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朝鮮北部から一家で引き揚げ

2022-08-03 18:15:10 | 日記
朝鮮北部から一家で引き揚げ

伊東 敬子さん(市民、女性)
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  • 体験地:
    • 朝鮮半島
  • キーワード:
    • 引き揚げ
  • 1941年(昭和16年)11月、朝鮮の咸州郡の興南邑雲城里(北朝鮮・フンナム)で生まれました。父、母、姉(8歳年上)の4人家族でした。父が日本チッソの朝鮮工場で課長をしておりましたので、当時の日本と比較すれば豊かな生活を送っておりました。工場内には電車やバスも通っていました。戦争が始まると軍需工場となりました。
    家は鉄筋2階建てで、各部屋はスチームで暖められ寒い冬でも快適に過ごすことができました。電熱器を使って鍋でごはんを炊いていました。冷蔵庫は氷を入れて冷やす木製の物で、父が飲むビールを冷やしていました。トイレは水洗でした。窓からは海が見え、嵐が過ぎた後には昆布が打ち上げられており、干して日本へ送ったこともありました。冬になって川が凍ると、姉とリンゴ箱でソリ遊びをしました。

    大きな爆撃はありませんでしたが、B29の姿が見え、防空壕(ごう)に隠れるという体験は何回かありました。
    空襲のあったある時、私を産んでから体が弱くなった母が「一人で防空壕へ行きなさい」と言うので、私は泣きながら「一人はいやだ」と答えました。しかし「早く行きなさい」とせかされて、泣きながら一人で防空壕まで行きました。壕には既に近所の人が隠れていて優しく入れてくれました。どこも家族で逃げてきていたので、私は自分一人だったことが寂しくて、お菓子をすすめられても涙が止まりませんでした。警報が解除されたので、泣きながら家に帰ると、学校から帰ってくる姉と出会いました。泣いている訳を話すと、「一人で逃げずに母と一緒にいれば良かったのに、一人で生き残ってもしょうがない」と言われました。母に言われたとおりに行動したのにと思いながらも、一人で逃げたことを後悔しました。

    45年8月15日の終戦。海の近くの社宅生活から山中の朝鮮人長屋での生活へ変わることになりました。その日のうちに移動せねばならず、トランク2つに持って行けるだけの品を詰め込み、手配したリヤカーの到着を待っておりました。そこへロシア人が現れ、銃を突きつけて「荷物をよこせ」と言ってきました。立派な革のトランクを取られてしまいました。中には重要書類や家族写真など大切な物が入っておりました。長屋はスチームではなく、オンドル(韓国式床暖房)でした。水洗トイレではなく、くみ上げ式でしたので、落ちそうで怖くて用を足すことができませんでした。家にひな人形を置いてきたので、取りに帰ってくれと泣いたこともありました。後日父が行ってみたところ、なくなっていたそうです。
  • そんな生活も46年4月25日に終わりました。近所の人が闇船で日本に帰るというので、一緒に乗船させてもらい日本に帰ることになったのです。大人と子ども、合わせて40人乗りの帆掛け舟で、皆、工場に勤めていた人とその家族でした。
    夜、海水浴場から出発しました。舟の壁には魚のうろこがびっしりとこびりついておりました。朝鮮人の船頭が帆を操り、風のないときはこいで20日間かかって、プサン(釜山)近くの海岸に到着しました。

    当初、船賃として大人も子どもも一人100円の料金を払うことになっていました。私の家は4人家族でしたので400円払って乗っていました。38度線を越える時、船頭が「20円ずつお金を返すからから、ここで降りてくれ」と言ってきました。当時、プサン近くの海岸はサーチライトで照らされ、船頭がおびえておりました。岩陰に隠れるようにして、何とか舟を岸まで上げてくれました。その後、歩いて山を越え一晩かけてプサンにたどり着きました。父は大きなリュックサックを背負い、両手に風呂敷包みを持ちました。姉は大人と同じ大きさの荷物を背負いました。そのあとを病気の母と私が身一つで続きました。何度も「歩きたくない」とだだをこねる私を、なだめすかしながら山道を歩いて、プサンに到着しました。
    そして、関釜連絡船に乗船しました。下関が見えるという所で、船内に天然痘患者がいるとのことで、一週間ほど停泊を余儀なくされました。困った事は食事でした。200人ほどが乗船しておりましたが、皆、出発してすぐに下関に到着する予定でいたので、食べ物の用意はしておりませんでした。闇船で38度線を越えるときの最初の数日は、持ってきたおにぎり、その後は水夫にお米を渡して炊いてもらいましたので、食事に困ることはありませんでした。しかし今回は長引いたため、食べる物がありません。大人は、少しの塩と水で飢えをしのいでいました。真水に少しの塩を混ぜて飲むと、何とか空腹をしのぐことができたそうです。母は私と姉のため、指輪や帯留めなどをボールに山盛りのごはんに換えました。

    やっと下船し、母方の実家に行くため、下関からは馬を運ぶ貨物用の列車に乗りました。そして夕方、肥前山口(佐賀県)の駅につきました。そこには、親戚の人たちが迎えに来ていました。私はおばさんに負ぶってもらいました。月がきれいな夜でした。

元徴用工訴訟問題と日韓請求権協定

2022-08-03 17:04:13 | 日記
元徴用工訴訟問題と日韓請求権協定


国際法学会エキスパートコメントNo.2019-8

和仁 健太郎(大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授)

脱稿日:2019年7月29日

1 はじめに
 戦前に日本企業により強制連行され強制労働に従事させられたと主張する韓国人(いわゆる「元徴用工」。

日本政府は「旧朝鮮半島出身労働者」と呼称)が日本企業に対し損害賠償の支払いを求めて韓国の裁判所に提起したいくつかの訴訟については、2018年10月30日に大法院(韓国の最高裁判所)が被告(新日鉄住金)の上告を棄却し原告の勝訴を確定させる判決(韓国語原文、張界満・市場淳子・山本晴太による日本語訳)を言い渡して以降、同様の判決が相次いでいます(三菱名古屋勤労挺身隊訴訟に関する2018年11月29日の大法院判決、三菱広島徴用工訴訟に関する同日の大法院判決など)。

日本政府はこの問題が1965年の日韓請求権協定により解決済みの問題だとして強く反発していますが(2019年7月19日外務大臣談話など)、

韓国は協議要請(日韓請求権協定3条1項)にも仲裁付託(同2項・3項)にも応じておらず、この問題をめぐる日韓両国の見解の食い違いは、最近における日韓関係悪化の一因になっています。

 日本政府は大法院判決が「日韓請求権協定第2条に明らかに反し」ていると断じていますが、同判決が日韓請求権協定に違反しているかどうかはそれほど自明ではなく、判決を一度きちんと読んでおく必要があります。

そこで、本コメントでは、日韓請求権協定の概要を確認(2)した上で、大法院判決の内容を検討することにします(3)。

2 日韓請求権協定の概要

 日韓請求権協定は、1965年の日韓国交正常化に当たり、日韓基本関係条約などとともに締結された条約で、4か条からなる協定本体のほか、いくつかの関連合意が締結されました。

 日韓請求権協定1条は、日本が韓国に対し、3億ドルに等しい円の価値をもつ日本の生産物および日本人の役務の無償供与、ならびに2億ドルに等しい円の額の長期低利借款を行うと定めています。

その上で、2条1項は、「両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、……完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」と定めています[下線筆者]。

この問題を「完全かつ最終的に解決されたことと」するための具体的な方法を定めるのが2条3項であり、

①「一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であつてこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置」と、

②「一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であつて同日以前に生じた事由に基づくもの」については、「いかなる主張もすることができないものとする」と定めています[下線筆者]。

①に「措置」という語が付いているのに対し、②にはそのような語が付いていません。

これは、①が各締約国の処分(国内的な「措置」)に委ねられた(そうした「措置」について「いかなる主張もすることができな」くなる)一方、

②については、協定それ自体の効果として・・・・・・・・・・・・、「いかなる主張もすることができな」くなったことを意味します(参照:谷田正躬・辰巳信夫・武智敏夫編『時の法令別冊:日韓条約と国内法の解説』(大蔵省印刷局、1966年)61-62頁)。

そして、①について日本がとった「措置」が日韓請求権協定措置法であり、同法1項は、「[日韓請求権協定2条3項の]財産、権利及び利益に該当するものは……、昭和40年6月22日において消滅したものとする」と定めています。

 「財産、権利及び利益」(①)と「請求権」(②)の違いや、①についてとった「措置」および②について「いかなる主張もすることができないものとする」ということの意味については様々な議論がありますが、本コメントではそれらの問題を詳しく検討できませんし、その必要もありません。

前者の問題については、裁判所の確定判決を得ていない損害賠償請求権などは「請求権」に当たるという趣旨の日本政府の国会答弁があり(第126回国会衆議院予算委員会議録26号(平成5年5月26日)35頁)、大法院判決も、①と②の違いについて検討することなく、原告の損害賠償請求権は「請求権」に当たるとの前提で議論を進めていますので、本コメントでは、元徴用工の日本企業に対する損害賠償請求権のような、協定締結時に判決等によって確定していなかった債権は「請求権」であると、とりあえず考えます。

次に、「いかなる主張もすることができないものとする」ということの意味については、

(a)国家の請求権(外交的保護権)のみを放棄したという説、
(b)個人の請求権も消滅したという説、
(c)個人の請求権は実体的には消滅していないけれども裁判上訴求する権能を失わせたという説があり、

日本政府は現在では(c)説をとっています(平成30年11月14日第197回国会衆議院外務委員会議録2号29-30頁)が、今回の大法院判決を理解するためにこの問題に立ち入る必要はありません。

大法院は、「誰の」請求権が「いかなる意味で」消滅したのかという観点からではなく、日韓請求協定により「いかなる主張もすることができな」くなった「請求権」の事項的範囲・・・・・がどこからどこまでかという観点から問題を処理したからです。

 この問題に対する大法院の答えは、「日本政府の韓半島に対する不法な植民支配および侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の日本企業に対する慰謝料請求権」は日韓請求権協定がカバーする範囲外の問題であり、個人の請求権も国家の請求権も消滅していない、というものです。

この命題はどのような論理により導かれたのでしょう

次にこの問題を検討します。

3 大法院判決の論理
 大法院判決の論理には不明瞭な点もありますが、その骨子は次のように理解できます。

すなわち、(i)日韓国交正常化に至る交渉において、日本と韓国は、1910年(日韓併合)から1945年までの日本による朝鮮半島統治が違法だったかどうかについて合意しなかった、

(ii)したがって、日本による朝鮮半島統治の違法性を前提にしてはじめて生じ得る請求権についても合意せず請求権協定の対象外に置かれ、裁判等による事後的な解決に委ねられた、ということです。

 大法院判決の論理構成のうち、(i)はまったくその通りで、日本政府もそのように認識しています。

問題は、ここから(ii)の命題が出てくるかどうかです。

まず、日本と韓国は、韓国・韓国人が日本・日本人に対して要求できるかもしれないすべての事項について交渉したのではなく、その一部についてだけ交渉し、交渉した範囲の財産・請求権問題を解決することで合意したのだ、という理解は、これはこれであり得る話です。

この理解によれば、交渉当時に知られていなかった問題や、知られてはいたけれども交渉の対象にしなかった問題は、協定の対象外だということになります。

元徴用工(強制動員被害者)の慰謝料問題は後者の問題に該当するというのが大法院の判断です。

韓国政府の立場は、強制動員被害者の慰謝料問題についてやや曖昧な部分がありますが、考え方の枠組みは大法院と同じで、日韓請求権協定の締結交渉で取り上げられなかった問題(例えば慰安婦問題)は協定の対象外だというものです(参照:山本晴太「日韓両国の日韓請求権協定解釈の変遷」17-20頁)。

他方、日韓請求権協定は、交渉の対象にしなかったものや、将来出てくるかもしれない未知の問題も含め、韓国・韓国人と日本・日本人との間の財産・請求権の問題をすべて包括的に解決したのだ、という理解もあり得ます。

日本政府は協定をこのように理解しているために、例えば慰安婦問題や元徴用工の慰謝料問題などは、交渉当時に知られていた問題であろうがなかろうが、また、交渉で取り上げられた問題であろうがなかろうが、請求権協定によって解決済みだという立場になる訳です(元徴用工の慰謝料問題について本コメントの1を、慰安婦問題について例えば第183回国会衆議院外務委員会会議録第8号(平成25年5月22日)12頁を参照)。

 これら2つの理解は、一般論としてはどちらもあり得ます。つまり、国家はどちらの内容の条約を結ぶことも可能です。

したがって問題は、日本と韓国が1965年にどちらの内容の合意をしたかです。

条約という国家間の合意の意味内容を明らかにする作業が条約の解釈ですが、条約解釈は、条約交渉者が条約締結時にどう思っていたかを探求することによって行われるのではなく、締約国は条約条文に書かれた内容に・・・・・・・・・・・・同意したのである以上、条約条文(「用語の通常の意味」)を出発点に、それを文脈(条約文全体や条約の関連合意など)や条約の趣旨・目的に照らして解釈することにより行われます(条約法に関するウィーン条約31条; ICJ Reports 2002, p. 645など参照)。

 そして、請求権協定の条文を基礎として解釈する限り、同協定は韓国・韓国人と日本・日本人との間の請求権の問題をすべて包括的に解決したと解釈するのが自然です。

協定2条3項は、「一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であつて同日[この協定の署名の日]以前に生じた事由に基づくものに関しては、いかなる主張もすることができないものとする」[下線筆者]と定めており、「いかなる主張もすることができな」くなる「請求権」の範囲は、協定署名の日以前に生じた事由に基づくものという形で、時間的に限定されているだけだからです。

  日本による朝鮮半島統治が違法だったかどうか、また、その違法性を前提にしてはじめて生じる請求権があるかどうかについて、日本と韓国が合意しなかったのは事実です。

しかし、そういう請求権はあるかもしれないし、ないかもしれないけれども、この問題を放置すると国交正常化の妨げとなるので、請求権協定によって解決したことにしたのだ、というのは完全にあり得る説明です。

事項的範囲を限定することなく「すべての請求権」についての完全かつ最終的な解決を規定した請求権協定の条文は、この説明と適合的な訳です。

 最後に、日本企業による強制動員や強制労働が「日本政府の韓半島に対する不法な植民支配……と直結」していたと大法院判決が述べたことの意味について考えます。

本件で問題となったのは、民間企業の民法上の不法行為責任です。

本件と同じ原告が日本で起こした訴訟において、裁判所は、旧日本製鐵が原告らを強制労働に従事させた事実は認定し、それについて旧日本製鐵が不法行為責任を負うことは肯定しました(旧日本製鐵と、戦後に同社を分割して設立された新会社の1つである新日鉄住金との間に法的同一性がないとの理由で請求は棄却(大阪地判平成13年3月27日))。

当然のことながら、旧日本製鐵の不法行為責任を認定する過程で、裁判所は、日本による朝鮮半島統治の違法性などということは一言も言っていません。

つまり、民間企業の不法行為責任を認定するために、「日本政府の韓半島に対する不法な植民支配」ということを言う必要は本来ないはずです。

それにもかかわらず大法院が「不法な植民支配」に言及したのはなぜでしょうか。

この点は、判決を何遍読んでもよくわからないのですが、韓国の関連判例なども参考にすると、次のように理解できそうです。

すなわち、当時の日本は、朝鮮半島において、「日本天皇に服従せねばならないという意識を注入して日本国の植民統治に順応するように教育」(光州高等法院第二民事部2015年6月24日判決)して、朝鮮半島住民が日本における労働内容などについてよく理解できないまま日本企業の労働者募集に応じてしまう状況を構造的に作り出していた。

日本によるそうした教育等は、合法的な権原に基づき統治を行う地域において自国民に対して行うのであれば問題ないが、権原のない違法な支配の下にある地域で行えば、それは違法性を帯びることになる。

日本の民間企業は、そうした違法行為によって構造的に作り出された状況を知りつつ、かつ、そうした状況を利用して、労働者を募集し労働に従事させたのだから、募集の過程で物理的な強制がなかったとしても、それは日本政府と日本企業の「組織的な欺罔により」行われた違法な「強制動員」に当たる、というのが大法院判決の趣旨でしょう。大法院によれば、このような意味での「強制動員」被害者の慰謝料請求権は、日本による朝鮮半島統治の違法性を前提にしてはじめて成立するものであるから、朝鮮半島統治の合法性を前提とする日本との間に合意は成立し得ず、日韓請求権協定の外に、未解決のままで残された、ということです。

もちろん、大法院のこの判断は、交渉で取り上げなかった問題は日韓請求権協定の対象外だという理解を不可欠の前提にしていますが、協定の条文を基礎に解釈する限り、日韓請求権協定は、交渉で取り上げた問題も取り上げなかった問題も含め、韓国・韓国人と日本・日本人との間の請求権の問題をすべて包括的に解決したと解するのが自然であることは、既に述べた通りです。

4 おわりに

 条約の締約国は、その条約の義務を守らなければなりません。

国家が条約を守る際、条約義務の内容がわからなければどういう行動をとればよいのかわかりませんので、国家は条約をまずは自ら解釈します(自己解釈(auto-interpretation))。

自己解釈は他の締約国を拘束しません。強制的管轄権をもつ裁判所がない国際社会では、複数の自己解釈の併存という事態がしばしば生じます。

請求権協定をめぐる日韓の対立も、

2つの自己解釈が対立・併存している状態と理解できます。

本コメントで述べてきたように、日韓請求権協定の解釈としては日本政府の解釈の方が自然だとは思いますが、韓国大法院の解釈が完全にあり得ないかというとそんなことはなく、「国際法に照らしてあり得ない判断」と断定して済むような話ではありません。

日本政府の解釈の方がより妥当であることの説明が必要です。

 なお、日韓請求権協定には、自己解釈の対立・併存を解消するための手続が用意されています。

協定の解釈・実施に関する紛争の仲裁委員会による解決(3条)という手続です。

「紛争」の存否は客観的に認定され、仲裁手続に応じることは協定上の義務です(阿部浩己「日韓請求権協定・仲裁への路:国際法の隘路をたどる」『季刊戦争責任研究』80号(2013年)26-27頁))ので、

韓国が仲裁手続に応じていないことは、それ自体が国際法違反を構成します。



強制徴用、被害国のみが「解決策探し」に奔走…国論分裂の雷管に?

2022-08-03 16:57:10 | 日記
強制徴用、被害国のみが「解決策探し」に奔走…国論分裂の雷管に?

登録:2022-08-02 02:23 修正:2022-08-02 08:07


日本企業の資産の現金化が差し迫る中 
政府「現金化前の代案」模索 

被害者側「日本の直接謝罪が先行すべき」

2021年10月28日に植民地歴史博物館で行われた「10・30強制動員最高裁判決3年、強制動員被害者および市民社会団体記者会見」で太平洋戦争被害者補償推進協議会のイ・ヒジャ代表が日本製鉄強制労役被害者イ・チュンシクさんの写真を掲げている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 2018年、最高裁は日本の戦犯企業に対し、日帝強占期の強制動員被害者への賠償を命じる判決を下した。

履行を拒否した企業の韓国内資産の「現金化」措置が差し迫っているが、国内の被害者団体と政府の姿勢はすれ違い、軋轢が生じている。

政府が韓日関係の改善に向けて設置した「強制徴用官民協議会」に被害者と被害者の訴訟代理人の一部が参加しないことを決めたのもそのうちの一つだ。

■ 嵐の前の静けさか

 先月14日、外交部ではチョ・ヒョンドン第1次官の主宰で「強制徴用官民協議会」の会議が行われた。

4日に初会議が開催されて半月も経たないうちに行われた2回目の会議だ。

戦犯企業の国内資産の現金化をめぐって激化した日本との対立を解消する方策を模索する場だった。

18日と19日にはパク・チン外交部長官が日本の首相と外相に会い、強制徴用被害者賠償問題に言及し、資産現金化の開始前に代案を示すと語った。

 このような動きに強い批判の声をあげる人々がいる。

三菱勤労挺身隊訴訟の支援団体である日帝強制動員市
民の会と訴訟代理人団だ。

彼らは官民協議会への不参加も宣言している。

日帝強制動員市民の会のイ・グゴン常任代表は「日本企業が韓国最高裁の判決を履行しないことが韓日関係を悪化させた原因だ。

三菱などの日本の強制動員企業がまず人権侵害の事実を認め、率直に謝罪し、そして賠償に取り組むべきだ」と声を強めた。

加害者である日本企業は「やれるものならやってみろ」というふうに後ろ手を組んでいるが、被害者である韓国の政府が気を揉んで動くのは「低姿勢」にとどまらず「屈辱」に近いということだ。

一部からは、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の動きをめぐって「対立を解消するつもりが、まかり間違えば日本との関係悪化はもちろん、国論分裂へと突き進む恐れもある」との懸念の声があがっている。

 実際に、被害者団体と彼らの訴訟代理人の一部が政府の設置した官民協議会への参加そのものを拒否することを決めたのは、新政権の対日外交行動にさす濃い影となっている。

彼らはなぜ、「韓日関係改善の障害物」という一部の強い非難を受けてまで、「日本企業の謝罪と直接賠償」を要求しているのか。

勤労挺身隊被害者ヤン・クムドクさん(左から3人目)が2019年6月、韓日の市民団体と共に東京の三菱重工業本社前でデモを行っている=日帝強制動員市民の会提供//ハンギョレ新聞社

■ 問題の始まり…2つの顔の日本

 強制動員被害者賠償問題が全面に浮上する契機となったのは、3年あまり前の最高裁判決だ。

2018年10月、最高裁は故ヨ・ウンテクさんら4人の強制動員被害者が日本製鉄(旧新日鉄住金)を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で原告勝訴の判決を下した。

1人当たり1億ウォン前後の賠償金を支払えというものだった。ヤン・クムドクさん(93)、キム・ソンジュさん(93)ら5人(生存2人)も同年11月、「1人当たり1億~1億5千万ウォンを賠償せよ」という最高裁判決を引き出した。

 以降、韓国の強制動員被害者の訴訟代理人は、日本企業の韓国内資産について強制執行手続きを踏んだ。

戦犯企業の韓国内資産を差し押さえ、売却して賠償金を一部でも確保するためだ。

ヤンさんらは三菱重工業の韓国内資産(特許権6件と商標権2件)に対する差し押さえ命令を裁判所に申し立て、昨年9月に差し押さえ決定と売却決定を引き出した。

早ければ8~9月ごろには最高裁による確定判決が下される見通しだ。

故ヨ・ウンテクさんらも日本製鉄が所有しているPNR(製鉄副産物のリサイクル企業)株の強制執行手続きを踏んでいる。

 資産の現金化に向けた強制執行手続きを踏むのは、日本と当該企業が最高裁判決に従わず、賠償責任を否定しているためだ。

日本は1965年に韓日両政府が結んだ「請求権協定」で被害者個人の請求権は消滅したとしている。

韓国政府が50年あまり前に被害者個人に代わって賠償金を全て受け取ったという主張だ。

日本が2019年に半導体の最重要素材を含む一部品目の韓国への輸出を禁止する措置を取ったのは、韓国の賠償判決に対する「経済報復」の性格が濃かった。

 韓日関係が崖っぷちに立たされる中、日本は中国には全く異なる態度を示してきたという事実が浮き彫りになってもいる。

一例として、日本の西松建設は戦時中に日本の水力発電所の工事に動員した中国人被害者に、2009年と2010年の二度にわたって47億ウォン相当の和解金を支払い、記者会見を開いて謝罪した。

中国人強制動員被害者が同社を相手取って日本で起こした訴訟で敗訴したにもかかわらず断行された措置だった。

日帝強占期に日本企業で強制労働させられた勤労挺身隊=日帝強制動員市民の会提供//ハンギョレ新聞社

■ 最初のボタンをきちんと…「罪を認めて謝罪から」

 強制動員被害者賠償については様々な意見と解決法が提案されている。

被害国である韓国がまず解決策を模索するのは不適切だという見方がある一方、行き詰まった状況を打開するためには韓国政府が被害者に賠償を行い、その後に日本企業に対して求償すべきだとする意見もある。

いわゆる「代位弁済」方式だ。

代位弁済方式に限っても、誰の金で賠償するかについて見解が分かれる。

 しかし最も重要なのは、やはり「被害者の立場の尊重」だ。

被害者の多くは依然として戦犯企業の直接謝罪を最優先の条件として掲げている。

依然として係留中の訴訟が多いということも変数だ。

最初のボタンをきちんとかけることがそれだけ重要なわけだ。

日帝強制動員市民の会の集計によると、日本企業を相手取った損害賠償請求訴訟のうち、係留中のものは66件、原告は1102人に達する。

内訳は最高裁係留9件(125人)▽二審留4件(85人)▽一審係留53件(892人)。

チョン・デハ、キム・ヨンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )





韓国の不動産投資ブームが利上げで暗転 借金抱えた消費者に重圧

2022-08-03 13:11:10 | 日記
韓国の不動産投資ブームが利上げで暗転 借金抱えた消費者に重圧

2022年8月1日(月)14時38分


最近まで沸騰していた韓国の不動産市場が突如として暗転し、世界有数の規模の借金を背負っている消費者に重圧がのしかかっている。

引き金を引いたのは、記録的なペースの利上げだ。

首都ソウルのマンション価格は先週、過去2年2カ月間で最も大幅な下落に見舞われた。

6月の売買件数は前年同期比で73%減少している。

2600兆ウォン(約270兆円)に上る不動産関連債務が今、金利上昇の洗礼を受けている。

不動産市況が低迷し、住宅ローンの支払い額が増えれば、消費を冷やす恐れが強い。

韓国では家計資産の4分の3近くが不動産市場にひも付けられている。

このため政策当局者は、住宅ローン金利の上昇に伴って債務不履行が増え、経済危機が近づきかねないと危惧する。

一般市民は既に痛みを味わっている。生後6カ月の子どもを抱え、ソウル中心部に住むジェーン・ジョンさん(36)は、住宅ローンの支払いが膨らんだため厳しい選択を迫られた。

「夫の給料だけでは月々の返済に間に合わなくなったため、私は産休を早めに切り上げて職場復帰せざるを得なかった」とジョンさん。当初は産休を1年3カ月取るつもりだったという。

ジョンさん一家は5億ウォンの住宅ローンを抱えており、月々の返済額は昨年に比べて72万ウォン増えた。

ブローカーからは、月間返済額は年末までにさらに増えて400万ウォン近くになりそうだと聞かされている。

これは、夫の月給の70%に達する額だ。

金融監督当局の推計では、住宅ローン金利の平均が現在の5─6%から7%に上昇すると、債務不履行に陥る人の数は50万人増えて190万人に達する見通しだ。

韓国では不動産投資関連のサービスとモノの消費が経済活動全体の約15%を占めている。

不動産不況と輸出不振が重なれば、経済成長の大きな足かせとなりかねない。

キウム証券のアナリスト、セオ・ユンスー氏は「韓国の金融システムは世界で最も金利上昇に弱い部類に入る。

パンデミック期間中の債務増加幅は世界有数だった」と語る。

「最も大きな問題に直面するのは、最近になって住宅ローンと(投資のための)融資の両方を受けた人々だ」

住宅ローン金利はさらに上昇へ

韓国銀行(中央銀行)は昨年8月以来、累計175ベーシスポイント(bp)の利上げを行った。今月は過去最大の50bpの利上げを実施している。

現在2.25%の政策金利は、年末までに2.75%に上昇してピークを迎えるとの見方が多い。

既に9年ぶりの高水準に達している住宅ローン金利はさらに上がり、多額の債務を抱えた家庭を締め付けそうだ。

ソウルの住宅価格は過去5年間で2倍以上に高騰した。

景気刺激策にあおられた住宅購入から始まり、やがて不動産投機は国民的な「娯楽」へと発展。

融資規制が強化され、30代を中心とするミレニアル世代の多くが経済的苦境に陥っても投機は止まらなかった。

韓国の家計債務の対国内総生産(GDP)比率は第1・四半期に104.3%と、世界屈指の高さだったことが、国際金融協会(IIF)が示す主要36カ国のデータで分かる。

規制当局は家計債務が金融システム全体にもたらす影響を和らげようと、固定金利での借り換えを可能にする措置を導入した。

この救済策が発表されたのは、韓国中銀が予想外に50bpの利上げに踏み切って2週間たってからだ。

秋慶鎬・企画財政相は今週、「家計債務の構造を迅速に改善する」と表明。

「借り換え策が始動すれば、家計債務に占める変動金利債務の割合は78%から73%弱へと、最大5ポイント低下するはずだ」と述べた。

可処分所得に対する債務の比率は、昨年末に206%に達した。

前出のジョンさんは「私たちの財産はマンションが全てだから、何とかやりくりしていく。ソウルから出て行くなんてまっぴら」と語った。

(Cynthia Kim記者)


[ロイター]