岡山県久米郡柵原町(現・美咲町)にあった吉ヶ原駅は、備前市の片上駅から和気駅を経由して柵原駅までの33.8kmを結んでいた全線単線非電化の片上鉄道の駅として、1931(昭和6)年2月1日に開業しました。
しかし、片上鉄道が1991(平成3)年7月1日に廃止されたことに伴い、廃駅となりました。
単式ホームと島式ホームの2面3線を有していて、列車交換可能な有人駅(朝・夕のみ)でした。
開業時に建てられた三角屋根の木造駅舎が廃止時まで健在でした。
吉ヶ原駅が属していた同和鉱業片上鉄道は、硫酸の原料となる硫化鉄を柵原鉱山から片上港へ輸送することを目的に建設されました。 開通後は硫化鉄のほか石炭や石灰石、木材、肥料などさまざまな物資を輸送し、1960年代までは地域経済を支える大動脈でした。 また、柵原鉱山の硫化鉄の埋蔵量は3000万トン世界有数を誇っていました。
しかし、石油の消費量が増え、その精製時に発生する硫黄が硫化鉄に取って替わるようになると、硫化鉄の需要は激減し、輸送量も急速に減少したため、同和鉱業は深刻な不況に陥り、1987(昭和62)年8月には柵原鉱石輸送が全面的にトラック輸送に切り替えられました。
会社側は肥料輸送や旅客列車の減便などで生き残りを図りましたが、沿線人口が希薄で過疎も進みつつあったため利用客は減り続け、ついに片上鉄道は1991(平成3)年6月30日限りで廃止され、それに伴い吉ヶ原駅も廃駅となりました。
廃止後の吉ヶ原駅は柵原ふれあい鉱山公園の一施設となっており、駅構内には計12両の車両が展示・保存され、このうち動態保存されている10両のいずれかが片上鉄道保存会によって毎月第1日曜日に約300mの区間で展示運転を行っています。そして旧駅舎は、この展示運転の駅舎として現役で使用されています。
<吉ヶ原駅の年表>
・1931(昭和6)年2月1日:片上鉄道の一般駅として開業
・1988(昭和63)年7月1日:貨物取扱い廃止
・1991(平成3)年7月1日:同和鉱業片上鉄道が廃止されたことに伴い、廃駅となる
・1998(平成10)年11月15日:柵原ふれあい鉱山公園が開業
・2006(平成18)年3月2日:旧駅舎が登録有形文化財に指定される
(駅 名 標)
(旧駅舎・ホーム側)
(旧吉ヶ原駅駅舎)
撮影年月日:2003(平成15)年6月29日