東日本大震災から、3年。
3月11日が、また来ました。
羽生選手にとっては忘れられない日であることは間違いなく、何度か、その体験の一部を語ってくれたり、時には、
「震災のことはあまり思い出したくない」と遠い目をしながら口を閉ざすこともあった羽生選手ですが、
この日を前にして、再び新聞でのインタビューに応じたようです。
勇気をもって、その胸中や、あの大震災で負った心の傷(トラウマ)について、語ってくれています。 ↓ (読売記事 3月10日付)
http://www.yomiuri.co.jp/sports/winter/news/20140310-OYT1T00226.htm (全文)
以下、抜粋です。
『 3年前のあの時、ぼくは仙台のリンクで練習中でした。氷が波打ち、立っていられないほどの揺れ。
「このまま死んでしまうのか」と恐ろしく、泣きながら逃げ出しました。あの時の光景は今でも頭の中でフラッシュバックします。
涙が止まらなくなって、夜もうなされます。 』
・・・よく語ってくれたと思いました。 「今でも」、と…。
羽生選手の著書にも、この時のことは書いてありますし、今までも何度かインタビュー等で部分部分、語られてきてはいるのですが。
でも、ソチ五輪で、日本からの唯一の金メダリストとなって、以前とは比較にならないほど、「フィギュアスケートに興味がなかった人」たちにまで、羽生選手の存在は知れ渡りました。
今回は、そういう人たちに向けて・・・つまり、日本全体に向けて、羽生選手が明確に、意図的にここまで語ってくれたのだと思いました。
ソチ五輪前後の様子しか知らなければ、金メダリストとしての「強い羽生」のイメージしかない人も多いのかもしれませんが、
羽生選手は当時、死を感じるほどの恐怖で泣き続けたことを、それが今でもフラッシュバックするほどのものであることを、
非常に素直に、勇気をもって、隠さずに告白してくれました。
こういう”勇気ある姿勢”は、その姿勢そのものからも、またその内容からも、多くの同じ体験をした人たち(今でも苦しんでいる人たち)を、
本当に深く慰め、力づけてくれていると、私は確信しています。
「思い出したくない」「語ることが出来ない」状態の人も、大勢いるはずで、その代弁者としての役割を果たしてくれている・・・
そういう心の奥底の悲しみや弱さをあえてさらけ出して、それを大勢が目にする形で語れることというのは、
逆に本当にすごく強い人だからこそできるのだとも思いますし、
それができるようになっているだけ、羽生選手自身の傷は、たとえ少しずつであっても、癒えてきている証拠でもあるので、
語られる内容は悲しく辛いことだけれども、聞くたびに、少しホッとします。
羽生選手とは直接関係ないですが、私の友人の一人は、2011年3月11日のあの時、羽生選手がいたのと同じ、仙台市泉区にいました。
羽生選手がスケートリンクにいたあの時、私の友人は路上で、たまたま車に乗って赤信号で停止していた時だったそうです。
地震が起きた瞬間、いきなり車ごと宙に跳ね上がり、体が浮いたそうです・・・
そして、大揺れの中、周辺のビルから、割れた窓ガラスの破片が大量にバラバラと目の前の路上に落ちてくる光景を目にし、
「あ、自分はこれで死ぬんだ… 自分の人生、短かったな 」と思ったそうです。
(この辺は、羽生選手の震災当時の体験談と、非常に重なっています。)
目を閉じて頭を抱え込んだ姿勢のままやり過ごし、揺れが収まって顔を上げた時、「自分がまだ生きていたことに、とても驚いた」と
語ってくれました。
不幸中の幸いで、そこまで津波は到達しなかったけれども、もしあの瞬間、自分の車がいたのが海側の路上だったら・・・ と。
だから、自分は奇跡的に助かった、と。
当然、震災前とは、人生観も変わったそうです。
彼女の自宅は「半壊認定」でしたが、実際にはドアが閉まらない等、以前のように普通に生活できない状態になったため、しばらくは無理して頑張って生活していたものの、結局引っ越しました。
羽生選手のご自宅は、「全壊認定」になったのは有名な話で、散々報道されました。
(注:「全壊」と「全壊認定」は厳密には違いますが、「全壊認定」されるというのは、事実上「(安全に)住めない」と認められた状態です。)
どれほどの人が、今もまだ、羽生選手と同じように、夜にうなされ、陰で泣き続けているのでしょうか・・・
金メダルを取った後、「自分は結局何も出来ていない」と言い、「無力感に襲われた」と語った羽生選手ですが。
「何も出来ていない」なんて・・・ 私は全くそんなことはないと思っています。
ソチ五輪 エキシビション 「white legend ~白鳥の湖~」で真剣な表情で舞う羽生選手
( 写真:kiss & cry world Facebook 公式ページ公開写真より拝借 一番下に拡大写真)
その思いや優しさ、正直さ、真摯な姿勢が・・・
羽生選手が想像している以上に、知らないところで、多くの人を助けたり、力づけたり、良い意味で変えたりしてきたのは、事実です。
それは、東北に限らず、東日本だけに限らず、さらにはどうやら、報道を見る限り、日本国内に限るわけでもないようです・・・
すごいことです。
多分、演技や、生き方そのものなどから伝わる”真実”が、あるのだと思います。
全ての人が、そのことを羽生選手に伝えられるはずもありませんから、きっと相当な数に上ると思います。
とても数え切れないでしょう。
少なくとも、私はその中の一人です。 私の家族も、です。
羽生選手、本当にどうもありがとう!
あなたのもつ弱さと強さ、その両方に、本当に感謝します。
羽生選手がこうして勇気をもって自分の体験を語ってくれることや、悩み苦しみもがきつつもやっていることは、
過去のみならず、今後も様々な地域で大地震が避けられないであろう、地震大国・日本においては、
すごく重大な意味をもってくると、私は思っています。
背負いすぎず、気負いすぎず、ありのままで一歩一歩、信じる道を前に進んで下さい。
そのままの姿が、十分すぎるほど、励ましになっています!
だからこその、今の羽生人気では?
そういうことができる羽生選手の立場を、羨ましく思う人は沢山いるでしょう。憧れる人もいるでしょう。
どちらにしても、幸せなことです。
自分の心を大事にしつつ、与えられたスケート人生を、心から楽しんで下さい!
喜んで滑っている姿が、一番です。
今後のご活躍を楽しみにしています。
kiss & cry world (雑誌)さん facebook 公式ページ公開写真より 拝借しております ↑ ↓
ソチ五輪・エキシビションでの羽生選手(金メダリストとして) 渾身の演技
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