さすらいの青春(648)
𝓛𝓮 𝓖𝓻𝓪𝓷𝓭 𝓜𝓮𝓪𝓾𝓵𝓷𝓮𝓼
———————【648】——————————
Aussitôt, en homme habitué aux bracon-
niers et aux chapardeurs, il alluma le fa-
lot de sa voiture, et le prenant d'une
main, son fusil chargé de l'autre, il s'ef-
força de suivre la trace du voleur, trace
très imprécise —— l'individu devait être
chaussé d'espadrilles —— qui le mena sur
la route de La Gare puis se perdit de-
vant la barrière d'un pré. Forcé d'arrêter
là ses recherches, il releva la tête, s'arrê-
ta... et entendit au loin, sur la même
route, le bruit d'une voiture lancée au
grand galop, qui s'enfuyait...
————————(訳)————————————
直ちに、密猟者やこそ泥の扱いに慣れた男とし
て、彼は馬車の角灯を点して片手に持ち、空いた
手で弾の充填された銃を持ち出した.そして泥棒
の足跡を追うことに努めた.足跡はぼんやりした
ものだったが、そいつが運動靴を履いていたに違
いなかった.それはラ・ガール街道へと続いてい
た.そしてそれから足跡はある小さな牧場の柵の
前で消え失せていた.そこで追跡は中断せざるを
得なくなった.彼は頭を上げ、馬車を止めた...
すると同じ路上のずっと遠いところで馬車が全速
力で走らせている馬車の音が聞こえた.それは去
っていく音だった.
..———————⦅語句⦆———————————
aussitôt:(副) 直ちに、すぐ、即刻
en:(前)【資格】~として、~らしく
donner un CD en cadeau. /
CDを贈り物として与える.
agir en père / 父親らしく行動する.
parler en ami / 友人として語る.
en homme:人として
habitué à ~:~に慣れた
braconnier, ère:(n) 密猟者、密漁者
chapardeur, se:(名/形) こそ泥 (を働く)
alluma:(直単過/3単) < allumer (他)
allumer:(他) 火をつける.
allumer une cigarette / タバコに火をつける.
falot:[falo](m) (大型の手さげの) 角灯
prenant:(p.pré) < prendre (他)
prendre:(他) 取る、掴む、
fusil:[l は発音しない](m) ピストル、拳銃
s'efforça:(直単過/3単) < s'efforcer
s'efforcer de + 不定詞:~しようと努力する.
suivre:(他) ついて行く、追う、(の)後をつける.
尾行する、~をたどる;
suivre une piste / 跡をつける[たどる]
(piste=足跡)
trace:[トラス](f) 足跡、轍(わだち)、跡、痕跡、
形跡、
imprécis, e:[アンプレスィ, ーズ](形) 不明瞭な、
あいまいな、ぼんやりした、不正確な
individu:[アンディヴィデュ](m) ❶個人、❷人、やつ、男
chaussé:(p.passé) < chausser (他) ❶(靴などを)はく
(めがねを)かける、❷(人に)靴などをはかせる.
devait être chaussé:はいていたに違いない
espadrille:[エスパドリーユ](f) (縄底の)運動靴
mena:(直単過/3単) < mener (他) 先導する、
連れて行く、運ぶ、導く、通じる、至る.
La Gare:(f) 始めは「駅」と訳したが、おかしいと
思い、他の訳本を参照した.そのまま地名と
して「ラ・ガール」としたものや la route de La
Gare で「停車場街道」としたものもあった.
単に「駅」でない理由は大文字にしている点
にある.「駅に通じる街道」(旺文社文庫)も
あったのですが、la route de la gare ではなく
la route de La Gare にした作者の意図はおそら
く「ラ・ガール街道」と地元住民たちの了解の
道だったのではないかと思いました.
sur la route de La Gare:❶駅へ通じる街道 (旺文社)、
❷ラ・ガール街道(パロル舎)、❸停車場街道
(みすず書房)、❹停車場道のほうへ(角川文庫)
➎駅への街道(岩波文庫)、➏駅の道に(講談社)
se perdit:(直単過/3単) < se perdre
se perdre:(pr) ❶姿を消す、見えなくなる、
消え失せる、❷道に迷う、途方に暮れる
barrière:(f) 柵
pré:[プレ](m) 小牧場、牧場、草地
forcé d'arrêter:中断せざるを得なくなって
être forcé de + 不定詞:~せざるを得ない、
Nous étions forcés de céder. /
我々は譲らざるを得なかった.
forcé:(形) せざるを得ない、強いられた
arrêter:(他) ❶(動き・機能を)止める、
arrêter un taxi. / タクシーを止める.
❷(活動・行為を)やめる、中断する.
recherche:(f) 探し求めること、探求、追及.
追跡、捜索、(情報)検索
releva:(直単過/3単) < relever (他) ❶持ち上げる、
高くする、上げる、まくり上げる;❷起こす、
立て直す、
il releva la tête:彼は頭を上げた.il がヘビだったら
それは鎌首をもたげた、となります.もっと
も、どこからが胴体かはわかりませんが...
首を曲げた姿が鎌に似ているのでしょうね.
Le serpent releva la tête.
ところで、こうしてヘビに睨まれたカエルは
身動きができなくなって、その場で固まって
しまいます.この状態を fasciné (視線で射す
くめられた)といいます.魅惑するという動
詞のfasciner と同じ語です.追っかけている
スターに流し目されたら Elle est complètement
fascinée. となります.どうぞおサイフにお気
をつけ下さい.
s'arrêta:(直単過/3単) < s'arrêter (pr)
s'arrêter:(pr) (立ち)止まる、停止する、
停車する、
entendit:(直単過/3単) < entendre (他)
entendre:(他) ~が聞こえる、わかる
au loin:遠くで
sur la même route:同じ路上で
bruit:[ブリュイ](m) 物音
lancée:(p.passé/f) < lancer (他) ❶投げる、放つ、
❷(音・光・煙などを)発する、噴出する、
❸(声を)上げる、❹(体の一部を)急速に動かす;
➎疾走させる、(~に)向かわせる. 駆り立てる
galop:[pは発音しない] (m) (馬の)駆け足、ギャロップ
mettre son cheval au galop /
馬をギャロップで駆けさせる.
au grand galop:全速力で、大ギャロップで
フルスピードで
s'enfuyait:(直半過/3単) < s'enfuir (pr)
s'enfuir:(pr) 逃げる、逃げ去る
.——————— ≪文法≫ ————————————
perdre は「単数あっさり型」の動詞です.現在活用
を書いておきます.
—————【perdre 直説法現在】—————————
je perds [ジュ ペール]——nous perdons [ヌー ペルドン]
tu perds [テュ ペール] ——vous perdez [ヴー ペルデ]
il perd [イル ペール] ———ils perdent [イル ペールド]
————————————————————————
.——————— ≪付記≫ ————————————
fusil の辞書訳は、銃、小銃、鉄砲、となっていた
ので、はじめはピストルと訳をつけていました.
投稿前チェックで、ピストルを和仏辞典で逆引き
したところ、pistolet (m) それとrevolver (m) が
載っていました.fusil はありませんでしたので、
本文訳のピストルは銃に変えました.
一件落着したあとpistolet を仏和で引いてみた:
その訳語は「ピストル」「拳銃」のみで、銃も
小銃もなかったので、fusil とpistlet は別物だと結
論を出しておきます.ただひと言言い訳をすると
日本語がええかげんなのか、日本人がええかげん
なのか、銃をかついだ兵隊さんのことも「鉄砲
かついだ兵隊さん」と言いますので、あまり厳密
に捉われる必要はないかと思います.
まあ、かつぐような大きさはfusil、 手のひら
サイズはピストルってことで、行きましょう.
ワルサーP38やコルト・パイソン357マグナ
ムはピストル.カービン・狙撃銃・自動小銃など
の小火器は銃(口径8mm 以下は小銃)の総称
なのだそうです.