レ・ミゼラブル(8)
.————————【8】————————————————
Fut-il, au milieu d'une de ces distractions et de ces affections
qui occupaient sa vie, subitement atteint d'un de ces coups
mystérieux et terribles qui viennent quelquefois renverser, en
le frappant au cœur, l'homme que les catastrophes publiques
n' ébranleraient pas en le rappant dans son existence et dans
sa fortune ? Nul n'aurait pu le dire ; tout ce qu'on savait,
c'est que, lorsqu'il revint d'Italie, il était prêtre.
————————≪はじめに≫———————————————
本日の仏文は私には難しすぎて、訳出に苦戦しております.
仕方がないので対応する英文部分を見てみます.
In the midst of the flirtations and diversions that
consumed his life at that time was he suddenly overcome
by one of those mysterious, inner blows that sometimes
strike the heart of the man who could not be shaken by
public disasters of his life and fortune ? Who could say ?
We do know that when he returned from Italy he was a
priest.
—————————《英語訳》————————————————
娯楽に恋愛に明け暮れるさなか、彼、ミリエル氏は
突如として説明もつかぬ心の衝撃、それは生命、財
産に関するような国家災害によっても動揺しない人
の心を襲う衝撃だったがそれが彼を打ちのめしてし
まったというのだろうか? それは誰にもわからない.
我々には彼がいつイタリアから戻り、いつ司祭になっ
ていたのかもわからない.
.—————————《英語語句》————————————————
flirtation 情事、恋愛遊戯
diversion 気分転換、気晴らし、娯楽
consume 消費する、浪費する
——————————《仏文試訳》——————————————
彼の人生で占めていた娯楽と愛情の生活のさ中、突然これら
の謎めいた、恐ろしい打撃、それは幾度となく彼の心を
たたき、彼を倒しにやって来たのだが、その打撃によって
国家の大異変でその生命も財産も襲撃を受けても動揺させる
ことのなかったこのミリエル氏は打ちのめされてしまったの
だろうか? それは誰にもわからない.わかっていたことは、
イタリアから帰ってきたとき、司祭になっていた、というこ
とである.
———————————《仏語語句》————————————————
distraction: (f) ❶ 気晴らし、娯楽、 ❷放心、不注意
ここでは❷ミリエル氏の家庭没落による放心状態をいう
affection: (f) 愛情
occupaient: (半過去3複) occuper <占める、(に)住む、占領する
subitement: (副) 突然に、急に
atteint de ~: ~で傷つけられた、撃たれた;❷(病気に)冒された
un de ces coups: これらの大打撃のひとつ
coup: (m) 打撃
mystérieux: (形) 不思議な、不可解な、謎の
terrible: (形)恐ろしい、凄まじい、
renverser: (他) 倒す、ひっくり返す
quelquefois: (副) 時には、時々
frappant: <frapper (他/自) 打つ、たたく
catastrophe: (f) 大災害、大異変、大事故
public(que): (形) 公の、公共の、国家の、万民の
ébranleraient: (条件法3複) <ébranler (他) 動揺させる
prêtre:(m)[カト] 司祭; pasteur [プロ]
———————————〘お詫び〙————————————————
今回の仏文は長文の上見慣れない単語が続いたので、訳出に
苦労しました.意味を正しく取れていないかも知れません.
念のため、新潮文庫(佐藤氏訳)の文章を書写しておきます
『世間の大変動のために生活や財産をめちゃめちゃにされても
びくともしなかった人も、ときにはショックを受けて、気も動
転するような神秘な恐ろしい打撃に、彼はこれまでその生活を
占めていた気晴らしと愛欲のさなかに、不意打ちをくらったの
であろうか?』 それは誰にもわからない.わかっていたこと
は、イタリアから帰ってきたとき、司祭になっていた、という
ことである.
———————————≪感想≫————————————————
はじめからこれをみればよかった.寄らば大樹の陰とはこれなり.