようなことが内部で起こっていることに強い疑問や問題を感じてきた人たちが、意を決して、選手のためを思ってタイミングを見計らって流したものだと信じたいです。
写真を流された高橋選手についても、本当に本人が望んで、進んでやっていたのなら何も言いませんが、今後、間違っても「強要されて」このような目に遭うことが、二度とないように願いますし、むしろこれが、そのようなきっかけになってほしいです。
心ある周囲の方々・関係者の方々が、現役の選手、及び未来の選手達を、意識して守っていってくださるよう、真剣にお願い致します。
さて、悪い話ばかりでもないよ・・・という、最後に、ちょっと素敵な話題を。
かつて、10代の頃、「ガラスのハートの高橋大輔」と呼ばれ続けた高橋選手。
バンクーバー五輪の2年前に、致命的とみられた大怪我から見事にリハビリで復活し、完全に別人のようになって迎えたバンクーバー五輪。
「ガラスのハート仲間」だった私は、日本人初の、五輪銅メダルを獲得したその演技で見せてくれた強さを見て、「これでもう、高橋選手は完全に「ガラスのハート」ではなくなったんだな」、と確信しましたし、その姿に感動して喜んだ記憶があります。
その舞台裏に貢献した、二人の方を特集した番組です。↓
一人は、天才的な振付師の宮本賢二さん。
以前も書いたように、高橋選手のバンクーバー五輪SPだった「EYE」の、過去に例をみなかった驚異的・独創的・印象的な振付はこの方の、非常に緻密な計算と戦略により練り上げられたものでした。
羽生選手の、「花になれ」もこの方の振付です。 本当にすごい才能だと思います!
もう一人、あの音楽編集を担当をされたという、矢野さんという方が登場します。
彼のエピソードに、私は大変、感動しました。
「ガラスのハートと呼ばれていた高橋選手の、その『ガラスのハート』を先に割ってあげよう、という思い」で、あの曲の冒頭に、がしゃーん!という、「ガラスが割れる音」を、演技開始の合図音として入れてあったのだそうです!!
まさか、あの音に、そんな意図があっただなんて!!
私、当時から、あの最初の音は気になっていたんです。 なぜか非常に印象的で、冒頭でまさに、「殻をつき破る」ようなイメージがあったので・・・。
そのようにして、強い思いで真剣に支えて下さる方たちも、選手たちの周囲には、沢山いるということですね。
矢野さんの思いは確かに結実し、あの年、「ガラスのハート」を完全に卒業していったように見えた、高橋選手。
そのハートを、変わらず大事にしていってほしいです。
そして、わずか10代半ばにして、氷上における精神面での並外れた強さ、驚異的なしなやかさと天才的な集中力・才能を見せつけ、演技開始後数十秒で惚れ込ませるほどの素晴らしい演技をしてみせた、羽生選手。
羽生選手がいてくれるからこそ、私はフィギュアスケート界にも、その未来にも、まだまだ強い希望を感じることが出来ています。
これから成人式を迎える羽生選手にも、今まで以上に心身を大切にしてもらい、そして今シーズン、ますます力強く、羽ばたいていってほしいです!
心から応援しています!!